はじめに
Spresenseで音声認識を行うために、まずはマイク入力の動作確認を進めています。
音声認識に進む前に、そもそもマイクの信号が正しく取れているかを確認する必要があります。
その最初の確認として試したのが、スピーカーとマイクを4極プラグにまとめた自作構成でした。
結果は、普通にハマりました。
今回は、Spresenseのマイク動作確認に入る前の番外編として、4極プラグにスピーカーとマイクをまとめようとしてうまくいかなかった経緯を整理します。
4極プラグにまとめようとした理由
4極プラグにスピーカーとマイクをまとめようとした理由は、「マイク入力対応」と書かれているなら、ヘッドセットマイクと同じようなインターフェースでも確認できるのではないかと考えたためです。
PCやスマートフォンでは、4極プラグのヘッドセットを挿せば、イヤホンもマイクも普通に使えます。
その感覚で考えると、IoT向けの製品で「マイク入力対応」と書かれていれば、ヘッドセットマイクと同じインターフェースで使えるのではないかと考えました。
そこで今回は、スピーカーとマイクを4極プラグにまとめて、4極ヘッドセットのように扱える構成を自作して試してみることにしました。
実際に試してみると想定通りには動きませんでしたが、4極プラグの規格や配線、はんだ付けの注意点など、調べてみると学びが多かったので、番外編として整理しておきます。
「マイク入力対応」と「ヘッドセット対応」は別物だった
今回ハマった理由を整理すると、出発点にあったのは「マイク入力対応」という言葉の解釈でした。
「マイク入力対応」と聞くと、マイクを接続して音声を入力できる、という意味に見えます。
一方で、PCやスマートフォンに慣れていると、マイクと聞いたときに、4極プラグ付きのヘッドセットマイクを思い浮かべることがあります。
しかし、実際にはこの2つは同じではありません。
マイク入力対応とヘッドセット対応を整理すると、次のようになります。
| 表現 | 意味 |
|---|---|
| マイク入力対応 | マイク信号を入力できる機能がある |
| ヘッドセット対応 | 4極ヘッドセット相当の端子構成で、イヤホン出力とマイク入力が期待通りに使える |
この違いを十分に切り分けないまま進めたことで、今回のハマりにつながったと感じています。
まずは部品を買いに行くところから
スピーカーとマイクを4極プラグにまとめて確認するために、まずは部品をそろえるところから始めました。
電子部品店に行って、4極プラグや加工に使えそうな部品を探しました。
福岡の電子部品店「カホパーツ」で必要な部品を探しました。
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この時点では、
4極プラグにスピーカーとマイクをそれぞれ対応する形でつなげば使えるのでは
くらいに考えていました。
購入したもの
今回購入したものは以下の通りです。
- 熱収縮チューブ
- シールドケーブル
- スピーカー
- 4極プラグ
- ユニバーサル基板
- コンデンサマイク
全部で1000円以下におさまっています。
加工のための道具を準備しました
次に、加工のための道具を準備しました。
今回使用した道具と材料は以下の通りです。
- はんだごて
- はんだ付け用のスタンド
- ルーペ
- ワイヤーストリッパー
- ピンセット
- テスター
- はんだ
- フラックス
4極プラグは端子が小さいため、ルーペやピンセットがあるとかなり作業しやすくなります。
ここから、実際にはんだ付けと加工を進めていきます。
4極プラグにはんだ付けしていく
部品と道具がそろったので、実際に4極プラグへ配線していきます。
今回やろうとしていることは、スピーカーとマイクを4極プラグにまとめて、4極ヘッドセットのように扱える構成を作ることです。
4極プラグでは、端子ごとに異なる信号を扱います。
今回の想定では、以下のような信号を意識して配線しました。
- Lch
- Rch
- GND
- MIC
ただし、この時点では「4極プラグならこのようにつなげば使えるのでは」という理解で進めていました。
あとから調べると、4極プラグにはCTIA方式やOMTP方式といったピンアサインの違いがあり、MICとGNDの位置が入れ替わる場合があります。
このあたりが、今回のハマりどころの一つにつながっていきます。
マイクのはんだ付け
まずは、ユニバーサル基板にコンデンサマイクをはんだ付けしていきます。
コンデンサマイクは少し小さい部品なので、作業しにくい場合はスタンドなどを使って、作業しやすい環境を整えてからはんだ付けすると失敗を減らせます。
はんだ付けが終わったら、テスターを使って導通確認と短絡確認を行います。
シールドケーブルの加工
次に、マイク用のシールドケーブルを加工していきます。
まず、シールドケーブルの外部被覆をワイヤーストリッパーで剥きます。
このとき、深く切り込みを入れすぎて、シールド線まで傷つけないように注意します。
外部被覆を剥いたら、シールド線を分けて、より合わせておきます。

より合わせたシールド線には、熱収縮チューブをかぶせておきます。
熱収縮チューブは、はんだごてや工業用ドライヤーなどで温めると縮みます。

次に、芯線の被覆を5mmほど剥きます。
その後、芯線側にも熱収縮チューブをかぶせます。
シールド線の根元が隠れるくらいの位置までかぶせておくとよいです。
ここまでできたら、芯線とシールド線に予備はんだをしておきます。出ている線が5mmくらいになるように先端をカットします。
芯線の被覆は熱で溶けやすいため、はんだ付けの際には注意が必要です。

マイク基板とケーブルの接続
前処理が終わったら、加工したケーブルとマイク基板をはんだ付けします。
黒線をGND側として接続しました。
はんだ付け後は、テスターで導通確認を行います。
ケーブルのGND(黒側)とマイクの外殻が導通していること、またショートしていないことを確認しました。

スピーカー側の準備
スピーカーのケーブルにコネクタが付いている場合は、そのままでは使いにくいため、ニッパで根元から切り落としておきます。

その後、先ほど加工したマイク用のシールド線とスピーカーのケーブルを、4極プラグのカバーに通しておきます。
ここを忘れると、あとで組み直しになるので注意が必要です。
私もこれを忘れていて、手戻りが発生して、げんなりしました。
次に、スピーカーとマイクのGND側の線をまとめてはんだ付けします。
はんだ付けした部分は、熱収縮チューブで保護しました。
4極プラグへのはんだ付け
最後に、4極プラグ側に予備はんだをしたうえで、各ケーブルをはんだ付けしていきます。
プラグのピンアサインについては、プラグのデータシートや説明書で確認しながら進めました。
この部分のはんだ付けはかなり細かく、難しい作業でした。
そのため、はんだ付け用のスタンドを使い、フラックスを塗布したうえで作業すると、失敗を減らしやすいと思います。
完成すると、このような形になりました。
配線そのものは単純に見えても、実際には次のような難しさがありました。
- 線が細い
- 端子が小さい
- 隣の端子と近い
- はんだ付け後にショートしやすい
- Tip / Ring / Sleeve の対応確認が必要
- CTIA / OMTP によって MIC と GND の位置が変わる
そのため、思ったよりも慎重な作業になりました。
ここまでで、4極プラグにスピーカーとマイクをまとめた配線自体は完成しました。
この時点では、配線としてはうまくできたつもりでしたが、実際にSpresenseへ接続して確認してみると、想定通りには動きませんでした。
実際に接続して確認してみた
これで、4極ヘッドセットのようにスピーカー出力とマイク入力をまとめて確認できるのでは?
と思っていました。
しかし、実際にSpresenseへ接続して確認してみると、想定通りには動きませんでした。
まず、スピーカー側については、音は出ているもののかなり小さい音になることがありました。
音が出た時点では少し安心したのですが、しっかり確認してみると、どうも期待していた動作とは違うことがわかってきました。
音が小さいということは、スピーカーに対して正しい形で信号が伝わっていない可能性があります。
また、マイク側についても、期待していたようにマイク入力として確認できませんでした。
この時点で、
「何か反応していること」と「正しく動作していること」は別物
だと感じました。
配線として導通していても、スピーカー出力やマイク入力として正しく動作するとは限りません。
ここから、4極プラグのピンアサインや、Spresense側の端子仕様を改めて確認していくことになります。
4極プラグには規格の違いがある
今回の確認でまず気になったのが、4極プラグのピンアサインです。
4極プラグは、見た目は同じように見えても、内部の信号の割り当てが異なる場合があります。
ヘッドセット用の4極プラグでは、代表的なものとして CTIA方式 と OMTP方式 があります。
どちらも、Lch、Rch、GND、MICを扱う点は同じですが、違いは GND と MIC の位置です。
CTIA方式では、一般的に以下のような並びになります。
Tip : Lch
Ring1 : Rch
Ring2 : GND
Sleeve : MIC
一方で、OMTP方式では、GNDとMICの位置が入れ替わります。
Tip : Lch
Ring1 : Rch
Ring2 : MIC
Sleeve : GND
つまり、同じ4極プラグに見えても、前提にしている規格が違うと、マイク端子とGND端子の位置が変わります。
そのためどのピンアサインを前提にするのか、そして接続先の機器がその構成に対応しているのかを確認する必要がありました。
楽器や音響機材でも、見た目は同じようなプラグなのに、配線や用途が違うことで音が出なかったり、音が小さくなったりすることがあります。
今回の4極プラグも、それに近い話だと感じました。
この時点で、単に4極プラグを使えばよいという話ではなく、プラグの規格と接続先の仕様をあわせて確認する必要があることがわかってきました。
なぜ音が小さくなったのかを考える
4極プラグの配線を変えて確認している中で、音は出るものの、かなり小さくなることがありました。
最初は、
音が出ているなら、少しは動いているのでは?
とも思いました。
しかし、改めて考えると、音が小さいということは、スピーカーに対して正しい形で信号が伝わっていない可能性があります。
一般的な考え方として、スピーカーは出力信号間の電圧差によって振動し、音を出します。
そのため、想定と違う端子に接続されると、十分な電圧差が得られず、音が小さくなることがあります。
しかし、4極プラグのピンアサインが想定とずれていると、本来GNDにつながるべきところがマイク端子側につながったり、本来スピーカー出力として使うべき端子とは違う経路でつながったりする可能性があります。
その場合、スピーカーに十分な電圧差がかからず、結果として音が小さくなったと考えられます。
ざっくり整理すると、次のようなイメージです。
正しい接続:
出力信号 − GND の間にスピーカーが接続される
→ 十分な電圧差がかかる
→ 音が出る
想定とずれた接続:
出力信号とGNDの関係が崩れる
→ スピーカーに十分な電圧差がかからない
→ 音が小さくなる
電気的には、スピーカーで消費される電力は、電圧や電流に関係します。
P = V × I
そのため、スピーカーにかかる電圧差が小さくなると、流れる電流も小さくなり、結果として音も小さくなります。
今回の現象も、単に「音量設定が小さい」という話ではなく、配線やGNDの取り方が想定とずれていた可能性があると考えました。
Spresense側の仕様も確認する必要がある
4極プラグ側の規格を確認していくと、もう一つ重要な点が見えてきました。
それは、接続先であるSpresense側が、そもそも4極ヘッドセットのような使い方を想定しているのか、という点です。
今回試したかったのは、4極プラグにスピーカーとマイクをまとめて接続し、ヘッドセットのように使える構成です。
しかし、4極プラグ側でLch、Rch、GND、MICを用意したとしても、接続先の機器がその端子構成を前提にしていなければ、期待通りには動きません。
つまり、
4極プラグとして配線したこと
と
Spresense側が4極ヘッドセットとして扱ってくれること
は別の話です。
今回の確認では、プラグとしては接続できても、Spresense側の音声出力端子とマイク入力端子の扱いを分けて考える必要があると感じました。
特に、ヘッドホン出力用の端子は、基本的には音声を出力するための端子です。
そこに4極プラグのマイク端子を追加したとしても、そのままマイク入力として扱えるとは限りません。
マイク入力を確認するには、Spresense側で用意されているマイク入力の仕様に沿って接続する必要があります。
今回わかったことと次に進むこと
今回の確認で一番大きかったのは、「マイク入力対応」と「4極ヘッドセット対応」は同じではないとわかったことです。
最初は、4極プラグにスピーカーとマイクをまとめれば、ヘッドセットのように使えるのではないかと考えていました。
しかし実際には、次の点を分けて考える必要がありました。
- プラグが物理的に刺さること
- テスターで導通していること
- スピーカーから音が出ること
- マイク入力として正しく信号が取れていること
- 接続先の機器が4極ヘッドセット互換として設計されていること
これらは似ているようで、すべて別の確認項目です。
特に今回のように、音が小さくても一応出ている場合、「動いている」と判断したくなります。
しかし、音が出ていることと、仕様どおりに正しく動作していることは別です。
結果として、4極プラグでスピーカーとマイクをまとめる方法では、Spresenseのマイク入力確認としては適切ではなさそうだと判断しました。
失敗ではありましたが、Spresenseで音声入力を扱う前に、端子や規格の前提を整理する良い確認になりました。
次回は、4極ヘッドセット互換の構成ではなく、Spresenseの仕様に沿って、マイク入力の動作確認を進めていきます。
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