Workato と MuleSoft を利用したことのある筆者が、それぞれの製品についての比較を以下にまとめます。
- Workato:
- MuleSoft
- Salesforce (MuleSoft)
概要
Web サイトのトップページや製品のページを確認することで両社の方向性を確認します。
Workato と MuleSoft は、どちらもエンタープライズのインテグレーションおよびオートメーション分野における主要な iPaaS プロバイダーです。
| Workato | MuleSoft | |
|---|---|---|
| キーワード | ローコード/ノーコード、自動化、統合、AI、Enterprise Orchestration、Agentic Orchestration、Genies、Enterprise MCP、Embedded iPaaS | API 管理、エンタープライズ統合、ハイブリッド統合、MuleSoft Agent Fabric、AI、Agentforce、MCP Support、Einstein for MuleSoft、MuleSoft for Flow: Integration |
| 概要 | Workato ONE という単一プラットフォームで、接続性、エンタープライズレベルのセキュリティ、Agentic、エンタープライズオーケストレーションを提供します。クラウドネイティブなアーキテクチャを持ち、高い俊敏性 (Agility) と革新性 (Innovation) を主張しています | API 中心のコネクティビティ (API-led connectivity) の概念を提唱しました。統合、自動化、API 管理を統一されたプラットフォームで提供します。Salesforce の唯一のネイティブプラットフォームです |
| 評価 | iPaaS の Gartner® Magic Quadrant™ で LEADERS として、7 回連続で、かつ Visionary において 2 回最も高く位置づけられています | iPaaS および API 管理の分野で 10 年連続で Gartner® Magic Quadrant™ の LEADERS に位置づけられていましたが、2025 年は CHALLENGER となっています。また、RPA 分野では Visionary として評価されています |
| 開発環境 | Web ブラウザ上でローコード/ノーコードでレシピを構築します。プラットフォーム側にデプロイは任すことができます | プロコード向けの Anypoint Studio や VS Code ベースの Anypoint Code Builder、ビジネスユーザー向けの MuleSoft for Flow、CI/CD や DevOps を活用可能です |
| コスト | 開発速度が 5～10 倍速く、運用コストが 53% 低いと主張しています。 | 再利用可能なアセットの再利用率が 49% 向上し、メンテナンスコストと労力を 74% 削減したという調査結果があります |
| トレーニング | 専門の IT スキルがなくとも学習しやすい。また、トレーニングリソースが豊富で、無料で資格を取得できます | 専門の高度な IT スキルが必要であり学習が難しい。また、トレーニングリソースは豊富だが、一部は有償でないと受けられないものがあり、資格の取得は有償です |
| コミュニティ | 目的に合わせたサンプルの実装が膨大にあり、コミュニティでは使い方や実装などについて活発な議論が交わされている | コミュニティでは使い方や実装などについて活発な議論が交わされている |
構成図
Workato
MuleSoft
機能比較
Document や Help ページを確認することでどのような機能があるかを整理します。
個人的な考えのもと、簡単にいくつかのカテゴリを設けて分類しました。
以下の表を簡単に確認すると、両社のフォーカスしている分野を確認することができます。
Workato は AI や自動化 / 統合の機能を、MuleSoft は API やそれらの管理 / 監視の機能にフォーカスしていることが確認できます。
ここでは、それぞれの機能単体についてどの程度の強さ、広さがあるのかについては確認しません。
そのため、各カテゴリに属している機能が少ないからといって、一方が優れているということではありません。
- Workato の機能一覧
- MuleSoft の機能一覧
| Workato | MuleSoft | |
|---|---|---|
| ワークフロー (自動化 / 統合のメイン機能) | Workflow apps Process automation Workbot Data orchestration Connectivity Event streams RPA Recipe design Community library |
Anypoint Code Builder Composer Composer for Salesforce Connectors DataWeave MUnit RPA Studio APIkit |
| 開発 | Connector SDK Platform CLI Developer API |
Anypoint CLI Connector Builder Mule SDK |
| API | API platform Embedded API |
Access Management API Community Manager API Experience Hub API Manager Design Center Exchange Gateway Mule Runtime Runtime Manager Hosting Options (CloudHub 2.0、CloudHub、Runtime Fabric、Government Cloud、Anypoint Platform Private Cloud Edition、EU Control Plane、Hyperforce、Hybrid Standalone) |
| 管理・監視 | Insights | API Functional Monitoring API Governance DataGraph Monitoring MQ Object Store Visualizer |
| AI | Agentic Agent Studio Agent Studio security Genie example Workato GO AgentX Apps MCP Copilots AI by Workato IDP by Workato |
Agent Fabric Agent Visualizer IDP MuleSoft MCP Server |
| その他 | Accessing on-prem Organization & workspaces Data & security Lifecycle & operations Embedded Accelerators Workato Identity |
Accelerators Partner Manager Security |
実際の開発手順
Document や Help ページの Get Started から開発手順の概要を確認します。
これらを確認することで、実際の開発の行程を少しでも想像ができます。
Workato
シンプルな開発手順は以下の公式 Document に記載されています。
- Create your first recipe
以下に実際の開発の画面を数点示します。
- ホーム画面:
- 実装画面:
- デプロイ画面
MuleSoft
シンプルな開発手順は以下の公式 Document に記載されています。
- Build an API from Start to Finish
以下に実際の開発の画面を数点示します。
- ホーム画面:
- 実装画面 (API 仕様):
- 実装画面 (API 実装):
- デプロイ画面
まとめ
両社のクラウド製品のテーマや強みは異なります。
しかし、両社はお互いの製品を呼び出すことも可能です。
そのため、両社は共存することが可能であると考えられ、求められている要件に応じて両社のいずれかを選択することで、最適なシステムの自動化と統合が実現できると考えられます。
Workato
- SaaS 連携とビジネス部門主導の自動化を迅速にスケールしたい場合: Workato は 1,200 以上のコネクタとノーコードのレシピにより、開発速度が非常に速く、ビジネス部門のユーザーが安全に自動化を推進しやすい環境を提供します。これは、非 IT 技術者が自身でも構築ができると思わせるほどです
- AI エージェントに広範な企業システムへのアクションを安全に実行させたい場合: Workato Genie や Workato Enterprise MCP は、既存の統合ワークフローを AI エージェントが利用できる安全な「スキル」として簡単に公開することに注力しており、迅速な Agentic Automation の実現ができます
MuleSoft
- API 中心のアーキテクチャ (API-led Connectivity) を確立したい場合: Anypoint Platform は API の設計からガバナンス、デプロイまで、高度で複雑、包括的な API ライフサイクル管理機能を提供します。そして、既存の資源の再利用を促しエコシステムを築きます
- 複雑なハイブリッド環境が必要な場合: クラウド、オンプレミス、ハイブリッドなどさまざまな環境へデプロイして動作させることが可能であるため、環境に応じて柔軟なシステム構成を組むことが可能です
次回
現在、両社の AI に関する機能の発展が目覚ましく、素晴らしい機能がリリースされ続けています。
そのため、次回は AI に関する両社の製品をさらに詳しく確認していきます。