はじめに
SESでの常駐案件をこなしながら、ここ数ヶ月ほぼ毎日Claude Codeを触っている。きっかけは単純で、客先常駐だと使える開発ツールが制限されがちな一方、自分の手元環境やフリーランス案件では自由にCLIツールを選べるからだ。今日は2026年8月23日時点で、実際に自分の開発フローに組み込んでいるClaude Codeの使い方を、動くコマンドや設定ファイルつきで共有する。
「AIコーディングツールを試してみた」系の記事は世の中に溢れているが、実際にプロジェクトのCLAUDE.mdをどう書いているか、サブエージェントをどう使い分けているか、といった運用レベルの話は意外と出回っていない。この記事ではそこを掘り下げる。
Claude Codeのインストールと基本操作
まずは基本から。Claude CodeはNode.js製のCLIツールで、以下でグローバルインストールできる。
npm install -g @anthropic-ai/claude-code
プロジェクトディレクトリでclaudeと打つだけで対話セッションが始まる。既存のシェル補完やgitコマンドとも自然に共存するので、ターミナル作業の延長として使い始められるのが良い。
cd my-project
claude
ヘッドレスモード(-pフラグ)を使うと、対話なしで1回のプロンプトを実行して結果だけ受け取れる。これがcronやCIパイプラインへの組み込みに便利で、自分はデータ分析系のバッチ処理でよく使っている。
claude -p "このCSVの単価カラムに外れ値がないかチェックして、あれば理由も添えて報告して" < contracts.csv
CLAUDE.mdでプロジェクトルールを固定する
Claude Codeを使い始めて最初にやるべきなのが、プロジェクトルートにCLAUDE.mdを置くことだ。これはセッションのたびに自動で読み込まれるプロジェクト固有の指示書で、コーディング規約やディレクトリ構成、やってほしくないことを書いておくと、毎回同じ説明を繰り返さずに済む。
自分が実際に使っているCLAUDE.mdの抜粋はこんな感じだ。
## Core Principles
- Simplicity First: 変更は必要最小限にする
- No Laziness: 場当たり的な修正ではなく根本原因を直す
- Minimal Impact: 影響範囲を広げない
## Testing
- 変更後は必ず `npm run test` を実行してからコミットする
- テストが落ちている状態でコミットしない
グローバル設定として~/.claude/CLAUDE.mdも用意できて、こちらは全プロジェクト共通のワークフロー指示(コミットメッセージの書き方、危険な操作の前には必ず確認を取る、など)を書くのに向いている。プロジェクト固有の話とグローバルな作業スタイルの話を分けて管理できるのは地味に効く。
カスタムスラッシュコマンドで定型作業を短縮する
.claude/commands/ディレクトリにMarkdownファイルを置くと、独自のスラッシュコマンドを作れる。自分は単価交渉用の見積もりレビューを毎回頼むのが面倒だったので、こういうコマンドを作った。
---
description: 工数見積もりとその根拠をレビューする
---
以下の見積もり内容について、工数の妥当性・リスク・単価との整合性をレビューしてください。
架空の数値は使わず、不明な点は「要確認」と明記してください。
$ARGUMENTS
これを.claude/commands/review-estimate.mdとして保存しておけば、/review-estimate ここに見積もり内容で毎回同じ観点のレビューが呼び出せる。地味だが、繰り返しのプロンプト入力から解放される効果は大きい。
サブエージェントで調査を並列化する
大きめのタスクで効果を実感したのがサブエージェント機能だ。.claude/agents/にYAMLフロントマター付きのMarkdownを置くことで、特定の役割に特化したエージェントを定義できる。
---
name: data-explorer
description: CSV/DBのデータ構造を調査し、分析可能な形にまとめる
tools: Read, Bash, Grep
---
あなたはデータ分析の下調べ担当です。渡されたデータソースの
カラム構成・欠損値・型の不整合を洗い出し、分析に使える状態かを判定してください。
これをメインのエージェントから呼び出すと、コンテキストウィンドウを圧迫せずに調査だけを切り出せる。複数のデータソースを同時に調べたいときは、並列でサブエージェントを立てて結果だけを本体セッションに戻す使い方をしている。手元の案件では、契約単価一覧・稼働実績・スキルシートといった性質の違うデータを同時に眺める必要があったので、この機能はかなり噛み合った。
Plan Modeで手戻りを減らす
複数ファイルにまたがる変更をするときは、いきなり実装させずにPlan Modeに入るようにしている。Shift+Tabを2回押すか、明示的にプランニングを依頼すると、Claude Codeはまずコードを変更せずに実装方針を提示してくれる。
自分の体感としては、いきなり実装に入らせるより、先にプランを文章で確認したほうが「作ってはみたが方向性が違った」という手戻りが減った気がする。厳密な数値計測はしていないので体感の域を出ないが、少なくとも大きな変更ではプラン確認をスキップしない、というのが自分のルールになっている。
Hooksでガードレールを自動化する
.claude/settings.jsonにHooksを設定すると、特定のツール実行前後にシェルコマンドを差し込める。自分は本番DBに近い環境で誤操作しないよう、危険なコマンドをブロックするフックを入れている。
{
"hooks": {
"PreToolUse": [
{
"matcher": "Bash",
"hooks": [
{
"type": "command",
"command": "scripts/block-dangerous-commands.sh"
}
]
}
]
}
}
block-dangerous-commands.sh側ではrm -rfやgit push --forceといったパターンにマッチしたら非ゼロ終了してブロックする、という単純な仕組みだが、これがあるとAIに任せる範囲を思い切って広げられる。ガードレールを先に作ってから権限を広げる、という順番は個人的にかなり重要だと思っている。
データ分析タスクへの実践的な使い方
タイトルにも入れた「データ分析」の話を具体的に書く。自分がよくやるのは、SESや案件情報のCSV・スプレッドシートをClaude Codeに読ませて、集計・可視化用のPythonスクリプトを生成させる流れだ。
claude -p "contracts.csv を読み込んで、月次の稼働時間と単価の相関をpandasで集計するスクリプトを書いて。
架空の数値は使わず、実データの列名に合わせること。" > analyze.py
python analyze.py
ポイントは、AIに数値そのものを「創作」させないことだ。分析ロジック(スクリプト)を書かせて、実際の計算は手元の実データに対してPythonが行う、という役割分担にしている。AIに直接「単価はいくらですか」と聞いて答えさせると、もっともらしい嘘の数字が返ってくることがあるので、これは意識して避けている。
MCP連携で社内ツールとつなぐ
Model Context Protocol(MCP)を使うと、Claude Codeから外部サービスに直接アクセスできる。設定はclaude mcp addコマンドか、プロジェクト直下の.mcp.jsonで行う。
claude mcp add my-tool -- npx -y @my-org/mcp-server
自分はNotionやスプレッドシート連携のMCPサーバーを繋いで、案件管理表を見ながらコードの変更点を照合する、といった使い方をしている。ツールをその都度コピペしなくて良くなるのは想像以上に楽だ。
SES現場でこの手のスキルが効いてくる理由
ここからは少し実務寄りの話をする。SESで働いていると「つらい」と感じる場面は多い。多重下請け構造の中で、自分の稼働に対する単価が客先の支払い単価より大きく減額されているケースは珍しくないし、案件によっては技術的な裁量がほとんどなく、AIツールの導入すら現場のルールで制限されることもある。
一方で、フリーランスや直請けに近いポジションに移ると、単価交渉の材料として「何ができるか」を具体的に説明する必要が出てくる。ここで、Claude CodeのようなAIツールを使った開発フローを自分の言葉で説明できるかどうかは、地味だが差がつくポイントだと感じている。CLAUDE.mdでプロジェクトルールを設計できる、サブエージェントで調査を分業できる、Hooksで安全に権限を広げられる——こうした運用設計の話は、単に「AIでコードを書きました」より一段深い説明になる。
年収800万を一つの目安として考えるなら、SESの多重下請けの中に留まったまま単価改善を待つより、自分の技術力とAI活用の運用力をセットで見せられる働き方(フリーランス案件、直請け案件)に軸足を移すほうが再現性は高いと個人的には思っている。ただしこれは一般論であり、案件や地域、専門領域によって条件は大きく変わるので、実際の単価水準を判断する際は自分が応募する案件の募集要項や、契約するエージェント経由の実際の提示額を確認するのが確実だ。
まとめ
Claude Codeは単なるコード補完ツールではなく、CLAUDE.md・スラッシュコマンド・サブエージェント・Hooks・MCPといった複数の仕組みを組み合わせて、開発フロー全体を設計できるツールだ。特にデータ分析のようにミスが致命的になりやすい領域では、「AIに数字を作らせない」設計を意識するだけで信頼性が大きく変わる。
SESという働き方の中でも、こうした運用スキルを積み上げておくことは、将来的にフリーランスへ転向するにしても、単価交渉の場に立つにしても、確実に武器になる。まずは手元のプロジェクトにCLAUDE.mdを1つ置くところから始めてみてほしい。
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