はじめに
エンジニアとしてキャリアを積んでいくと、
「次に何を学べばいいか」「自分はどのレベルにいるのか」
そんな悩みに直面する瞬間があります。
資格を取ることは一つの目標ですが、
それだけでは“自分の立場”や“責任範囲”までは可視化できません。
そこで役立つのが、経済産業省が策定した ITSS(ITスキル標準) です。
ITSSとは?
ITSS(IT Skill Standard)は、IT人材のスキルや役割を
レベル1〜7 に分けて整理した国家的なスキルフレームワークです。
| レベル | 概要 |
|---|---|
| Lv1 | 新人・アシスタントレベル |
| Lv2 | 一部業務を独力で担当できる |
| Lv3 | 一人前のエンジニアとして責任を持てる |
| Lv4 | チームリーダー・上級技術者 |
| Lv5 | プロジェクトマネージャ・専門職上級層 |
| Lv6 | 部門マネージャ・ストラテジスト |
| Lv7 | 経営層・CxOレベル |
多くの企業がこの指標をもとに、評価制度や研修体系を設計しています。
つまりITSSは「何ができれば次のステップに進めるか」を定義したキャリアの地図です。
資格が「知識の証明」なら、ITSSは「立場の証明」
資格試験は非常にわかりやすい成果物です。
AWS SAAを取れば「クラウドの基礎を理解している」、
応用情報を取れば「IT全般の体系的知識がある」と示せます。
しかし、実務ではそれだけでは足りません。
「その知識をどんな規模・責任の中で活かせるか」──
ここを可視化できるのがITSSの強みです。
たとえばこんな対比です。
| 観点 | 資格 | ITSS |
|---|---|---|
| 証明するもの | 知識・技術 | 立場・責任 |
| 評価軸 | 理解度 | 実践力・影響範囲 |
| 活用場面 | 試験・認定 | 組織内評価・転職・面談 |
| 例 | AWS SAA, 応用情報 | ITSS Lv3〜Lv5, PM職定義 |
つまり、資格=能力の証明書、ITSS=立場の証明書。
「自分がどの範囲の責任を果たせるか」を語れることが、
これからのキャリアにおいて大きな武器になります。
ITSSが「立場の証明」になる理由
ITSSの最大の特徴は、“何ができるか”ではなく、
“どんな役割を担えるか” に焦点を当てている点です。
Lv3:仕様通りに開発・実装ができる
Lv4:チームをまとめ、レビューや設計方針を決められる
Lv5:プロジェクト全体のリスク管理・品質保証を行える
Lv6〜:組織や事業の戦略を描ける
このように、レベルが上がるほど 責任の範囲・視座の高さ・意思決定力 が求められます。
たとえば転職面接で「私はITSSでいうLv4相当の業務経験があります」と説明できれば、
具体的に“どんな立場の仕事をしてきたか”を一言で伝えられます。
スキルの棚卸を「ITSSレベル」で語れるようになると、
技術者としての立ち位置が明確になり、評価・報酬・次の目標がブレません。
資格とITSSを組み合わせると最強
実際のキャリア設計では、資格とITSSを組み合わせるのが効果的です。
Lv1〜2:基本情報・Oracle Bronze・CCNA
Lv3〜4:応用情報・AWS SAA・Oracle Gold
Lv5〜6:PM・ITストラテジスト・中小企業診断士
資格が「知識を証明」し、ITSSが「立場を補完」する。
この2軸でキャリアを描くことで、
「どの領域を伸ばせば昇格・転職・独立に近づくか」が明確になります。
ITSSで自分のキャリアを“見える化”する
まずは、自分の業務内容をITSSのレベル表に照らしてみましょう。
「自分はLv3(担当者)として十分動ける」
「次はLv4(リーダー)としてチームを導く力をつけたい」
「将来的にはLv5(プロマネ)としてプロジェクト全体を見たい」
このように 「現状 → 目標 → ギャップ」 を整理することで、
漫然と資格を取るよりも、戦略的な学習計画を立てられます。
Notionやスプレッドシートで「ITSSスキルマップ」を作るのもおすすめです。
まとめ
資格は知識の証明。
ITSSは立場の証明。
キャリアを積み上げるとは、「自分がどのレベルの責任を担えるか」を増やすことです。
その指標を持っているだけで、面談・転職・副業・独立──あらゆる場面で説得力が増します。
ITSSはキャリアの地図であり、あなたの“立場の証明書”でもある。
これを手に、次のステップへ進むための道筋を描いていきましょう