はじめに
- 仕事柄、オンプレミス/クラウドに関わらずITインフラに関わる方々とお話をする機会が多くあります。
- 最近そのような方々のお話を聞いていると、ITインフラのコスト増加が課題となっているケースが多く、中には経営層から現場に対してITコストの改善を求められているといった声も聞こえてきます。
- 前回の記事でクラウドコストを最適化するための考え方であるFinOpsについて調べてみると、FinOpsを始めるにはまず「可視化」をしなければならないということがわかりました。そこで、本記事では、「ITインフラのコストを最適化したい」シリーズの第二回として「可視化」について考えてみます。
- ちなみに、本記事は一見ポエミーな記事ですがシリーズの最後に実践編へと続いていくので実はポエムではないです。(重要)
可視化のゴール:誰が何をどれくらい使っているのか、また使う見込みかを把握すること
- まず、可視化のゴール、どうなれば可視化を達成できたことになるのかを考えていきます。ITインフラのコストを最適化するための最初のフェーズとしての可視化のゴールです。
- コストを最適化するためには、コスト構造を分解して把握する必要があります。パブリッククラウドとオンプレミスとではコスト構造が異なるため、ひとまず分けて考えてみます。
パブリッククラウドの場合
- パブリッククラウドのコストを分解すると、利用している全リソースの「単価×量(時間)」の足し算になるはずです。つまり、コスト構造を把握するには「何をどれくらい使っているか」を把握しなければなりません。
- そして、それを使っている人やチームがいて、彼らが実際にコスト最適化の取り組みを行う主体となっていくため、「誰が何を使っているのか」ということも把握しなければなりません。
- また、場合によってはリザーブドインスタンスなどのコミット型の割引契約を検討することもあると思います。その場合、先の利用傾向も見据えて契約する必要があるため、今後どれくらい使う見込みがあるのかということも把握する必要があります。
- つまり、パブリッククラウドのコストを最適化するための可視化としては、「誰が何をどれくらい使っているのか、また使う見込みかを把握すること」が達成できればよいと言えます。
オンプレミスの場合
- オンプレミスであっても、個々のリソース割り当てについて見直して改善すれば環境全体のリソース使用率が最適化され、追加調達、リプレースする際のリソースも最適化することができるため、パブリッククラウドと同様に「誰が何をどれくらい使っているのか」については把握しておく必要があります。
- それに加え、オンプレミスの場合、大抵は5年などの期間で使用するであろうリソースをまとめて調達することが多いと思うので、既存の環境があるのであれば、今現在の環境全体での各リソースの使用率を把握するところからスタートする必要があります。そして、5年後などの次の投資タイミングまでにその使用率がどのようになっていく見込みかというところまで把握しなけれればなりません。
- つまり、オンプレミスのコストを最適化するための可視化としても、パブリッククラウドと同様に「誰が何をどれくらい使っているのか、また使う見込みかを把握すること」が達成できればよいと言えます。
コスト最適化という最終目標のためには、何をもってITリソース割り当てなどが適切であるといえるか(無駄がないといえるか)などの定量的な基準を定める必要がありますが、それはFinOpsの次のフェーズである「Optimize(最適化)」で検討する内容になるため、本記事では可視化としてのゴールには含めていません。
監視と可視化の違い
- ほとんどのITシステムでリソースの使用率などは何らかの仕組みで監視していると思います。ここで、監視と可視化の違いについて考えてみます。
監視とは:リソースやサービスに「異常がないかどうか」を把握する仕組み
- 従来から行われている監視は、リソースの使用率や使用量、レスポンスの速度などに閾値を設定してその値を監視し、「閾値超過=異常」とみなして通知をするものです。
- つまり、リソースやサービスに「異常がないかどうかを把握する仕組み」と言えます。
- これでは、異常がないかどうかの把握はできますが、無駄遣いしていないかなどの使われ方の適切さまでは把握することはできません。例えば、ほとんど使用されないものに過剰なリソースが割り当てられていたとしても監視の仕組みだけでは気づくことが出来ないということです。
- また、そのリソースを誰が使っているのかということも監視だけでは把握することは難しいと思います。
- コスト最適化のためにはリソースが無駄遣されている箇所を特定する必要があるので、従来の監視では不十分と言えます。
可視化とは:リソースやサービスが「どのように使用されているか」を把握する仕組み
- コスト最適化のために実現すべき可視化とは、リソースが「どのように使用されているか」を把握する仕組みと言えます。
- 「常に割り当てられたリソースのギリギリまで使われているのか」、「特定のイベントが発生した時のみ使用率が上がるのか」、「割り当てられたリソースがほとんど使用されていないのか」などのリソースの使われ方は、可視化の仕組みによって把握することが可能になります。
- また、リソースと利用者の紐づけも可視化の仕組みによって実現します。
まとめ
- 可視化のゴールは、「誰が何をどれくらい使っているのか、また使う見込みかを把握すること」
- コスト最適化のためには、リソースやサービスに「異常がないかどうか」を把握する仕組みである監視では不十分
- リソースやサービスが「どのように使用されているか」を把握する仕組みである可視化が必要
次回予告
- 可視化について考えが深まったところで、次回は実際にツールを使って可視化してみます。
- 次回の記事はこちら。