はじめに
- 仕事柄、オンプレミス/クラウドに関わらずITインフラに関わる方々とお話をする機会が多くあります。
- 最近そのような方々のお話を聞いていると、ITインフラのコスト増加が課題となっているケースが多く、中には経営層から現場に対してITコストの改善を求められているといった声も聞こえてきます。
- 色々調べてみると、「FinOps(「Finance(財務)」と「DevOps」の造語)」という、主にクラウドコストを最適化するための考え方があることを知りました。
- 本記事では、「ITインフラのコストを最適化したい」シリーズの第一回として、FinOpsについてにまとめてみました。
- ちなみに、本記事は一見ポエミーな記事ですがシリーズの最後に実践編へと続いていくので実はポエムではないです。(重要)
FinOpsとは
FinOpsの定義:ビジネス価値を最大化するためのクラウド財務管理の規律と文化の実践
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FinOps Fundationによる定義の原文はこちら。
"FinOps is an evolving cloud financial management discipline and cultural practice that enables organizations to get maximum business value by helping engineering, finance, technology and business teams to collaborate on data-driven spending decisions."
- 日本語に訳すとだいたいこんな感じになると思います。
FInOpsは、クラウド財務管理の規律と文化の実践です。エンジニアリング、財務、テクノロジー、ビジネスの各チームがデータ主導の支出決定を行うためのコラボレーションを支援することで組織がビジネス価値を最大化できるようにするものです。
FinOpsが目指すこと:クラウドコストの説明責任を果たしながらコストを最適化
- FinOpsは、変動するクラウドコストに対して「誰がいつどれだけ使ったのか」「それが妥当なのか」という財務面での説明責任を明確にすることを目指すものです。
- また「品質」「コスト」「納期」のトレードオフを考慮しながら、クラウドコストの最適化を目指します。
FinOpsの実践:「Inform(可視化)」、「Optimize(最適化)」、「Operate(実行)」3つのフェーズを繰り返す
- FinOpsは以下の3つのフェーズを繰り返すことで継続的に最適化をしていく営みです。
引用元:https://www.finops.org/framework/phases/
1. Inform(可視化):クラウドコストとその構造を可視化して理解する
- このフェーズは、主に以下の3つのステップで進めていきます。
- コストの割り当て(誰が何をどれくらい使っているか)を正確に把握
- 過去のコスト変動や将来の計画などから、今後のコストの変動の傾向を分析
- コストの妥当性を数値化してベンチマークを行い、ビジネスの指標と照らし合わせて妥当性を分析
2. Optimize(最適化):最適化余地を探り改善目標を設定する
- 無駄が発生しているITリソースを特定して、無駄に対するコスト削減案と改善目標を検討します。
- コスト削減案は期待効果とリスクの関係性を考慮して複数用意したほうが良いです。
3. Operate(実行):設定した改善目標を達成する打ち手を考えて実行する
- Optmizeフェーズで検討した対策を実行します。
コスト削減≠コスト最適化
- FinOpsが何のためのものなのかがわかってきたところで、「コスト削減」と「コスト最適化」の違いについて考えてみます。
コスト削減
- 「コスト削減」は、文字通りコストが削減されることと捉えてよいと思います。
- つまり、例えば前年度や前月などの基準点からコストが増えているか減っているかにのみ注目するということです。
コスト最適化
- 一方、「コスト最適化」は、ただコストを減らせばいいというものではないと考えます。
- 例えば、前年度からITインフラのコストが2倍になったとしても、アクティブユーザー数が倍増してシステム規模が2倍以上になっていれば、それは適切な投資と言えます。また、ITインフラのコストを2倍に増やして、サービスの品質と提供スピードが劇的に向上したりシステム運用の工数が激減することで、ビジネス上の競争優位性を獲得して業績を2倍以上に伸ばせたとしたらどうでしょう。
- 単純に、コストが増えているか減っているかではなく、無駄を排除してビジネス価値を最大化する投資を行うのがコスト最適化と言えそうです。
まとめ
- FinOpsとは、ビジネス価値を最大化するためのクラウド財務管理の規律と文化の実践
- FinOpsは「Inform(可視化)」、「Optimize(最適化)」、「Operate(実行)」の3つのフェーズを繰り返す活動で、まずは可視化することが必須
- コスト最適化とは、単にコストを削減することではなく、ビジネス価値を最大化するための支出を最適化すること
次回予告
- FinOpsの最初のフェーズである「可視化」について考えていきます。
- 次回の記事はこちら
参考リンク
- 非営利団体「FinOps Foundation」によるFinOpsの紹介:What is FinOps
- 上記内容を基にFinOpsについてわかりやすく解説してくれている記事:FinOpsの基本と実践(第一回、第二回、第三回、第四回)