Unity工程に“最後の仕事”が集まる理由
XR案件が拡大するにつれ、最終工程であるUnityの実装フェーズがボトルネック化し、プロジェクト全体のリスクが高まるケースをよく見かけます。
本記事では、特定の職種の苦労話をしたいわけではありません。
「なぜXR開発の構造上、最後に負荷と不確実性が偏りやすいのか」 を、プロジェクトマネジメントの観点から整理します。
もちろん、デザイナー、モデラー、ディレクターなど、すべての職種がハードワークであることは大前提です。
その上で、「制作物の統合地点」になりやすいUnity工程に潜む構造的なリスク へ焦点を当てます。
他の開発環境について
本記事では事例の多い「Unity」を主語として記述しますが、この構造的課題は Unreal Engine、WebAR、Swift(Vision Pro)など、すべての「最終的な統合環境」において共通して発生する現象です。
現象:すべての「不確実性」がUnityに流れ着く
XR開発において、Unity担当の役割は単なる「実装」に留まりません。
プロジェクト後半になるほど、次のような 不確実性の吸収 を担うことになります。
- 実機パフォーマンスの最終調整
- 現地環境(光、空間、通信)でのセンサー挙動の吸収
- 仕様と実体験の乖離のすり合わせ
- 各アセット(デザイン・モデル)の統合と不整合の解消
これらがすべて最終工程に集中するため、ここが詰まるとプロジェクト全体が破綻しやすくなります。
これは個人の能力や努力の問題ではなく、「全工程のしわ寄せが物理的に集まる場所(SPOF:単一障害点)」 になりやすい構造的特徴によるものです。
原因:能力ではなく「成果物の性質」の違い
なぜデザイナーやモデラーではなく、Unity工程に調整が残りやすいのでしょうか。
それは、扱う成果物の性質が根本的に異なるためです。
1. 静的データ vs 動的プログラム
デザインやモデルは「データ」として一定の完成判定が可能です。
一方、Unityはそれらを統合し、「実際に動作する体験」として成立させる必要があります。
そのため、統合時に初めて顕在化するバグや矛盾は、必然的にUnity工程で検知・修正されます。
2. 実機・現地という「最大の不確定要素」
Webやスマホアプリと異なり、XRは「現実空間」を前提とします。
机上の仕様では予測できない 現地環境のゆらぎ への対応は、最終的に実装コード側で吸収せざるを得ません。
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| ※図は生成AIで作成したイメージです |
つまり、「構造上、最後まで完了判定を出せないタスク」 がUnity工程に残りやすい、というだけの話です。
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| ※図は生成AIで作成したイメージです |
対策:属人化による突破は「事故」の元
この構造を「Unity担当の責任感」や「長時間労働」で乗り切ろうとする現場は、長期的に見ると危険です。
短期的には成立しても、ナレッジの属人化や品質の不安定化を招きます。
必要なのは精神論ではなく、ワークフローの設計です。
1. タスクの「種類」を明確に分ける
Unity担当の作業を 「実装」 と 「検査」 に分離してください。
特に「ビルド」と「実機確認」は、Unity担当者以外でも回せる体制を作るだけで、ボトルネックは大きく緩和されます。
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| ※図は生成AIで作成したイメージです |
2. 「成立ライン」の確認を前倒しする
「全部できてから確認」ではなく、モックアップ段階で
体験として成立する最低ライン(フレームレート、トラッキング精度など) を合意しておくことが重要です。
最終盤で「表現」と「パフォーマンス」のトレードオフが発生すると、手戻りコストは急激に膨らみます。
3. 「現地・実機」の不確実性を最初に見積もる
「やってみないとわからないこと」を後半に残さないことが重要です。
センサー感度や実機の熱問題など、物理的制約条件 は初期段階で検証し、それを前提に仕様やデザインを決める必要があります。
さいごに
XRプロジェクトにおいて、Unity工程に負荷が偏るのは構造上の必然です。
これを「誰かが大変そう」という感情論で終わらせず、
「プロジェクトのクリティカルパスがここに存在している」 と捉え直す必要があります。
負荷の分散は、誰かを楽にするための施策ではありません。
プロジェクトを安全に着地させるための、リスク管理そのものです。
本記事が、個人の頑張りに依存しないXR開発体制を考える一助になれば幸いです。
追記
Xで多くの反応をいただきました!
- 実装担当がテストや確認を抱えがちになる構造
- 現地案件など、環境差分が大きいXR開発ならではのテストの難しさ
といった点に共感いただく反応が多く、
同じ課題意識を持つ方が多いことを感じました。
反応をくださった皆さま、ありがとうございます!


