7
2

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?

Unity工程に“最後の仕事”が集まる理由 ― XR案件が増えるほど苦しくなる構造

Last updated at Posted at 2026-01-22

Unity工程に“最後の仕事”が集まる理由

XR案件が拡大するにつれ、最終工程であるUnityの実装フェーズがボトルネック化し、プロジェクト全体のリスクが高まるケースをよく見かけます。

本記事では、特定の職種の苦労話をしたいわけではありません。
「なぜXR開発の構造上、最後に負荷と不確実性が偏りやすいのか」 を、プロジェクトマネジメントの観点から整理します。

もちろん、デザイナー、モデラー、ディレクターなど、すべての職種がハードワークであることは大前提です。
その上で、「制作物の統合地点」になりやすいUnity工程に潜む構造的なリスク へ焦点を当てます。

他の開発環境について
本記事では事例の多い「Unity」を主語として記述しますが、この構造的課題は Unreal Engine、WebAR、Swift(Vision Pro)など、すべての「最終的な統合環境」において共通して発生する現象です。

現象:すべての「不確実性」がUnityに流れ着く

XR開発において、Unity担当の役割は単なる「実装」に留まりません。
プロジェクト後半になるほど、次のような 不確実性の吸収 を担うことになります。

  • 実機パフォーマンスの最終調整
  • 現地環境(光、空間、通信)でのセンサー挙動の吸収
  • 仕様と実体験の乖離のすり合わせ
  • 各アセット(デザイン・モデル)の統合と不整合の解消

これらがすべて最終工程に集中するため、ここが詰まるとプロジェクト全体が破綻しやすくなります。
これは個人の能力や努力の問題ではなく、「全工程のしわ寄せが物理的に集まる場所(SPOF:単一障害点)」 になりやすい構造的特徴によるものです。

原因:能力ではなく「成果物の性質」の違い

なぜデザイナーやモデラーではなく、Unity工程に調整が残りやすいのでしょうか。
それは、扱う成果物の性質が根本的に異なるためです。

1. 静的データ vs 動的プログラム

デザインやモデルは「データ」として一定の完成判定が可能です。
一方、Unityはそれらを統合し、「実際に動作する体験」として成立させる必要があります。

そのため、統合時に初めて顕在化するバグや矛盾は、必然的にUnity工程で検知・修正されます。

2. 実機・現地という「最大の不確定要素」

Webやスマホアプリと異なり、XRは「現実空間」を前提とします。
机上の仕様では予測できない 現地環境のゆらぎ への対応は、最終的に実装コード側で吸収せざるを得ません。

image.png
※図は生成AIで作成したイメージです

つまり、「構造上、最後まで完了判定を出せないタスク」 がUnity工程に残りやすい、というだけの話です。

※図は生成AIで作成したイメージです

対策:属人化による突破は「事故」の元

この構造を「Unity担当の責任感」や「長時間労働」で乗り切ろうとする現場は、長期的に見ると危険です。
短期的には成立しても、ナレッジの属人化や品質の不安定化を招きます。

必要なのは精神論ではなく、ワークフローの設計です。

1. タスクの「種類」を明確に分ける

Unity担当の作業を 「実装」「検査」 に分離してください。

特に「ビルド」と「実機確認」は、Unity担当者以外でも回せる体制を作るだけで、ボトルネックは大きく緩和されます。

image.png
※図は生成AIで作成したイメージです

2. 「成立ライン」の確認を前倒しする

「全部できてから確認」ではなく、モックアップ段階で
体験として成立する最低ライン(フレームレート、トラッキング精度など) を合意しておくことが重要です。

最終盤で「表現」と「パフォーマンス」のトレードオフが発生すると、手戻りコストは急激に膨らみます。

3. 「現地・実機」の不確実性を最初に見積もる

「やってみないとわからないこと」を後半に残さないことが重要です。
センサー感度や実機の熱問題など、物理的制約条件 は初期段階で検証し、それを前提に仕様やデザインを決める必要があります。

さいごに

XRプロジェクトにおいて、Unity工程に負荷が偏るのは構造上の必然です。
これを「誰かが大変そう」という感情論で終わらせず、
「プロジェクトのクリティカルパスがここに存在している」 と捉え直す必要があります。

負荷の分散は、誰かを楽にするための施策ではありません。
プロジェクトを安全に着地させるための、リスク管理そのものです。

本記事が、個人の頑張りに依存しないXR開発体制を考える一助になれば幸いです。

追記

Xで多くの反応をいただきました!

  • 実装担当がテストや確認を抱えがちになる構造
  • 現地案件など、環境差分が大きいXR開発ならではのテストの難しさ

といった点に共感いただく反応が多く、
同じ課題意識を持つ方が多いことを感じました。

反応をくださった皆さま、ありがとうございます!

7
2
0

Register as a new user and use Qiita more conveniently

  1. You get articles that match your needs
  2. You can efficiently read back useful information
  3. You can use dark theme
What you can do with signing up
7
2

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?