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AR用語の語源を調べてみた

Last updated at Posted at 2025-10-27

AR用語の語源を調べてみた

私はARエンジニアやARクリエイターを名乗って活動しています。
AR関連の用語を日常的に使っていますが、「これらの言葉はいったい誰が作ったのだろう?」と気になり、調べてみました。

あくまで言語学の専門家ではなく、趣味として調べた内容です。
その点、ご了承ください。

AR(Augmented Reality)

ARデバイスのようなものは古いSF小説などにも登場しますが、ここでは 「ARという言葉」そのものの起源 を追います。

「Augmented Reality」という用語は、1990年にボーイング社の研究者 Tom Caudell 氏と David Mizell 氏によって造られたとされています。
1992年に発表された以下の論文が、現在確認できる最初の正式な使用例です。

この論文では、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)を用いて、作業図を現場作業者の視界に重ねて表示する仕組みが提案されています。
現実の視界に情報を 付加(augmentation) する――まさに「Augmented Reality」という表現ですね。
この時点でHMDを前提にしていたのが面白いです。

私見ですが、日本で「AR」という言葉が一般的に知られるようになったのは、2009年のスマホアプリ 「セカイカメラ」 がきっかけだと思います。
スマートフォンという新しいデバイスの可能性を示したアプリであり、この頃に「AR=スマホAR」というイメージが定着したと感じます。

MR(Mixed Reality)

「Mixed Reality」という用語は、1994年に Paul Milgram 氏と岸野文郎氏によって提唱されました。

この論文では、 現実と仮想の連続体(Reality–Virtuality Continuum) が提案され、
AR(Augmented Reality)と AV(Augmented Virtuality)を包括する概念として MR(Mixed Reality)が定義されています。

Reality–Virtuality Continuum
出典:Paul Milgram and Fumio Kishino (1994), "A Taxonomy of Mixed Reality Visual Displays" 図のライセンスは CC BY-SA 3.0
出典元:https://en.wikipedia.org/wiki/File:Virtuality_continuum_2-en.svg

AVとは、たとえば以下のようなものです。

  • VR空間にリアルタイムの人物映像を合成する
  • 現実のモーションキャプチャデータをVR内で利用する
  • リアル物体をトラッキングしてVR空間内に干渉させる

2025年の感覚では、これらも「VR」と呼んでしまいそうですが、
当時は「現実と仮想の融合」という観点から、別の概念として整理したかったようです。

その後、2017年に Microsoft が 「Windows Mixed Reality」 というブランドを立ち上げ、
この用語が一般にも広まりました。
学術的なMRとMicrosoftが指すMRには多少のズレがありますが、
この時期に「AR+VR=MR」という理解が広まったのは確かです。
私自身もこの頃にHololensを購入し、XRの世界に本格的に関わり始めました。

SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)

現在のスマホARではマーカーを使わないのが当たり前ですが、それを支えているのが SLAM です。
カメラやセンサーの入力から デバイスの位置と姿勢を同時に推定する技術 のことを指します。
もともとはロボット工学の分野で生まれた用語です。

「SLAM」という言葉は、1995年に Smith, Cheeseman, and Leonard による論文で初めて登場したとされています。
以後、ロボティクス分野で広く使われるようになりました。

英単語の「slam」は「バタンと閉める」という擬音語でもあって、とても良い命名だと思います。

VPS(Visual Positioning System)

Visual Positioning System という言葉自体は古くから使われており、明確な初出を特定するのは難しいです。
ただし、「地図上で自分の位置を推定する」意味でのVPSを商業的に打ち出したのは、Googleが最初のようです。

2017年、GoogleはTango対応デバイス向けに「Visual Positioning Service」という技術を発表しました。
これが現在のVPSの原型と考えられます。

「GPS(Global Positioning System)」をもじった造語と思われます。
その後、Niantic や Immersal などの企業も同様の意味で「VPS」という言葉を使うようになりました。

まとめ

言葉の意味や使われ方は、時代とともに変化していきます。
特にXR分野では、技術の進化にあわせて用語の再定義が繰り返されています。

今回は、そんな「ARまわりの言葉の生い立ち」をざっくりまとめてみました。
誰かの調べ物や雑談のネタになれば幸いです。

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