導入
以前に Pharo を使ってフラクタル図形を描画するというトピックを紹介しました。今回はプログラミング初心者の方にもわかりやすく Pharo を使えるようになるまでを解説したいと思います。
まず最初に知っておいて欲しいこと
Pharo は Smalltalk 処理系の一つです。Smalltalk においては、バーチャルマシンとイメージファイルの2つが必要となります。これは Pharo においても同じです。
バーチャルマシン(VM)
これは Pharo を実行するために必要な実行形式のファイルです。Windows, MacOS, Linux などプラットフォーム毎に提供されています。使用している OS に対応したバーチャルマシンを使用する必要があります。
イメージファイル
Smalltalk 処理系で「イメージファイル」と言うときは画像ファイルの事ではなくて、バーチャルマシンに読み込ませるファイルのことを指します。Pharo (Smalltalk) 上のすべてのオブジェクト群の状態を1つのファイルに保存したもので、イメージファイルをバーチャルマシンに読み込ませることで、Smalltalk (Pharo) が起動します。あなたがプログラムを書くとその変更点がイメージファイルに反映されていきます。Smalltalk (Pharo) を終了するときはイメージファイルに変更内容を保存しておくことで。次回起動するときに作業を再開することができます。
Pharo のダウンロード
Pharo は無料で使用することができ自由です。商用利用も可能です。あなたが作ったプログラムをインターネットで配布する場合は、Pharo が採用している「MIT ライセンス」であることを明記する必要があります。Pharo は以下からダウンロードできます。
最初はスタンドアローン版を使用するのが良いでしょう。スタンドアローン版はインストールが不要で、初めて Pharo をさわる人にも簡単に導入できるので最適です。
実際に Pharo のダウンロードしてみる
Pharo の公式サイトに「DOWNLOAD」というボタンがあります。クリックしてダウンロードページを開いてください。ページを一番下の方へスクロールすると「Pharo standalone」と記載があります。先程説明したようにご自分のプラットフォームに合うバーチャルマシンと、イメージファイルの2つをダウンロードしてください。使用している OS が Windows であれば、Windows 版の VM をダウンロードしますが、64bit 版を選んでください。なお、イメージファイルは一種類しかありません。どのプラットフォームでも同じものを使います。こちらも 64bit 版を選んでください。
適当な作業用ディレクトリにダウンロードできたら、念の為ウィルススキャンをしてから zip を展開してください。これで Pharo をはじめる最初の準備ができました。
Pharo を起動する
※ ファイル名などは、Windows 版の名称になっていますが、ご自分のプラットフォームに合わせて読み替えてください。
VM の zip を展開したディレクトリには様々なファイルが格納されていますが、「Pharo.exe」という実行形式のファイルがあります。これが VM の本体です。このファイルを実行してください。すると、開くイメージファイルを聞いてきますので、ダウンロードしたイメージファイルを展開したディレクトリ内にある .image という拡張子のファイルを選択してください。次のような画面が現れるはずです。これで Pharo が起動しました。

はじめにやること
早速 Pharo を使いたい気持ちはありますが、最初にイメージファイルを別名にして保存します。これは今開いているオリジナルのイメージファイルを壊したくないからです。
Pharo の画面の上部にメニューが表示されていると思います。左端にある「Pharo」をクリックし、表示するプルダウンメニューから「Save as...」を選んでください。「Save As」ダイアログを表示するので、下部にあるイメージファイル名を「自分の名前.image」のように修正して「Save」ボタンをクリックしてください。
Pharo を一旦終了する
Pharo を終了するにはタイトルバー右端にあるバツボタンをクリックします。他のアプリケーションと同じです。Pharo は終了する前に変更を保存するか聞いてきますが、ここは「Discard」(破棄)を選んでください。
もう一度 Pharo を起動する
もう一度 Pharo.exe を実行し、今度は先程別名保存したイメージファイル(例「自分の名前.image」)を選択してください。これで Pharo でプログラミングする準備が整いました。Pharo を終了するときに、修正した内容を保存しておきたいときは、「Save」を選択してください。もし保存したくない場合は「Discard」を選んでください。
まとめ
簡単にまとめると、
・Pharo (Smalltalk) の特徴として、VM とイメージファイルが存在する。
・Pharo を起動するときは VM にイメージファイルを読み込ませる。
・オリジナルのイメージファイルは変更したくないので、イメージファイルは最初に別名保存する。
・以降は別名保存したイメージファイルを使う。
ということを解説しました。
おわりに
初めて Pharo をさわる方は、自分の修正が原因でイメージファイルが壊れて使えなくなってしまう事もあります。その場合はオリジナルのイメージファイルから自分用のイメージファイルをもう一度作り直してください。オリジナルには変更を入れていないので何度壊れたとしても簡単に復旧できます。
「間違えたっていいがな、人間だもの。 み◯を」
イメージファイルを壊してしまったり、エラーが起きる事を恐れないでください。Smalltalk でのプログラミングは「トライ&エラー」が基本です。失敗は成功の母。人間が間違えるのは当然であり、それを許容する環境を整えています。プログラミングする人間をサポートするための様々な仕組みが用意されています。いろいろ試してプログラミングを楽しんでみてください。