商談が終わった直後の報告書づくりは、営業の現場で最後まで手が回らなくなる仕事だ。外出先から戻って日報を書き、報告書をまとめ、次の予定に進む。最近は商談直後の口述メモをAIに読ませて報告書の下書きを作る使い方が増えているが、ここで起きやすいのが「書いたのに動けない報告書」になることだ。
何を話したかは残り、次が消える
口述メモを渡すと、AIは話の流れをきれいに整理する。製品の説明をした、価格の話が出た、先方は前向きだった——こうした「何を話したか」の記録は仕上がりが良い。
問題は「次の一手」が消えることだ。口述メモには「来月また連絡すると言われた」のような一言が混ざっている。これをAIは本文の中に埋め込むが、欄として立てない。読む側は全文を読まないと次の行動が分からず、書いた本人も2週間後には読み返さない。
先に決めるのは「次の一手」の型
対策は、報告書の末尾に「次の一手」の欄を固定し、その書き方を3要素に決めておくことだ。
- 誰が: 次のアクションの担当。自分、相手、第三者のいずれか
- いつまでに: 期限。特定できない場合は次回商談の予定日でよい
- 何を: する内容。メール1本、資料1枚でも構わない
運用で決めておくべきルールは「空欄禁止」だ。書くことがない商談は、商談ではなく顔合わせだったということになる。その場合は「見込みの有無を確認する」という一手にまで落とす。空欄を許すと欄は飾りになる。
現場の例: 自動車部品メーカーのF社
自動車部品を扱うF社(架空)では、営業担当が商談の直後にスマートフォンへ3分の音声メモを残し、戻り次第AIで報告書の下書きを作っていた。文章の仕上がり自体は良好だったが、営業会議では「この商談、次どうするのか」の確認が毎回起きていた。
見直しとして、報告書の末尾に3要素の「次の一手」欄を固定し、AIへの指示に「欄が埋まっていない場合、音声メモから推測して埋め、判断に迷う部分はその旨を付記せよ」を加えた。先方の言質がないものは予測として欄に付す、というルールも足した。これにより会議では報告書の本文を読む時間が減り、欄を上から眺めて予定表に写す運用に切り替わったという設定だ。
AIが推測で欄を埋めることを嫌う向きもあるが、空欄よりは推測の方が扱いやすい。間違いがあれば本人が欄を直せば済む。空欄の報告書は、読む側への推測の丸投げになる。
まとめ
- 報告書は記録ではなく、次の行動の台帳として設計する
- 「次の一手」は誰が・いつまでに・何をの3要素で固定する
- 空欄は禁止にする。書けない商談は「見込みの確認」まで落とす
- AIには推測で埋めさせ、人は欄を直す。空欄のまま出させない
商談録の実用性は、AIの文章力よりも欄の設計でほぼ決まる。そして欄を設計できるのは、次の一手を実際に実行する本人だ。AIに任せる前の30分をこの欄づくりに使うのが割に合う。