はじめに
この記事はLumos Advent Calendarの12日目の記事です!
Day12の記事は@Shion1305 サークルでTsukuCTF2023に参加してきました💪 でした!僕も参加してまして、とても楽しい経験でした~
Day14の記事は@morizoeが担当します、お楽しみに。
それでは本題へGO~
そもそも「オークション」って?
皆さんご存知の「オークション」といえば、とんでもない額で落札される絵画やマグロ、あるいは公共工事などの入札のイメージが強いのではないでしょうか。
今回扱う「オークション」は、みんなで一斉に入札額を提出し、最も入札額の高い人にその権利が与えられるタイプのオークションを考えます。
この「オークション」は、欲しい人に一番高い額で買ってもらうための手段としてよく使われています。1位で落札した人が、その価格で支払って購入するという形式が、恐らく最も自然で、見慣れた「オークション」だと思います。
しかし、実はそれだけが「オークション」なのではありません。「1位の入札額」で支払うという部分を「2位」や「3位」にすることも出来てしまいます。つまり、実際に買う人は自分の入札額よりも低い金額で購入できるという方式も「オークション」として成立するんです。
それだけでなく、この「何位の入札額を用いるか」によってオークションの性質を巧みにコントロールすることが出来てしまうのです。
そんな奥深い「オークション」について今回は書いていきます。
仮定や記号について
数式に用いる仮定や記号の説明です
- オークションには $n$ 人が参加しているとします
- $\beta_i^k$:参加者 $i$ が、$k$ 位の入札価格で購入するルールの時、どんな方法で入札額を決定するか、を定めた「戦略」
- $\beta$ は対称で、微分可能で、単調増加
- $v_i$:参加者 $i$ が、出品されたものに対してどれくらいまで支払えるか、という「評価値」
- $i$ は自分の評価値しか知らない(私的情報)
- $Y^1$:参加者 $i$ 以外の参加者の評価値のうち、最も高いもの
- $F$:分布関数
- $f$:密度関数
注意点
詳細については割愛しています。参考文献内に詳しい条件や証明があるのでそちらをご覧ください。
1位の入札額で購入するルールのとき
対称均衡において、入札額の戦略は
\beta_i^1(v_i) = E[Y^1|Y^1<v_i]
となります。
この結果を色々と式変形したりして捏ねていくと以下のことが分かってきます。
- 入札額は、評価値よりも低くなる
- 参加人数が増加すると、$\beta_i(v_i) = v_i$に収束し、真実を表明する
- オークションの売り手の収入の期待値は、参加者の評価値のうち2番目に高いものの期待値になる
- 例外:リスクを嫌う買い手であるなら、収入の期待値は上がる Holt (1980)
このオークションでは、入札額は評価値よりも低くなります。そのため、リスクを嫌うような買い手が参加者であるなら、採用したほうが
2位の入札額で購入するルールのとき
支配戦略として、入札額の戦略は
\beta_i^2(v_i) = v_i
となります。
1位のときと同様に考察してみると、
- 入札額は評価値よりも低くなる
- 参加人数に関係なく、結果は一定
- オークションの売り手の収入の期待値は、参加者の評価値のうち2番目に高いものの期待値になる
このオークションではいかなる時でも各人の真の評価値が表明されます。収入の期待値は1位のときと変わらず、しかも売り手は真の評価値を知ることができるので、安定的かつ有益な情報の多いオークションになります。
3位以下の入札額で購入するルールの時
$k$ 位の入札額で購入するとき、均衡において、入札額の戦略は
B_i^k(v_i) = v_i+ \frac{k-2}{n-k+1}\frac{F(v_i)}{f(v_i)}
となります。
ここから得られる考察は以下になります。
- 入札額は評価値よりも高くなる
- 参加人数が増加すると、$\beta_i(v_i) = v_i$に収束し、真実を表明する
- オークションの売り手の収入の期待値は、参加者の評価値のうち2番目に高いものの期待値になる
買い手は自分の評価値よりも高い値で入札しなければならないので、少なからず損をするリスクを背負います。そのため、リスクを嫌う買い手ならばこのオークションへの参加を控えるようになります。
反対に、リスクを好む買い手ならばこの形式のオークションは魅力的に映るはずです。インターネットオークションのようなギャンブル的性質のあるオークションである場合はこの形式を採用するほうが良い、ということになります。
参考文献