【個人開発】「自分は何も覚えなくていい」認知負荷ゼロ開発でSaaSを公開した3日間
導入
普通の個人開発は、頭がパンクしがちです。
過去の修正内容、依存関係、同じバグの解決策――すべて自分の脳で覚えていなければなりません。
しかし今回、自分は真逆のアプローチを取りました。
「何も覚えなくていい」=認知負荷ゼロの開発手法。
実装はAI(Claude Code)に任せ、記憶はシステム(Serena MCP)に預ける。
自分はただ「どんなサービスを作りたいか」だけを考える。
結果、気づけば3日間でSaaSが完成していました。
副業フリーランス向け見込み売上管理ツール「Monerion」のローンチ記録を紹介します。
認知負荷ゼロの開発スタイル
開発者の脳はCPUであり、同時にRAM(作業記憶)でもあります。
しかし人間のワーキングメモリには限界があり、心理学の研究では「同時に保持できる情報は7±2個」程度とされています。
普通の個人開発では、
- 「依存関係をどこで解決したか」
- 「バグを直したときの再発防止策」
- 「過去の仕様変更の理由」
といった情報を頭の中で全部抱え込むため、ワーキングメモリが常に圧迫されます。
これが「認知負荷」であり、結果としてミスが増え、効率は低下します。
認知負荷理論と開発効率
教育心理学の「認知負荷理論」(Sweller, 1988)では、人の作業効率は「ワーキングメモリの空き容量」に依存するとされています。
- 認知負荷が高い → 新しいアイデアが浮かばず、バグ対応も場当たり的になる
- 認知負荷が低い → 集中力を保て、設計判断や創造的タスクに時間を回せる
つまり開発の生産性は、スキルや知識量だけでなく、**「いかに認知負荷を減らせるか」**に左右されるのです。
外部化による解放
そこで今回実践したのが――
- 実装はClaude Codeに
- 記憶はSerena MCPに
すなわち「脳のRAMを外部に逃がす」スタイルです。
自分は「どんなサービスを作りたいか」だけに集中し、細かい履歴やバグの解決策は記憶システムが保持する。
この外部化によって、ワーキングメモリの消費はほぼゼロに近づきました。
結果として、頭を空っぽにしたまま設計と方向性に集中でき、3日間でSaaSに到達できたのです。
Day 1(8月15日): ブランド刷新と基盤づくり
- 「Money Commit」から「Monerion」へブランド刷新
- LocalStorage → IndexedDBへ完全移行(7,000行超の基盤)
- デモデータを追加して初回UXを改善
- Cloudflare DNS + GitHub Pagesでデプロイ準備
- GDPR対応・税金自動計算まで一気に実装
👉 普通なら「これ全部覚えておかないと破綻する」レベルのタスクを、Serena MCPが整理してくれたおかげで脳のメモリを浪費せず進められました。
Day 2(8月16日): バグ修正と緊急復旧
- 深夜に「支出・給与タブ」表示不具合 → 即修正
- 定期評価システム+キャッシュ自動クリアでCI/CD完成
- 夜に
index.html
重大破損 → Local Historyで即復旧
👉 通常なら絶望する局面も、「過去の復旧手順を覚えておく必要がない」。
Serena MCPに残していた知識と仕組みで、冷静に戻せました。
Day 3(8月17日): モジュラー化とローンチ
- 巨大HTMLを6,478行 → 110行に分割
- Python + Jinja2で静的サイトジェネレーター構築
- ブログ記事11本を同時公開
- CAMPFIREサポーター認証を追加
- 正式公開 → 独自ドメイン
monerion.net
👉 3日目は整理と仕上げ。記憶に頼らず「やるべきことだけ」を拾っていけたから、迷わずローンチまで到達できました。
技術スタック
- フロント: Vanilla JS 7,000行(フレームワークレス)
- IndexedDB(オフライン完全対応)
- Chart.js(安全なグラフ実装)
- バックエンド: Python + Jinja2静的サイトジェネレーター
- インフラ: GitHub Pages + Cloudflare DNS/CDN
- PWA対応(Service Worker, Manifest)
成果と数値
- 開発期間: 3日間(実働24時間)
- コード量: JS 7,020行
- 記事数: 11本同時公開
学び
- 覚えないことで、開発は加速する
- 記憶を外部化すれば、人間は設計と判断に集中できる
- 「便利より安心」を選ぶ設計も価値がある
まとめ
今回の経験で実感したのは、
「覚えないこと」が最強の開発効率化だということ。
3日間でSaaSを公開できたのは、AI駆動+メモリ駆動という「認知負荷ゼロ」のスタイルのおかげでした。
👉 公開版はこちら → https://monerion.net