Chandra CIAOでchandra_repro使用時に「Multiple evt1 files found」エラーが出たときの対処メモ

はじめに

Chandra CIAOで chandra_repro で再処理していると、次のようなエラーに遭遇することがあります：

# chandra_repro ... ERROR Multiple evt1 files found in directory <path>.
Skipping it. If this is a multi-obi OBS_ID, try running the splitobs script first.

これはデータが壊れているわけではなく、

同一 OBS_ID の中に、観測モードや露光時間の異なる複数のデータ（evt1）が入っている

という 正常なケース です。

この記事では、

• このエラーが何を意味しているのか
• どうやって最短で対処すればいいか

を、splitobs と chandra_repro に絞ってまとめます。

このエラーが意味していること

chandra_repro は基本的に

「1 つのディレクトリに evt1 が 1 個だけある」

ことを前提に動きます。

ところが、一部の OBS_ID では以下のような理由で evt1 ファイルが複数 入っていることがあります。

• 通常露光と短露光が混在している

• サブアレイとフルフレームが混在している

• グレーディング設定が違う

• Multi-OBI 観測になっている

  • 参考: https://cxc.harvard.edu/ciao/why/multiobi.html

• alternating exposure（交互露出）で e1 / e2 / e3 などに分かれている

  • 参考: https://cxc.harvard.edu/ciao/dictionary/altexp.html

その結果、たとえば OBS_ID 1612 を download_chandra_obsid すると、primary ディレクトリ内にこんなファイルが並んでいるはずです：

acisf01612_001N00?_e1_evt1.fits
acisf01612_001N00?_e2_evt1.fits

chandra_repro から見ると、

「このディレクトリには evt1 が 2 個ある。どっちを処理すればいいのかわからないので止めます」

という状態になっている、というだけです。

対処の基本方針：splitobs で「1ディレクトリ = 1観測」に分ける

考え方はシンプルで、

evt1 が複数入っているなら、あらかじめディレクトリを分けてしまう

だけです。

そのための専用コマンドが splitobs です。

1. splitobs で分割する

まずは、生データが入っている OBS_ID のディレクトリで splitobs を実行します。
（ここでは例として OBS_ID 1612 を使います）

splitobs indir=1612 outroot=1612

• indir : 元のデータが入っているディレクトリ（primary, secondary などを含む）
• outroot: 出力ディレクトリ名のプレフィックス

参考: https://cxc.harvard.edu/ciao/ahelp/splitobs.html

実行後、例えば次のようなディレクトリができます：

1612_e1/
1612_e2/

ここで重要なのは、

それぞれのディレクトリには 1 個だけ の evt1 が入っている

ように分割されていることです。

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2. 分割したそれぞれに chandra_repro をかける

あとはいつも通り、分割後のディレクトリごとに chandra_repro を実行するだけです。

chandra_repro 1612_e1 outdir=""
chandra_repro 1612_e2 outdir=""

outdir を空文字にしておけば、各ディレクトリ内に repro/ が作られます。

参考: https://cxc.harvard.edu/ciao/ahelp/chandra_repro.html

これで、Multiple evt1 files found エラーは解消され、通常通り evt2 まで作成されます。

複数観測（Multi-OBI）の場合も基本は同じ

「alternating exposure（e1, e2）」に限らず、

• 長い観測を複数の OBI に分けて実行しているケース
• 観測条件を少しずつ変えながら繰り返しているケース

などでも、同様に「evt1 が複数」という状況になります。

基本的な対処はすべて同じで、

1つの OBS_ID 内に複数の evt1 があったら、とりあえず splitobs → chandra_repro（個別処理）

と覚えておけば十分です。

より詳しいケース分けや推奨ワークフローは、公式の解説がまとまっています：

• Multi-OBI 観測について
  https://cxc.harvard.edu/ciao/why/multiobi.html

まとめ

• Multiple evt1 files found は、データ破損ではなく 「1 OBS_ID に evt1 が複数ある」だけ

• その原因は、

  • モード違い
  • 露光時間違い
  • Multi-OBI
  • alternating exposure（e1/e2/e3）
    などが同じ OBS_ID にまとめられているため

• 対処は一貫してシンプル：

  1. splitobs indir=<OBS_ID> outroot=<OBS_ID> で分割
  2. 分割された各ディレクトリに対して chandra_repro を実行

• 「複数の観測が 1 OBS_ID に入っていたら、とりあえず splitobs」という感覚で OK