この記事の実施記録(2026年4月): EvernoteのAPIキー申請が事実上不可能な現在、ENEXエクスポート → yarle(OSS、v6.16.1)でMarkdown変換 → Claude Code の Grep で全文検索、という3ステップでアーカイブを復活させた。変換対象56件のノート、APIキーなし、実装なし。プロンプトを日本語で伝えるだけで動いた。
検索窓に「Type2」と打ったら、10年以上開いていなかったEvernoteのノートがヒットした。
「'67 Type2 11W BUS」。2005年に購入した1967年製のフォルクスワーゲン・バスのノートだ。車両スペック、ボディカラーのコード(L289 ブルーホワイト / L360 シーブルー)、内装の詳細、購入価格の268万円まで、全部テキストで読める。.resources/ フォルダには画像が58ファイル入っていた。30歳から40歳まで10年間乗り続けた愛車の写真が、21年ぶりに出てきた瞬間だった。
「ムネアツです」と思わず独り言が出た。
これは技術記事だが、入口はこのエピソードにしたい。「知識管理のためにEvernoteを使う」のではなく、「その時々の生活を記録していた」という使い方をしていた人に読んでほしい。
なぜ3年も放置していたのか
Evernoteへの新規ノート追加はいつの間にか止まっていた。意識してEvernoteを開くことは10年以上なかった。2023年まで若干のノートが残っているのはTwitterの投稿をIFTTT経由で自動保存していたからで、TwitterがXになったタイミングで連携が切れて完全に止まった。Evernoteは「昔使っていたやつ」になっていた。
放置の理由はもう一つある。Claude Codeを使い始めて「Evernoteと繋げたい」と思ったとき、APIキーの申請が通らなかった。
2026年現在、dev.evernote.com のAPIキー申請フォームはエラー状態になっており、新規のConsumer Key / Consumer Secretは事実上取得できない。サードパーティのMCPサーバー(brentmid/evernote-mcp-server)も試みたが、やはりAPIキーが前提になっていて詰まった。
「繋げたいのに繋げられない」という状況で、アーカイブは眠ったままになっていた。
解決策: APIなしで「全文検索だけ」を復活させる
リアルタイムの同期は諦める。その代わり、ENEXエクスポート → Markdown変換 → GrepでClaude Codeから検索できる状態にする。この方針に切り替えたら、あっさり動いた。
正直に言うと、yarleというツールを選んだのも、設定して動かしたのも全部Claude Codeだ。私がやったのは「EvernoteのアーカイブをClaude Codeから検索できるようにしたい」と日本語で伝えただけ。ツール選定・インストール・config設定・実行まで、プロンプトを書くだけで進んだ。
手順は4ステップだ。
ステップ1: ENEXエクスポート
EvernoteのデスクトップアプリでノートブックをENEX形式でエクスポートする。重要な注意点として、Webアプリからはエクスポートができない。デスクトップアプリ(Windows / Mac)が必須になる。
ステップ2: yarleでMarkdown変換
yarle(yarle-evernote-to-md)はENEXをMarkdownに一括変換するOSSツールだ。2026年3月にv6.16.1がリリースされており、150以上のリリース実績・1,000回超のコミット履歴を持つ積極的にメンテナンスされているプロジェクトなので、「聞いたことないツール」への不安は不要だと思う。
npx -p yarle-evernote-to-md@latest yarle --configFile ./config.json
configファイルの最小構成はこうなる(enexSources に .enex ファイルのパス、outputDir に出力先を指定する):
{
"enexSources": ["./クルマ.enex"],
"outputDir": "./knowledge/inbox-evernote/notes/クルマ"
}
ステップ3: 変換済みファイルを配置
knowledge/inbox-evernote/notes/ 配下にノートブック単位のフォルダを置く。これだけでClaude CodeのGrepがそのまま通る。
ステップ4: Claude CodeのGrepで検索
設定は不要。Claude Codeに「〇〇について調べて」と指示すれば、Grepがファイルを走査して関連ノートを返してくれる。
実際に試した結果(成功と失敗)
成功: テキストノートは完全に復元できる
「Type2」で検索すると、VWバスのノートがヒットした。前述の通り、スペックから価格まで全文テキストで読める。2010年3月9日に作成されたノートが、そのままMarkdownとして出てきた。
今回変換したノートブックは:
| ノートブック | Markdownファイル数(2026-04-22実測) |
|---|---|
| クルマ | 21件 |
| 自炊 | 23件 |
| +inbox | 12件 |
合計56件のMarkdownノートがGrepの対象になっている。
失敗: スキャンPDFは本文テキストがない
「GTDストレスフリーの仕事術」で検索したらヒットした。しかし中身を開くと、タイトルとタグのみ。本文はない。
自炊したPDFをスキャンしてEvernoteに保存していたケースは、当時のOCR処理が不完全だったためテキストデータが存在しない。yarleはあくまでEvernote内にあるテキストをMarkdown化するツールであって、画像からテキストを起こすOCR機能は持っていない。スキャン本系のノートは「ノートが存在する」という確認はできるが、全文検索の恩恵は受けられない。
この方法が向いている人・向いていない人
向いている人:
- Evernoteを放置中で、新規ノートを追加しない
- 過去ノートを「たまに参照する」ために検索できれば十分
- ノートブックが数十単位(数百ノートブックは手作業が大変)
向いていない人:
- Evernoteで今も活発にノートを追加している(毎回エクスポートが必要になる)
- リアルタイムの同期が必要
- スキャンPDFの本文検索が目的(OCR処理が別途必要)
Evernote v11のAI機能を調べたが、戻らなかった
一応 Evernote v11(2026年1月)で追加されたAI機能(AI Assistant・Semantic Search・AI Meeting Notes)を調べた。AI AssistantはOpenAIとの共同開発で実装されており、いずれも有料プラン限定の機能として提供されている。
調べた結論: 「過去ノートをたまに参照する」という用途には、このENEX+Grep方式で十分だ。Evernoteに課金を再開してAI機能を使うより、ENEX+Grepのアーカイブ運用の方がコストも手間もかからない。
「Evernoteに戻る理由はないですね」というのが正直な感想だ。
まとめ: タイムカプセルを掘り起こす、最小コスト構成
APIキーが取得できない2026年現在、Evernoteとリアルタイムで連携する方法は現実的ではない。
ただ、「アーカイブとして保存されているノートを検索できるようにする」という用途なら、ENEXエクスポート→yarle→Grepの組み合わせで十分動く。セットアップは1〜2時間、運用コストはほぼゼロだ。
VWバスの写真が出てきたとき、これはただの検索体験ではなかった。ライフログブームの2012〜2013年ごろ、iPhoneを常に持ち歩くようになって「なんでも記録しよう」と思っていた時期の記録がそのまま残っていた。GTDの本、自炊した技術書、こどもの国への外出記録。あの頃の自分の関心事が全部入っている。
Claude Codeがタイムカプセルを掘り起こした、という体験だった。
放置しているEvernoteのアーカイブがある人は、一度試してみてほしい。
なお、テキストノートは検索できるようになったが、スキャンPDFは本文テキストがなく取り残された。その続きを次の記事に書いた。
参考書籍・関連リンク
Claude Codeをもっと活用したい方に。
Claude CodeによるAI駆動開発入門(平川 知秀)
実践Claude Code入門――現場で活用するためのAIコーディングの思考法(西見 公宏・吉田 真吾・大嶋 勇樹)
Claude Codeでエージェントチームを作る実践について本にまとめました。
コードを書けない私が、AIに「チーム」を持たせるまで(Zenn Book)
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