クラウドインフラ市場の変遷と主要プレーヤー動向
AWS 経験者が次に Azure/GCP を学ぶための視点で
はじめに
AWS を中心にクラウドを使ってきた開発者/インフラエンジニアにとって、次の選択肢として Azure や GCP を学ぶ意義は年々高まっています。
かつては「AWS 一強」と言われた時代もありましたが、現在では 市場シェアや技術の特徴が多様化 し、各クラウドに応じた選び方が必要になっています。
この記事では、市場シェアの推移 とともに、AWS/Azure/GCP の特徴を整理し、「AWS 経験者が次に Azure/GCP を学ぶならどの観点を意識すべきか」について解説します。
1. 市場シェアの推移:AWS が先行、追う Azure/GCP
最新の市場シェアを見ると、以下の傾向があります(2025年 Q2 時点の代表的な調査より):
| プロバイダー | 市場シェア | 備考 |
|---|---|---|
| AWS | 約30% | 依然としてトップシェア |
| Microsoft Azure | 約20% | 企業向け導入で安定成長 |
| Google Cloud (GCP) | 約12〜13% | データ/AI用途で採用増加 |
- 過去数年では、AWS のシェアはやや低下、Azure と GCP が伸びてきている傾向があります。
- 依然として AWS が最大プレーヤーですが、クラウド市場は「一強」から「三強均衡」に移りつつあります。
2. 各クラウドの特徴と強み
AWS:先行者利益と総合力
- 強み:膨大なサービス群、豊富な知見、導入実績、グローバルな展開力
- 弱み:技術的に特化した差別化要素は薄れつつあり、強みが「万能さ」に寄りやすい
Azure:Microsoft 製品との統合力
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強み:
- Entra ID(旧 Azure AD)を中心とした認証/ID 統合
- Microsoft 365、Dynamics 365、Teams などとの親和性
- 「既に MS 製品を利用している企業」にとって導入コストが低い
- 弱み:AWS に比べると学習リソースやコミュニティ情報量はやや少ない
GCP:尖った技術とデータ基盤の強さ
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強み:
- Spanner(グローバル分散 RDB):他社にない独自性
- GKE(Kubernetes 運用):世界的評価が高い
- BigQuery、Vertex AI など、データ分析・AI 分野の強力なサービス群
- 弱み:リージョン数や企業向けサポート体制では AWS/Azure に劣る部分もある
3. AWS 経験者が次に学ぶなら?
- MS 製品を多用している企業環境 → Azure を選ぶとシームレスに展開可能
- データ分析や AI ワークロードを重視 → GCP を試す価値が高い
- 同じアーキテクチャを複数クラウドで再現 → サービス差分を学びやすい
学習ステップの例:
- 小規模な検証環境を Azure/GCP 上で構築
- AWS で慣れている構成(Web + DB + キャッシュ)を移植
- 差別化サービス(Spanner, GKE, Cosmos DB など)を試す
4. マルチクラウドの台頭
近年は「どのクラウドを選ぶか」だけでなく、複数クラウドを併用するマルチクラウド戦略 が現場で増えています。
理由は以下の通りです:
- リスク分散(障害・法規制・コストリスクの回避)
- 各クラウドの強みを組み合わせる(例:Azure で認証基盤、GCP でデータ分析)
- ベンダーロックインを避ける
その一方で、運用の複雑さ や スキルセットの多様化 が課題になります。
つまり「マルチクラウドを採用すべきか」は 要件に応じた戦略的判断 が必要です。
まとめ
- AWS は依然として市場トップだが、「一強」から「三強均衡」へ移行しつつある
- Azure は Microsoft 製品との統合性、GCP はデータ基盤・コンテナ領域で強みを持つ
- AWS 経験者が次に学ぶなら、用途・要件に応じて Azure か GCP を優先的に触れるのが現実的
- さらに今後は、要件ごとに複数クラウドを組み合わせるマルチクラウド戦略 の理解も不可欠になる
クラウドインフラはもはや「どれか一つを選べばいい」時代ではありません。
自分のスキルセットを拡張しつつ、複数クラウドを適材適所で使い分ける視点が、これからのエンジニアに求められるスキルだといえるでしょう。