1. アジャイルは「状態」であり、開発手法ではない
アジャイルとは、以下のアジャイル・マニフェストの価値観に基づいたマインドセットや状態のことを指します。
| より価値を置くもの | 価値を認めながらもより価値を置かないもの |
|---|---|
| 個人と対話 | プロセスやツール |
| 動くソフトウェア | 包括的なドキュメント |
| カスタマーとの協調 | 契約交渉 |
| 変化への対応 | 計画に従うこと |
特に、動くソフトウェアこそが進捗を測る上で最も重要な尺度であると強調されており、ドキュメントが不要ということではなく、ドキュメントよりも動くソフトウェアに価値を置くという考え方です。スクラムなどの具体的な手法は、この「アジャイルな状態」へ移行するための補助輪やツールにすぎません。
2. 「プロダクト命」の考え方
アジャイルの目的は、ご指摘の「プロダクト命」の概念が示す通り、プロダクトの価値をひたすら高めていくことにあります。
-
プロジェクトではなくプロダクト開発:
アジャイル開発は、期間を決めて完了を目指す「プロジェクト」ではなく、終わりがない「プロダクト開発」であるべきです。ウォーターフォールが期間完了を目的とするのに対し、アジャイルはプロダクトの価値を高めていくことが目的となります。
-
MVPの重要性:
リーンスタートアップの考えに基づき、**MVP(必要最小限の価値がある構成)**でサービスインした後も、開発チームが運用を継続し、イテレーション(反復)を繰り返していくことが理想です。
3. アジャイルは「すぐには早くならない」
アジャイルは、開始直後からすぐに生産性(アジリティ)が上がるようにはできていません。チームが成長する過程(タックマンモデル)において、意見の対立などが生じる「混乱期」を必ず経験するためです。
「アジャイルは遅い」と感じる場合、それはまだ混乱期の段階にある可能性が高く、この混乱期から逃げずに立ち向かった先に、強いチームと完成度の高いプロダクトが待っていると締めくくられています。