はじめに
GitHub CopilotをVS Codeに入れると、コードの続きが表示されたり、チャットで質問できたり、Agentにファイルを修正してもらえたりします。
「どれを使えばいいのか」と迷ったら、 自分で書き進めたいのか、理解したいのか、作業を任せたいのか で考えると選びやすくなります。
この記事は、Copilotへログインできた人向けの使い分け編です。「商品の合計金額を求める」という同じ題材で、依頼の仕方と確認するポイントを比べます。
2026年9月16日のGitHub・VS Code公式資料をもとにしています。対象はデスクトップ版VS CodeのCopilotです。GitHub上で動くクラウドエージェントなどは扱いません。画面名や利用できる機能は、バージョン・契約・組織の設定で変わります。
この記事の使い方は、無料枠から試せる
有料契約は必須ではありません。 個人向けのCopilot Freeは、GitHubアカウントがあればクレジットカード登録なしで始められます。
- コード補完は月2,000回まで使えます。
- チャットでの質問と、VS Code内のAgentによる編集・テストの依頼も、制限付きの利用枠で試せます。
- Freeのモデル選択は自動です。この記事のために有料モデルを指定する必要はありません。
- GitHub側で作業するクラウドエージェントはFreeの対象外ですが、この記事では使いません。
出典: GitHub公式料金ページ、GitHub Docs — Copilotのプラン
チャットの上限は、公式FAQの「50チャットリクエスト」と、現行プラン説明の「制限付きAIクレジット」で記載が分かれています。固定回数を前提にせず、VS CodeのCopilot使用量画面で残量を確認してください。小さな依頼から試し、足りなくなった場合に有料プランを検討する進め方で構いません。
会社からCopilotを提供されている場合は、そのプランと利用方針に従います。Agentがテストを実行するには、無料・有料にかかわらず、実行環境と操作権限も必要です。
まず押さえる違い
最初に一つだけ整理します。 チャットは「会話する画面」で、Agentは「ツールを使って作業を進める役割」です。 Agentへの依頼もチャット画面から行えます。「チャットだからファイルを書き換えない」とは限りません。
以下はVS Codeの公式概要をもとに、筆者が利用場面で整理した表です。全機能を三つに分類した公式一覧ではありません。この記事では、説明や相談を中心に使う場面を「チャットで質問する」と呼びます。
| やりたいこと | 使い方 | Copilotに頼むこと | 自分が確認すること |
|---|---|---|---|
| 書く内容は決まっている。入力を手伝ってほしい | コード補完 | 入力中のコードの続きを提案する | 提案が意図に合うか |
| コードやエラーの意味を理解したい | チャットで質問 | 説明、原因の候補、実装方針を返す | 説明が実際のコードや仕様に合うか |
| 方針が決まった。修正とテストまで頼みたい | Agentに作業を依頼 | 関連ファイルを調べ、編集やコマンド実行を組み合わせる | 変更範囲、実行した操作、テスト結果 |
Agentは「必ず正解を出す上位版」ではありません。任せる操作が増えるぶん、確認する範囲も広がります。
1. コード補完:書いている途中を手伝ってもらう
コード補完は、エディターで入力しているときに、続きの候補を薄い文字などで表示する機能です。必要な処理が分かっているときの入力補助に向いています。
試し方
機密情報のない学習用フォルダで、sample.py を作ります。次のコメントと関数の先頭を入力し、改行してインデントした位置で候補を待ちます。これは書きかけの例なので、この状態では実行しません。
# 商品の価格の一覧を受け取り、合計金額を返す
def total_price(prices):
候補が表示されたら、内容を読みます。既定のキー設定では、Tab で候補を採用できます。意図に合わなければ、その候補を採用せず自分で書き続けて構いません。
出典: VS Code — Inline suggestions from GitHub Copilot
たとえば、次のような実装なら価格を合計できます。これは筆者が用意した完成例です。Copilotが必ずこのコードを提案するという意味ではありません。
def total_price(prices):
return sum(prices)
sum は、渡された数値を合計するPythonの組み込み関数です。total_price([100, 200, 300]) は 600、total_price([]) は 0 になります。この計算はPythonで実行確認しています。
補完で決めてもらわないこと
この関数は、負の価格もそのまま足します。「マイナスの価格を許すのか」「税や送料を含めるのか」は、コードが短くても別の判断です。
補完は入力の助けになりますが、業務のルールまで決めてくれるわけではありません。
なお、現在位置の続きを出す補完のほかに、次に編集しそうな位置と内容を提案する Next edit suggestions もあります。最初は、入力中に出る候補の確認から始めれば十分です。
2. チャット:変更する前に理解する
コードを読んでも意味が分からないときや、修正する方針を相談したいときは、チャットで質問します。
試し方
VS Code上部の Chat メニューから Open Chat を開きます。入力欄の # から候補を選んで sample.py を参照に追加するか、短い学習用コードを質問へ貼り付けます。
AIに判断材料として渡すコード、ファイル、エラーメッセージなどを「コンテキスト」と呼びます。「これを説明して」だけでなく、 何を見て答えてほしいか も渡すのがポイントです。
出典: VS Code — Chat画面の開き方、チャットとコンテキスト
次は、先ほどの sample.py を添付して送る質問の例です。
添付したsample.pyのtotal_priceを、初心者向けに説明してください。
知りたいこと:
- pricesとsumの役割
- [100, 200, 300]を渡したときの戻り値
- 空のリストと、負の価格を含むリストではどうなるか
今回は理解することが目的です。
回答はチャット内だけで行い、ファイル変更やコマンド実行はしないでください。
回答では、通常の入力だけでなく、空のリストや負の数にも触れているかを確認します。たとえば、今の実装に [100, -1] を渡すと 99 です。自動でエラーにはなりません。
「負の価格を受け付けたくない」と分かったら、ここで初めて修正方針が決まります。意味を理解したい段階で、いきなりコードを書き換える必要はありません。
チャットに「変更しないで」と書いても、ツールの権限設定は変わりません。選択中の役割・権限・自動承認設定を確認してください。顧客コードや秘密情報を添付してよいかも、会社のルールを優先します。
3. Agent:範囲を決めて、修正と確認を任せる
Agentは、目標に沿ってファイルを調べ、編集し、テストなどのコマンドを実行できます。結果を見て再度修正するような、複数の手順を含む作業に向いています。
ただし、実行できることは許可されたツールや権限に依存します。Pythonがない環境で、必ずPythonのテストまで動かせるわけではありません。
試し方
- 学習用フォルダに先ほどの
sample.pyだけを用意します。作業前の内容を保存し、戻せる状態にします。 - Chat画面の入力欄にある選択項目で、対象を
Copilot、役割をAgentにします。 - 権限は
Manual permissionsから始め、自動承認される操作も確認します。 - 次のように、対象・変更内容・テスト・禁止する操作を指定します。
学習用のsample.pyにあるtotal_priceを修正してください。
入力は整数の価格だけを含むリストとし、他の型の対応は不要です。
変更内容:
- 負の価格が一つでもあればValueErrorにする
- 空のリストは0を返す
- それ以外は、これまでどおり合計を返す
作業範囲:
- 変更するのはsample.py
- テストはtest_sample.pyとして追加する
- テストにはPython標準のunittestを使う
- 外部パッケージの導入や、他のファイルの変更はしない
- ネットワークへのアクセス、コミット、pushはしない
確認するケース:
- [100, 200, 300] → 600
- [] → 0
- [100, -1] → ValueError
最初に作業予定を説明してください。
Pythonが使える場合はテストを実行し、実行コマンドと結果を示してください。
Pythonがない場合はインストールせず、実行できなかったことを報告してください。
ここでの整数価格や例外のルールは、この教材用に筆者が決めたものです。実務では、割引・返金・通貨・端数処理などの要件を確認してから決めます。
「完了しました」の後に確認すること
| 確認するもの | この例で見るポイント |
|---|---|
| 変更差分 |
sample.py と test_sample.py 以外を変えていないか |
| 処理の内容 | 負の数が途中にあっても検出できるか。正常な合計処理は残っているか |
| テスト結果 | 指定したケースを実際に実行したか。コードを作っただけで終わっていないか |
| 実行できなかったこと | Python未導入などの理由が、成功した確認と区別されているか |
変更差分とは、編集前と編集後の違いです。Chatの回答に表示される変更ファイルを選ぶと、差分を確認できます。
テストが通っても、すべての入力や業務要件を確認したことにはなりません。AIが書いた説明、変更差分、テスト結果を照らし合わせて判断します。
Manual permissions でも、既存の設定で自動承認される操作はあります。Allow all は確認なしでツールを動かす設定です。プロンプト内の禁止事項を、OSやツールの権限制限の代わりにしないでください。
出典: VS Code — Manage approvals and permissions
同じ作業でも、途中で使い方を変えてよい
たとえば、次のように使えます。これは筆者が提案する練習の順番で、毎回守る必要はありません。
- 自分で合計関数を書き始め、コード補完で入力を手伝ってもらう。
- チャットで、空のリストや負の価格の扱いを確認する。
- 仕様を決めたら、Agentに小さな修正とテストを依頼する。
- 自分で差分と結果を確認して採用する。
「1行だから補完」「複数ファイルだから必ずAgent」と、行数やファイル数だけで決める必要はありません。 何を任せ、何を自分で確かめるか が判断の軸です。
クレジットの消費も同じではない
2026年9月16日時点の公式説明では、コード補完と次の編集候補はAIクレジット課金の対象外です。ただし、Copilot Freeのコード補完には月2,000回の制限があります。
一方、チャットやAgentのAI処理は、モデルと処理したトークン量に応じてクレジットを使います。トークンは、AIが文章やコードを処理する際の細かな単位です。
Agentへの依頼は、1回送っても内部で何度かAI処理が走る場合があります。ただし「Agentなら必ず高い」「1回なら必ず何クレジット」とは決められません。まず範囲の小さい依頼を出し、使用量の表示を確認してください。
出典: GitHub Docs — Copilotのプラン、個人向けの利用量課金、組織向けの利用量課金
この例を試すときの前提と確認範囲
コードの説明を聞くだけなら、Pythonのインストールは不要です。Pythonでの実行やAgentによるテストには、Python 3が使える環境が必要です。外部パッケージは使いません。
掲載したコードと質問文は筆者が作成した学習例です。完成例の合計計算はPython 3.9.6で検証しました。Copilotの画面操作、実際の候補表示、Agentによる編集・テストは実機確認していません。AIの出力は毎回同じになるとは限りません。
試し終わったら、作成した sample.py と、Agentが追加した場合の test_sample.py が学習用のものだと確認して片付けます。作成前からあったファイルを削除しないでください。
関連記事
AIの出力を検証へつなげる考え方は、次の記事でも整理しています。
おわりに
まずは同じ短い関数で、「補完を読む」「説明を聞く」「小さな修正を頼む」を試してみてください。全部を一度に任せるより、自分が結果を確認できる範囲から広げると、使い分けを身につけやすくなります。
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