今後はますますAIによるコード生成が日常となり、実装が劇的に効率化されていくでしょう。
その中で「手軽さ」や「記述量の少なさ」を最大の武器としてきたプログラミング言語やライブラリは、これからもその優位性を保ち続けられるのでしょうか?AIを実装に活用する際、重要な視点から技術スタックの未来を考察します。
1. 予測可能性が鍵となる:静的型付け言語の優位性
AIにとって、質の高いコードを生成する鍵となるのは「予測可能性」です。型情報や厳密な規約は、AIがコードの意図を正確に推論するための重要な手がかりとなります。
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ruby: 簡潔な記述が可能で、メタプログラミングなどによる高い柔軟性が魅力ですが、動的型付け言語であるため、AIは実行時まで型を推論しなければなりません。この不確実性が、生成コードの品質を左右する可能性があります。 -
kotlin: 静的型付け言語であり、型情報がコードに明示されています。AIは型情報に基づいて、より正確で安全なコードを生成できるため、バグの発生を抑え、開発の信頼性を高めることができます。
この観点から、AI時代では静的型付け言語の優位性がさらに高まると考えられます。TypeScriptも同様に、その厳格な型システムによってAIから高い評価を得るでしょう。実行時にJavaScriptに変換されることでランタイムエラーが発生する可能性はありますが、コンパイル時に多くのバグを防ぐというメリットは、AIによる開発においても非常に重要です。
また、PHPの関数における型指定(タイプヒンティング)のように、動的型付け言語でも部分的に型情報を加える機能は、AIにとって重要な手掛かりとなります。このような部分的な型情報でも、AIの予測可能性を大きく向上させ、より質の高いコードを生成するのに役立ちます。
2. react-routerとnext.js:規約の優位性は覆らない
予測可能性の重要性を踏まえると、Next.jsが提供する「規約」という強みがより明確になります。
Next.jsが提供するファイルシステムベースのルーティングは、react-routerのように明示的なルーティング設定を必要とせず、「手軽さ」という点で大きな優位性がありました。しかし、AIがreact-routerの複雑な設定コードを一瞬で生成できるようになれば、この手軽さの優位性は相対的に薄れていきます。
しかし、AI時代におけるNext.jsの本当の強みは、手軽さだけでなく、その厳密な規約(App Router、Server Componentsなど)にあります。AIは、これらの規約に基づいて、複数のコンポーネントやAPIルートを連携させた、より大規模なアプリケーションを予測し、構造的に生成することが得意です。規約という共通言語があることで、人間とAIは大規模なプロジェクトでも一貫性を保ちながら協調して開発を進めることができます。
一方、react-routerを使った場合は、プロジェクトの全体構成をAIが文脈から推論する必要があり、Next.jsのような規約ベースのフレームワークより複雑な構造の予測は不得手となる可能性があります。このため、AI時代でも、規約に沿った開発を促すNext.jsの優位性は依然として大きいと考えられます。これはAIが実装してくれるから問題が解消されたという目先の手軽さだけでは測れない指標と言えます。
結論:大富豪における革命
AIの普及は、プログラミングの世界に「大富豪における革命」をもたらします。これまで高価だった「手軽さ」や「簡潔なコード」という価値は、AIが簡単に提供できるようになるため、相対的にその価値を失います。
これからの技術スタックの選定では、AIとの協調を促す「予測可能性」や「規約」といった新たな価値が、その優位性を左右する鍵となるでしょう。単に面倒な作業をなくすだけでなく、より効率的で信頼性の高い開発を可能にする技術が、AI時代の主役となるのです。