何が起きたか
家庭用のSynology NAS(DS418・4ベイRAID5)で、ある日ボリューム劣化の警告が出た。
気づけばファイルシステム(btrfs)が read-only で再マウントされ、書き込み不能に。
RAIDアレイは劣化状態(1台が外れ、別の1台も読み取りエラーを出し始めていた)。
なぜ再構築できなかったか — SMR の罠
交換用に用意したHDDが SMR(瓦記録方式) だった。
SMRは書き込みが重く、RAIDの再構築(大量ランダム書き込み)と相性が悪い。
再構築が進まない/失敗する一因になった。
教訓: NAS/RAIDの再構築用HDDは必ず CMR を選ぶ。 購入前にメーカーの記録方式を確認する。
なぜ「修理」ではなく「クラウド移行」にしたか
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元々クラウドが分散していた:Dropbox と Google Drive に別々に課金していて、
これを1サービスに統合してコストと管理を一元化したかった。NAS故障はその移行を
前倒しさせたきっかけ。 -
HDDが高騰・品薄:NASを再構築するには CMR の4TBを複数枚買い直す必要がある。
記事執筆時点(2026年10月)で 4TB CMR のNAS向けHDD(WD Red Plus WD40EFPX)は
国内正規品で約3.8〜4.4万円、在庫切れの店も目立つ。4ベイを埋め直すと16万円前後
+箱も劣化、という投資になる。物理で持ち直すコストが跳ね上がり、クラウドの
相対的な割安感が増した。 -
ハード故障リスクから降りる:自前のRAIDは再構築の博打や次の故障が付きまとう。
冗長性をサービス側に預ける。 - 容量:手元PCに入り切らないデータも、クラウドなら容量の壁がない。
どのクラウドを選ぶか — 用途で使い分けた
やりたいことは実は2つあって、それぞれ最適なクラウドが違った。無理に1つに
寄せず、役割で分けた。
(A) 壊れかけNASからの緊急退避 → オブジェクトストレージ(S3)
- とにかく安く・容量を気にせず・ファイル単位で確実に吸い出したい用途。
- 候補は S3 / Cloudflare R2 / Backblaze B2 / Wasabi など。容量単価が安く、
aws s3 syncのようなCLIでエラー耐性のある退避ができる。 - 単価だけなら B2 が最安級だが、今回は既に AWS 環境があったので S3を使った。
- 普段使いで「マウントして読み書き」「複数PCの自動バックアップ」をするには
rclone 等の自前の仕組みが要る。アーカイブ/一時退避向き。
(B) 日常のバックアップを一本化 → iDrive
要件は「NASのように一箇所に集約」「複数PC+ネットワークドライブ(NAS)も
まとめて」「コスパよく」「散らばった Dropbox・Google Drive を畳んで統合」。
主要サービスを比較した(料金は2026年時点の目安。改定が多いので要確認)。
| サービス | 料金目安 | 向いている用途 |
|---|---|---|
| iDrive(採用) | 5TB 約$70〜80/年(初年度) | 日常の常時バックアップ基盤 |
| Backblaze B2 | $6.95/TB・月(実使用量課金) | 一時退避/アーカイブ(最安級) |
| AWS S3 | $0.023/GB・月(東京は約$0.025) | 一時退避(今回使用) |
| Cloudflare R2 | ≒$15/TB・月(egress無料) | 一時退避/配信 |
| Wasabi | $7.99/TB・月 | アーカイブ(早期削除の縛りあり) |
| Dropbox/GoogleDrive | 2TBで月$10前後 | 既存・割高で分散しがち |
補足:
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iDrive は PC本体に加え、マウントしたネットワークドライブ(NAS)も
バックアップ対象にできる。複数PC+NASを1契約に集約できるのが効いた
(ただし更新時に3〜5割値上がり、容量は固定ティア)。 -
オブジェクトストレージ(B2/S3/R2/Wasabi) は実使用量課金で退避/アーカイブ向き。
日常の自動バックアップ基盤として使うには自前の作り込みが要る(上記A)。 -
Dropbox/Google Drive は使いやすいが容量単価が高く、複数契約に分散しがち
(今回畳んだ対象)。
決め手はコスト構造だった。 ポイントは「枠(容量上限)を定額で持つ iDrive」と
「実際に置いた分だけ払うオブジェクトストレージ」の課金の違い。
- iDrive 5TBプランは 年$70〜80(初年度・更新で3〜5割増) の定額。5TBまで
何を入れても料金は同じ。 - B2 等は実使用量課金。実データが2TBなら 年$170前後($6.95/TB/月×2TB×12)、
5TBをフルに使えば 年$420前後。
つまり「大きめの枠を常時確保して出し入れする」バックアップ基盤では、使うほど
iDriveの定額が効く(フル利用に近いほど差が開く)。逆に実データが小さいうちは
オブジェクトストレージも十分安い。今回は複数PC+NASをまとめて継続バックアップ
したかったので、枠を定額で持てる iDrive を基盤に選んだ。「散らばった契約を畳む」
要件にも合う。
逆にオブジェクトストレージは、必要なときだけ大量に置いて短期間で引き上げる
緊急退避/アーカイブでは最安クラス。用途で割り切って使い分けた。
結論として、緊急退避はオブジェクトストレージ(S3)、継続的なバックアップ基盤は
iDrive、と役割を分けて移行した。
壊れかけディスクからの退避は「ファイル単位・再開可能」で
NASの中身は約1TB。手元PCの空きでは、まるごとは入り切らない。
そこで上記(A)のとおり、退避先を容量を気にせず使える durable なオブジェクトストレージにした。
一枚の巨大な tar で固める方法は、途中で読み取り不能セクタに当たると
全体がやり直しになりがちで、復元も不便。
代わりに ファイル単位で同期する方式を使った(AWS CLIの例):
# NASをSMBでread-onlyマウントしておき、ファイル単位でクラウドへ
aws s3 sync /Volumes/nas-share s3://my-rescue-bucket/share/ \
--exclude "*/#recycle/*" --exclude "*/.DS_Store" \
--only-show-errors
この方式の利点:
- 途中再開できる(再実行で未転送分だけ続く)
- 読めないファイルはそこだけスキップして継続(壊れかけディスクで重要)
- ディレクトリ構造を保ったまま退避でき、復元が楽
- クラウド側は容量を気にせず使えるので「PCに入らない」問題が消える
バケットは当然 非公開(パブリックアクセスは全ブロック)にする。
バックアップ体制の再構築(iDrive)
退避と並行して、継続的なバックアップを iDrive に一本化した
(分散していた Dropbox / Google Drive もここへ寄せる)。iDrive は PC本体の
バックアップに加え、マウントしたネットワークドライブ(NAS)も対象にできるので、
「散らばっていた保存先を1つに集約する」という当初の目的に合う。
Time Machineの注意点
Mac標準の Time Machine まわりでハマりやすい点:
-
保存先に起動ディスク(内蔵)は使えない。 外付けドライブか、TM対応の
ネットワーク共有が必要。 - クラウドバックアップサービス(iDrive等)は Time Machineの保存先にはならない
が、「スケジュールで自動的にクラウドへ」という点では機能的に代替になる。 - 旧NASが死ぬと、そこに置いていたTime Machineも道連れになる。
バックアップ先を複数系統に分散しておくと事故に強い。
まとめ(教訓)
- RAIDはバックアップではない。 別系統のバックアップを必ず持つ。
- 再構築用HDDはCMRを選ぶ(SMRを避ける)。 購入前に記録方式を確認。
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HDDは高騰・品薄。 「物理で持ち直す」コストは以前より重い。
クラウド移行の損益分岐が動いている。 -
用途でクラウドを使い分ける。 一時退避/アーカイブは安いオブジェクト
ストレージ(S3等)、日常の自動バックアップ基盤は iDrive のような
バックアップサービス。無理に1つに寄せない。 -
壊れかけディスクからの退避は、ファイル単位・再開可能・エラースキップできる
方法で。巨大な一枚アーカイブは避ける。 - 容量が足りなければクラウドを退避先にできる。 非公開設定を忘れずに。
- 兆候(劣化警告)が出たら、復旧を試す前にまず吸い出す。