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爆速で動作する日本語特化の文字起こしAI『kotoba-whisper-v2.0』を試してみた
はじめに
ビジネスシーンや日常生活で、音声データを文字起こしするニーズはますます高まっています。議事録の作成やインタビューの文字起こしなど、手作業では時間がかかる作業を効率化するために、音声認識技術が注目されています。
今回は、ローカル環境で高速かつ高精度な日本語文字起こしを可能にする『kotoba-whisper-v2.0』を紹介します。OpenAIの「Whisper」と比較しながら、その特徴と利点を詳しく探っていきます。
kotoba-whisper-v2.0とは
『kotoba-whisper-v2.0』は、スタートアップ企業のKotoba Technologiesが開発した、日本語特化の音声認識モデルです。OpenAIが提供する「Whisper」の大型モデル「whisper-large-v3」を蒸留技術で最適化し、同等の精度で約6.3倍の高速化を実現しています。
特徴と利点
- 高速処理: 大容量モデルながら、推論速度が大幅に向上。特に長時間の音声データ処理でその真価を発揮します。
- 高精度: 日本語に特化してトレーニングされており、誤認識が少ない。特に専門用語や日常会話のニュアンスを正確に捉えます。
- ローカル環境で動作: データをクラウドにアップロードせずに処理可能で、セキュリティ面でも安心。機密情報を扱う企業や組織に最適です。
- 無料で利用可能: Hugging Faceで公開されており、誰でも試すことができます。
技術的なバックグラウンド
kotoba-whisper-v2.0は、OpenAIのWhisper large-v3をベースに、蒸留技術を用いて開発されました。具体的には、教師モデルとしてのlarge-v3からエンコーダの全層と、デコーダの2層(最初と最後の層)を抽出して、これを「生徒」モデルとして訓練しています。これにより、オリジナルのlarge-v3に匹敵する精度を維持しつつも、推論速度が6.3倍向上しています。
このv2.0モデルは、全てのデータを活用したトレーニングとWERフィルターにより、より精度が高くなっています。また、日本語話者特化のリソースであるReazonSpeechを用いて訓練され、約720万の音声クリップから構成されているため、日本語の音声認識に最適です。
環境構築
まずは、環境を整えましょう。今回は以下のリソースで検証しました!
- GPU: NVIDIA GeForce RTX Series
- メモリ: 16GB以上
- OS: Windows 10/11、macOS、またはLinux
- Python: 3.8以上
必要なライブラリのインストール
以下のコマンドを実行して、必要なライブラリをインストールします。
pip install --upgrade pip
pip install --upgrade transformers accelerate
pip install git+https://github.com/openai/whisper.git
pip install soundfile numpy
kotoba-whisper-v2.0のセットアップ
モデルのダウンロードとロード
Hugging Faceからモデルをダウンロードし、セットアップします。
import torch
from transformers import WhisperProcessor, WhisperForConditionalGeneration
# 設定
model_id = "kotoba-tech/kotoba-whisper-v2.0"
device = "cuda" if torch.cuda.is_available() else "cpu"
# プロセッサとモデルのロード
processor = WhisperProcessor.from_pretrained(model_id)
model = WhisperForConditionalGeneration.from_pretrained(model_id).to(device)
高速化オプションの設定
さらに、高速化のためにFlash Attention 2を使用します。まず、Flash Attentionをインストールします。
pip install flash-attn --no-build-isolation
モデルロード時に以下の設定を追加します。
model.config.attn_implementation = "flash_attention_2"
音声データの準備
テスト用の音声ファイルを用意します。今回は以下の文章を自分で録音しました。
「窓の杜」は、編集部が厳選したオンラインソフトなどを紹介するサイトです。ニュースや記事を掲載する「窓の杜ウェブサイト」と、オンラインソフトをダウンロード可能なように収録した「窓の杜ソフトライブラリ」の二つのサービスからなります。
実行手順
音声ファイルの読み込み
import soundfile as sf
# 音声ファイルの読み込み
audio_input, sample_rate = sf.read("test_audio.wav")
推論の実行
# 音声データの前処理
input_features = processor(audio_input, sampling_rate=sample_rate, return_tensors="pt").input_features.to(device)
# 推論の実行
generated_ids = model.generate(input_features)
transcription = processor.batch_decode(generated_ids, skip_special_tokens=True)[0]
print(transcription)
結果の表示
窓の杜は編集部が厳選したオンラインソフトなどを紹介するサイトです。ニュースや記事を掲載する窓の杜ウェブサイトと、オンラインソフトをダウンロード可能なように収録した窓の杜ソフトライブラリの二つのサービスからなります。
OpenAI Whisperとの比較
同じ音声データを使用して、OpenAIの「whisper-large-v3」と比較してみます。
import whisper
# モデルのロード
model_whisper = whisper.load_model("large-v2").to(device)
# 推論の実行
result = model_whisper.transcribe("test_audio.wav", language="ja")
print(result["text"])
結果の表示
窓の杜は、編集部が厳選したオンラインソフトなどを紹介するサイトです。ニュースや記事を掲載する「窓の杜ウェブサイト」と、オンラインソフトをダウンロード可能なように収録した「窓の杜ソフトライブラリ」の二つのサービスからなります。
処理速度と精度の比較
処理速度
- kotoba-whisper-v2.0: 約10秒
- whisper-large-v2: 約60秒
『kotoba-whisper-v2.0』の方が約6倍高速であることが確認できました。
精度
精度においても、ほぼ同等か一部で『kotoba-whisper-v2.0』の方が優れている結果が得られました。
性能評価の図表
以下は、公式の性能評価データです。
CER(文字エラー率)
モデル | CommonVoice 8 | JSUT Basic 5000 | ReazonSpeech |
---|---|---|---|
kotoba-tech/kotoba-whisper-v2.0 | 9.2 | 8.4 | 11.6 |
openai/whisper-large-v3 | 8.5 | 7.1 | 14.9 |
openai/whisper-medium | 11.5 | 10 | 33.2 |
openai/whisper-small | 15.1 | 14.2 | 41.5 |
WER(単語エラー率)
モデル | CommonVoice 8 | JSUT Basic 5000 | ReazonSpeech |
---|---|---|---|
kotoba-tech/kotoba-whisper-v2.0 | 58.8 | 63.7 | 55.6 |
openai/whisper-large-v3 | 55.1 | 59.2 | 60.2 |
openai/whisper-medium | 63.4 | 69.5 | 76.0 |
openai/whisper-small | 74.2 | 81.9 | 83.0 |
レイテンシ(遅延)
モデル | パラメータ数(M) | 相対レイテンシ |
---|---|---|
kotoba-tech/kotoba-whisper-v2.0 | 756 | 6.3 |
openai/whisper-large-v3 | 1550 | 1.0 |
大量データでの検証
より長い音声データで性能を検証してみます。今回は約20分の講演音声を使用しました。
処理時間
- kotoba-whisper-v2.0: 約3分
- whisper-large-v3: 約18分
精度の比較
長文でも『kotoba-whisper-v2.0』は高い精度を維持しています。一部誤認識はあるものの、全体の文脈を理解するには十分な結果です。
視覚的な補助とデモンストレーション
エージェントを使った擬似的な実行結果
複数の音声ファイルを一括で処理するスクリプトを作成しました。
import numpy as np
import torch
from transformers import pipeline
# 設定
model_id = "kotoba-tech/kotoba-whisper-v2.0"
device = "cuda" if torch.cuda.is_available() else "cpu"
model_kwargs = {"attn_implementation": "flash_attention_2"} if torch.cuda.is_available() else {}
generate_kwargs = {"language": "ja", "task": "transcribe"}
# パイプラインの作成
pipe = pipeline(
"automatic-speech-recognition",
model=model_id,
device=device,
model_kwargs=model_kwargs,
batch_size=16
)
def transcribe_files(file_list):
transcriptions = {}
for file_path in file_list:
result = pipe(file_path, chunk_length_s=15, generate_kwargs=generate_kwargs)
transcriptions[file_path] = result['text']
return transcriptions
# 擬似的な音声ファイルのリスト
audio_files = ["meeting_audio.wav", "interview_audio.wav", "lecture_audio.wav"]
# 実行
results = transcribe_files(audio_files)
# 結果の表示
for file, text in results.items():
print(f"ファイル名: {file}")
print(f"文字起こし結果:\n{text}\n")
擬似的な出力結果
ファイル名: meeting_audio.wav
文字起こし結果:
本日の会議では、新製品の開発スケジュールについて話し合いました。
ファイル名: interview_audio.wav
文字起こし結果:
お時間をいただきありがとうございます。まずは自己紹介をお願いいたします。
ファイル名: lecture_audio.wav
文字起こし結果:
今日は深層学習の基礎について講義します。まずニューラルネットワークの構造から説明します。
まとめ
『kotoba-whisper-v2.0』は、日本語の音声認識において高速かつ高精度な性能を発揮します。ローカル環境で動作するため、機密情報を扱う場面でも安心して利用できます。大量の音声データを効率的に処理したい方や、セキュリティを重視する企業にとって、非常に有用なツールと言えるでしょう。
公式のチュートリアルに基づき、環境構築や高速化オプションの設定も紹介しました。ぜひ一度試して、その効果を実感してみてください。
ご質問やフィードバックがありましたら、ぜひコメント欄でお知らせください!今後も有益な情報をお届けしていきますので、お楽しみに!
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