はじめに
RPGツクール2000は,エンターブレイン社がWindows OS向けに販売しているゲーム制作ソフトウェアです.
Raspberry Piは,LinuxのDebianディストリビューションを元にしてカスタマイズされたRaspbianが動作します.(別のRaspberry Pi向けのOSを利用することも可能ですが,Windowsは動作しません.)
したがって,OSが異なるためRPGツクール2000のプログラムは通常Raspbian上で動作しません.
LinuxやMacOS上でWindows向けアプリケーションを実行するためのソフトウェアとしてWineがありますが,Wineはx86命令セットを利用するため,ARM系の命令セットを利用しているRaspberry Piでは動作しません.
x86命令セットをエミュレートすることができるQemuというソフトウェアもありますが,エミュレートは動作が重いため,Raspberry Pi上で動作させるのはあまり現実的ではありません.Qemuの数倍程度高速に動作する有償ソフトウェアであるExaGaer Desktopはすでに販売停止しており,入手することは困難です.
ここに,興味深いEasyRPGというプロジェクトがあります.EasyRPGはRPGツクール200Xで作成されたゲームをマルチプラットフォーム上で動作させるプレイヤーとエディタを提供することを目標としたOSSプロジェクトです.マルチプラットフォームの中にLinuxが含まれているので,今回はEasyRPG Playerを利用できるか試してみました.
簡潔に申しますと,普通にやってもRaspberry Pi上でRPGツクール2000は動かないから,EasyRPG PlayerのRaspberryPi向けビルドを使ってみたという記事です.
なお,RTP素材のインストールのため,WindowsマシンまたはWineが動作するマシンが別途必要となります.(RTPとはエンターブレイン社が公開しているツクール200X向けの汎用素材パッケージです.)
導入
EasyRPG Playerのインストール
EasyRPG Playerは公式によって公開されているリポジトリを利用してインストールします.
Raspbian 9(Stretch)であれば次のコマンドを利用します.
$ echo 'deb http://download.opensuse.org/repositories/home:/easyrpg/Raspbian_9.0/ /' | sudo tee /etc/apt/sources.list.d/home:easyrpg.list
$ curl -fsSL https://download.opensuse.org/repositories/home:easyrpg/Raspbian_9.0/Release.key | gpg --dearmor | sudo tee /etc/apt/trusted.gpg.d/home:easyrpg.gpg > /dev/null
$ sudo apt update
$ sudo apt install -y easyrpg-player
Raspbian 10(Buster)であれば次のコマンドを利用します.
$ echo 'deb http://download.opensuse.org/repositories/home:/easyrpg/Raspbian_10/ /' | sudo tee /etc/apt/sources.list.d/home:easyrpg.list
$ curl -fsSL https://download.opensuse.org/repositories/home:easyrpg/Raspbian_10/Release.key | gpg --dearmor | sudo tee /etc/apt/trusted.gpg.d/home:easyrpg.gpg > /dev/null
$ sudo apt update
$ sudo apt install -y easyrpg-player
これらのコマンドは,EasyRPGのLinux向けダウンロードページの「Arch Linux, Debian, Ubuntu, Fedora and openSUSE packages」→「Debian」→「手作業でリポジトリを追加してインストール」から確認することができます.
$ easyrpg-player
コマンドでEasyRPGが起動すればインストール成功です.
RTPのインストールおよびRTPフォルダのコピー
Raspberry PiでRTP素材を利用しているツクール作品をプレイする場合は,RTP素材をRaspberry Pi上にコピーする必要があります.
WindowsマシンやWineが動作するマシンに,エンターブレイン社公式サイトからRPGツクール200X向けのRTPをダウンロードして,インストールしてください.
インストール先はデフォルトではC:¥Program Files (x86)¥ASCII¥RPG2000¥RTP
またはC:¥Program Files (x86)¥ASCII¥RPG2003¥RTP
となります.
2000と2003のいずれか片方しか利用しない場合は,利用するほうのみインストールすれば十分です.
インストールができたら,RTPフォルダをRaspberry Piの任意の場所にコピーします.(.icoファイルは必要ありません.)
最後に,EasyRPG PlayerからRTPを利用するために,.bash_profile
に環境変数$RPG2k_RTP_PATH
および$RPG2k3_RTP_PATH
を追記しておきます.
2000と2003のいずれか片方しか利用しない場合は,利用するほうのみ環境変数を登録すれば十分です.
以下では例として,
ツクール2000向けのRTPを/home/pi/RPGtkool2k/2000/RTP
として,
ツクール2003向けのRTPを/home/piRPGtkool2k/2003/RTP
としてコピーしたと仮定します.
パスは適宜読み替えてください.
# RPGツクール2000のRTPのフォルダを指定する
$ echo "export RPG2K_RTP_PATH=/home/pi/RPGtkool2k/2000/RTP" >> .bash_profile
# RPGツクール2003のRTPのフォルダを指定する
$ echo "export RPG2K3_RTP_PATH=/home/pi/RPGtkool2k/2003/RTP" >> .bash_profile
これでEasyRPGからRTPの利用が可能になりました.
RPGツクール作品のダウンロード
お好きな作品をRaspberry Pi上の任意の場所にダウンロードしてください.
(おすすめはRuina〜廃都の物語〜です.
この記事は9割がたRuina〜廃都の物語〜を布教するために書かれています.)
ただし,zipファイル等はShift-JISでエンコードされていることが多いので,Raspberry Piの通常の展開ソフトでは文字化けしてしまう可能性があります.
Linux上でShift-JISエンコードされたzipファイルを正しく展開できるunarというソフトがあるので,これを利用することをおすすめします.
$ sudo apt install -y unar
$ unar <zipファイル名>
【注意】
EasyRPG Playerでゲームを認識するためには,RPG_RT.exe
が存在するディレクトリ,またはその親ディレクトリでEasyRPG Playerを起動する必要があります.
したがって,ホームディレクトリでEasyRPG Playerを起動するために,「RPG_RT.exe
が入っているフォルダ」をホームディレクトリに置いておくと良いと思います.
(つまり/home/pi/<ゲームフォルダ>/RTP_RT.exe
としておけば,EasyRPGを/home/pi
上で起動すればゲームが認識されるようになります.)
実行
EasyRPG Playerを次のコマンドで起動してください.
ただし,RPG_RT.exe
が存在するディレクトリ,またはその親ディレクトリでコマンドを入力しないと,EasyRPG Playerが起動しても,ゲームが認識しません.
ダウンロードしたゲームが正しく認識されていれば成功です.おめでとうございます!
$ easyrpg-player
最後に
Ruina〜廃都の物語〜はフリーでありながら素晴らしいクオリティを誇る神ゲーです.
私はRuinaファンの方が増えることを願ってやみません.
また,Ruinaファンの方がいらっしゃいましたらTwitterまたはSoundCloudで絡んでいただけますと大変嬉しく思います.