「テプラ」PRO SR-R980で会社の備品管理をQRコード化する(命名規則・連番・流し込み印刷)
この記事でやること
社内の備品(PC・撮影機材・工具・在庫資材など)を、テプラ「PRO SR-R980」とExcelだけでQRコード管理できるようにする手順をまとめます。扱うのは次の3つです。
- 命名規則(管理番号体系)の設計 … あとから振り直さなくて済む採番ルール
- 連番の付け方 … Excel側と本体側、両方のやり方
- 流し込み印刷 … 台帳から一括でQRラベルを生成する
最終的には「QRラベルを貼る → スマホで読む → 台帳が開く」という運用を目指します。
対象読者: 数十〜数百点規模の備品を管理したい小〜中規模のチーム。専用の資産管理SaaSを入れる前に、まず手元で回せる仕組みを作りたい人。
0. 前提の確認
SR-R980はテプラPROのフラッグシップ機です。備品管理で関係してくる前提を先に整理します。
| 項目 | SR-R980 |
|---|---|
| 接続 | USBのみ(Bluetooth非対応) |
| ネット経由印刷 | 非対応(LAN/無線は上位のSR-R7900P/SR5900Pのみ) |
| 対応OS | Windows 10/8.1/8、macOS 11/10.9〜10.15 |
| テープ幅 | 4 / 6 / 9 / 12 / 18 / 24 / 36 mm |
| 二次元コード | 本体で8規格(QR含む)、PCソフトで17種 |
| ヘッド | 360dpi × 432dot |
注意点が2つあります。
- 基本はPC直結で運用する機種です。ネットワーク越しの共有印刷をしたいなら最初からSR-R7900P/SR5900Pを選ぶことになります。SR-R980は「Excel → USB → 印刷」のワークフロー前提と割り切ります。
- 旧規格テープは使えません。古いテプラPROテープ(「P」表記のみ)は非対応で、現行の「P / R」両表記がある新規格テープが必要です。手持ちの古いカートリッジを流用しようとすると動かないので注意してください。
Windows向け純正ソフトは「テプラ クリエイター」(旧称 TEPRA Label Editor SPC10)です。ネット上の解説記事はまだ「SPC10」表記が多いですが、同じソフトの新名称だと思って読み替えてください。Macは別ソフト(SMA3等)で連続印刷に制約があるため、本記事はWindows + テプラ クリエイターを前提にします。
1. 全体の運用フロー
[Excel台帳] --(CSV書き出し)--> [テプラ クリエイター] --(流し込み印刷)--> [QRラベル]
↑ │
└──────────── スマホで読取 ←─ 貼付 ←───────────────────────────────────┘
ここで大事なのは、台帳(Excel/スプレッドシート)を唯一の正(Single Source of Truth)にすることです。ラベルはあくまで台帳から作る派生物と位置づけます。逆方向(現物に合わせて台帳を直す)にすると、現物とデータがすぐに食い違っていきます。
2. 命名規則(管理番号)を設計する
QR化で最初にやるべきは、QRの中身を決めることではなく、管理番号の体系を決めることです。ここを曖昧なまま進めると、後から番号を振り直す羽目になります。
2-1. 推奨フォーマット
{組織プレフィックス}-{カテゴリ}-{連番}
例: NCL-CAM-0007
| パート | 役割 | 例 |
|---|---|---|
| 組織プレフィックス | 自社/拠点の識別。短く固定 | NCL |
| カテゴリ | 備品種別。2〜3文字の固定コード |
CAM(撮影) PC TOOL LED
|
| 連番 | カテゴリ内の通し番号。ゼロ埋め | 0007 |
2-2. 設計のルール
- 桁数を固定する(ゼロ埋め)。
7ではなく0007。文字列ソートで順番が崩れず、QR/バーコードの読み取りも安定します。最初から4桁(〜9999点)取っておけば当面足ります。 - 意味を詰め込みすぎない。「購入年・部署・金額」などを番号に埋め込みたくなりますが、これらは台帳の列として持つべき情報です。番号は変えないID、属性は台帳側、と分けます。年度や部署は組織変更で変わるので、IDに混ぜると変更のたびに番号を振り直すことになります。
- 採番したら再利用しない。廃棄した備品の番号を空き番として使い回すと、履歴が追えなくなります。廃棄は台帳に「ステータス=廃棄」を立てるだけにします。
- カテゴリは少なめに始める。細かく分類したくなりますが、5〜10種類程度から始めて、必要になったら増やすほうが続きます。
プロジェクトコードを既に運用しているチームは、資産コードはそれと別の名前空間にしておくのがおすすめです。プロジェクトは増減し、資産は長期保有という性質の違いがあるためで、プレフィックスを分けて衝突を防ぎます。
3. QRコードに何を入れるか(ID方式 vs URL方式)
QRの中身は大きく2通りです。運用負荷とのトレードオフで選びます。
方式A: ID方式(QRに管理番号そのものを入れる)
NCL-CAM-0007
- メリット: 文字列が短いのでQRの密度が低く、小さいラベルでも読み取りやすい。オフラインで完結する。
- デメリット: QRを読んでも番号が表示されるだけ。台帳を別途開いて検索する手間が残る(= 読み取りアプリ/SaaS側に「IDから台帳を引く」仕組みが必要)。
方式B: URL方式(QRに台帳ページのURLを入れる)
https://assets.example.com/a/NCL-CAM-0007
- メリット: スマホ標準カメラで読むだけで該当備品のページが開く。専用アプリ不要で、「貼って読むだけ」に最も近い。
- デメリット: URLが長いぶんQRが高密度になり、24mm以上の幅が欲しくなる。URLの解決先(台帳ページ)を用意する必要がある。
どちらを選ぶか
- とりあえず棚卸し・所在管理がしたい → ID方式 + 既存SaaS(後述)か、Excelのフィルタ検索で十分。
- スマホで手軽に参照させたい → URL方式。社内に「ID → 備品情報」を返すページ(静的でも可)を1枚用意すれば成立します。VPSやGitHub Pages等に置いた軽量な参照ページでも実用になります。
補足: QRに直接データ(写真・地図等)を紐づけたいなら、テプラ純正の「ピッとコード」機能もあります。ただし、誰のスマホでも読めるという点ではURL方式のほうが汎用的です。
4. Excelで台帳とCSVを作る(連番の付け方)
4-1. 台帳の列構成(例)
| A: 管理番号 | B: カテゴリ | C: 品名 | D: メーカー/型番 | E: 取得日 | F: 保管場所 | G: ステータス | H: QR用文字列 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| NCL-CAM-0007 | CAM | ミラーレス一眼 | SONY α7 IV | 2024-05-01 | 倉庫A-3 | 稼働 | https://.../a/NCL-CAM-0007 |
A〜Gが台帳本体、HがQRに流し込む文字列です。HはAから数式で自動生成します。
4-2. 連番を自動で振る(Excel側)
連番はテプラ本体側でも振れますが(6章)、Excelで採番したほうが管理番号とQRをまとめて作れて楽です。
カテゴリ内の連番をゼロ埋めで作る:
=TEXT(COUNTIF($B$2:B2,B2),"0000")
(B列=カテゴリ。同じカテゴリが何件目かを数えてゼロ埋め)
管理番号を組み立てる(A列):
="NCL-" & B2 & "-" & TEXT(COUNTIF($B$2:B2,B2),"0000")
QR用URLを組み立てる(H列):
="https://assets.example.com/a/" & A2
カテゴリを無視した通し番号でよければ
=TEXT(ROW()-1,"0000")だけでも済みます。まずはこれで十分なケースも多いです。
採番の重複を防ぐため、「次の番号」を台帳のどこかに表示しておくか、数式で自動採番に寄せておきます。手打ちで連番を入れていると、どこかで必ず重複します。
4-3. CSV/Excelとして保存
テプラ クリエイターはExcel(.xlsx)/CSVどちらも読み込めます。1行目を項目名(ヘッダ)にしておきます。
5. テプラ クリエイターで流し込み印刷
- テプラ本体をUSBでPCに接続し、電源ON(SR-R980はUSB接続で印刷可能状態になる)。
- テプラ クリエイターを起動し、新規作成で「備品管理ラベル」または「流し込み(横書き)ラベル」を選択。
- ラベル上に流し込み枠を配置する。
- 文字列の枠(管理番号・品名)
- QRの枠: 枠を選び [列属性]→[バーコード]→[QRコード] を指定。
- CSV/Excelを読み込む(流し込み元データの指定)。
- デザイン上の
ABC… の枠に、CSVの列を対応づける。- 例:
A=管理番号/B=品名/C=QR用文字列(H列) - ※枠の左上に灰色で
A B Cと表示されています。CSVの列順をデザインの割り当てに合わせて並べ替えておくと間違いが減ります。
- 例:
- プレビューで全件確認し、流し込み印刷。
印刷を楽にする本体機能
- ピック&プリント: ラベルを引き抜くと次が印刷される。1点ずつ貼りながら連続作業でき、貼り間違いを防げます。
- ハーフカット: 裏紙を残してラベルだけカット。剥がしやすくなります。
- オートトリマー: 角を丸くカットして剥がれ・めくれを軽減。
- テープ自動識別 + 余白削減: テープに最適な設定で印刷。余白が短くなり1本から多く取れます。
6. 本体の画面だけで連番ラベルを出す(PCなし運用)
PCを開かずテプラ本体だけで通し番号タグを量産したいときは、本体の連番(連続番号)機能が使えます。No.001 / No.002 / No.003… のような連番タグを、1枚ずつ手打ちせずにまとめて出せます。
6-1. まず混同しやすい2つを区別する
| 機能 | 何が変わるか | 使いどころ |
|---|---|---|
| 連続印刷(ぞく2) | 同じラベルを指定枚数ぶん印刷(番号は変わらない) | 同一表示を複数貼る |
| 連番印刷 | 1枚ごとに番号/英字を自動で繰り上げ | 通し番号タグの量産 |
SR-R980では連続印刷「ぞく2」は最大100枚まで(自動的に個別カット)。ここでやりたいのは後者の「連番印刷」です。
6-2. 連番印刷の操作手順(基本フロー)
- ベースとなるラベルを入力する。連番にしたい数字を含めて1枚ぶん打ちます(例:
NCL-CAM-0001)。固定の接頭辞(NCL-CAM-)と連番部分(0001)に分けて構成しておくと、接頭辞はそのままに数字だけが繰り上がります。 - 連番機能を呼び出す。一般的な本体入力機では 〔シフト〕+〔ファイル〕 で「連番」を選びます(連続印刷側は〔印刷〕付近の〔特殊印刷〕から選択)。
- ※キーの呼び名・位置は機種で差があります。SR-R980の正確なキー表記は本体/取扱説明書で一度確認してください。
- 繰り上げる桁(範囲)を指定する。カーソルで連番にしたい数字部分(例の
0001)を選びます。固定したい接頭辞部分は範囲に含めません。 - 印刷枚数(=連番の個数)を指定する。例えば30と入れれば
0001〜0030まで出ます。 - 印刷する。ベース番号から1ずつ繰り上がったラベルが連続で出力されます。
6-3. 本体連番のメモ
- ゼロ埋めは最初から0を打っておく。ベースを
0001と桁を揃えて入力すれば、桁数を保ったまま繰り上がります(1→2ではなく0001→0002)。2章の命名規則(ゼロ埋め)と揃います。 - アルファベットの繰り上げにも対応します(
A→B→C…)。 - 丸付き数字(①②③…)も連番に使えます。掲示物やロッカー番号などに。
- 1枚ずつ切り離したいときは、SR-R980/R680の「ハーフカット連続」設定で、連続印刷をつなげて出すか1枚ずつ切り離すかを選べます。配布・個別貼付なら「切り離す」。
- 貼り間違い防止には「ピック&プリント」。引き抜くと次が出る設定にすれば、1枚貼ってから次が出るので順番がズレません。
6-4. 本体連番の限界
- QRは本体連番では自動採番できません。本体の連番が増やせるのは見た目の文字列だけで、QRの中身を番号に同期させることはできません。番号とQRを一致させたい場合は、4章のPC流し込み(テプラ クリエイター)が必要です。
- 台帳とは自動連動しません。本体連番は現物にとりあえず通し番号を振るための軽量な使い方で、資産台帳とのひも付け(誰が・いつ・どこに)は台帳側で別途管理します。
使い分けの目安: QRあり・台帳連動あり → PC流し込み/番号だけの簡易タグ → 本体連番。現場で数枚だけ手早く出したいときは本体連番が向いています。
7. 備品管理向けのテープ選定
| 用途 | 選ぶテープ |
|---|---|
| 資産表示の定番 | 備品管理ラベル(アルミ銘板調シルバー・弱粘着で跡が残りにくい) |
| 剥がれ対策 | 強粘着タイプ |
| 使い回す備品・貸出品 | きれいにはがせるタイプ(弱粘着) |
| 屋外・倉庫・耐候 | 屋外用ラベル(UVに強い塩ビ・曲面OK・強粘着) |
| ロッカー/什器 | マグネットテープ |
| 下地を活かす | 透明ラベル |
- QRを入れるなら幅24mm以上が安全です。URL方式は特に。
- 幅は数種類を常備しておくと困りません(狭所=細幅、見出し=太幅)。小さくて見えにくい場所は拡大印刷で番号を大きくします。
8. 運用で気をつけること
- 台帳を正にする。現物に合わせて台帳を直すのではなく、台帳を直してから貼り替える方向で運用します。
- 色に意味を持たせるなら対応表を残す。意味付けしないなら色は統一しておくと、担当交代時に「なぜこの色?」とならずに済みます。
- 採番ルールはドキュメント化して共有する。プレフィックス/カテゴリ表を1枚作り、誰が採番しても同じになるようにしておきます。
- ヘッドクリーニング。印字かすれはクリーニングテープで清掃します。QRのかすれは読み取り失敗につながるので、ここは軽視できません。
- 既存SaaSと組むのも手です。「台帳CSV → テプラで印刷」を公式にサポートする備品管理クラウド(例: Colorkrew Biz 等)もあり、ID方式QRと相性がよいです。自前運用が重くなってきたら検討します。
まとめ
- QR備品管理は「管理番号の設計 → Excelで採番&QR文字列生成 → 流し込み印刷」の順で組むと、運用が崩れにくくなります。
- 連番はExcel側でゼロ埋め自動採番するのが基本。本体連番は軽量用途です。
- SR-R980はUSB直結+テプラ クリエイター前提。新規格テープに注意。
次回: SR-R7900Pでネットワーク印刷
SR-R980は手元運用には十分ですが、LAN/無線でネット経由印刷できるのは上位機(SR-R7900P / SR5900P)です。次回は SR-R7900P を使い、台帳から印刷ジョブをネットワーク越しに飛ばす(複数人・複数拠点で使える)仕組みを扱う予定です。
この記事のラベル設計・採番ルールは自社の運用に合わせて調整してください。