はじめに
変化の激しい現代において、長年運用されてきたプログラムの修正は避けて通れません。しかし、複雑に絡み合ったレガシー資産の解析には、膨大な認知負荷と工数がかかります。仕様書は化石となり、ロジックは迷宮のように絡み合い、一筋縄ではいかない魔境と化しています。
そのようなレガシー資産のコード修正に、Anthropicの最新モデルClaude Opus 5.5を利用したらどうなるのか? どこまで実用に耐えうる相棒になってくれるのか? 質問して回答を得てみました。
この画像は自作キャラクター「エフティーアドニャン」を用いて生成AIで作成したアイキャッチ画像です。レガシーコードをAIで解析する疾走感を表現しました。エフティーアドニャンはファイルの転送を見守るファイルの妖精という設定の架空のキャラクターです。
Claude Opus 5.5とは
Claude Opus 5.5は、Anthropic PBCが2026年9月22日にリリースした生成AIモデルです。1 Claudeのラインナップの中でも、多くの作業で執筆時点の最上位公開クラスFable並の性能を相対的に低価格で実現したモデルです。
私は社内で利用が認められているMicrosoft 365 Copilot経由で相談しました。Microsoft 365 Copilotではライセンスや地域、管理者設定などの要件をクリアしていれば、利用者側で利用するモデルを選択可能です。その選択肢の中にOpus 5.5も含まれます。
モデル選択の手順はシンプルです。
- Copilot画面上部のモデル選択メニュー(デフォルトは「自動」と表示)をクリックします。
- メニューからClaude > Opus 5.5を選択します。
業務で社外のAIモデルを使用する場合、機密情報の入力が気になります。Copilot上でOpus 5.5を利用する場合、AnthropicはMicrosoft Corporationの委託先(subprocessor)になり、Microsoft Product TermsやMicrosoft Data Protection Addendumが適用されます。2
相談内容
文字コードをUnicodeからシフトJISに変換する処理で、0x0020(半角スペース)のように、2バイトの1バイト目が00ならば、20を格納するように修正します。
現状は漢字コード(全角文字)と判定された文字はテーブル値に関係なく必ず2バイトで出力しています。そのため、変換結果が0020になってしまいます。
単純そうに見えますが、文字コード変換ロジックなので影響範囲が読みにくい問題です。
回答で驚いた点
原因分析
Opus 5.5は単純に「ここを書き換えればよい」ではなく、以下を整理して説明しました。
- なぜ現在の動作になるのか
- どの分岐で処理されているのか
- 問題の発生箇所はどこか
Opus 5.5は修正案の提示だけでなく、現象の説明役としても有効です。
より安全な修正方法の提示
Opus 5.5は「直接修正する方法」と「より安全な修正方法」を比較しました。また、サロゲートペアやシフトコードなどの影響範囲に言及しました。「動くコード」ではなく、「安全な変更方法」を提案してきた点は想像以上でした。
一方で先回りしすぎているような、丁寧すぎるコードがありました。UnicodeからUnicodeへの変換は、このコードには存在しませんが、Unicode出力を除外する条件が付け加えられていました。もっとも、これは指示の不足と考えます。
既存コンテキストに最適化されたコメント
Opus 5.5はソースコードを修正するだけでなく、既存ソースコードのコメント書式をプロファイリングし、まるで最初からそこに存在していたかのようなトーンでコメントを追記してくれました。まるでシニアエンジニアに修正を依頼するような、快適さとスマートさがあります。
テストケースの提示
AIは確認すべきパターンを提案しました。
- 半角文字が1バイトに変換される
- 全角文字が2バイトに変換される
- 漢字とANK(Alphabet, Numeric, Kana)の混在
- 出力長ちょうどで切れるケース(境界値)
- 大量データでの修正前と修正後の処理時間比較(性能)
修正ポイントだけでなく、「何をテストするべきか」まで整理してくれる点に実用性の高さを感じました。
実行結果
Opus 5.5が修正したソースコードをコンパイルし、実行環境にデプロイしてテストを実施しました。その結果、ほぼすべてのケースで期待通りの挙動を示しました。
一方、仕様とコードの挙動が一致しないケースもありました。互換性フラグは、設定時に修正前の挙動を維持する仕様でしたが、生成されたコードでは逆に「新しい挙動」が選択される実装となっていました。
原因の一つとして、LLMへの指示(プロンプト)の曖昧さが考えられました。そこで、「互換性フラグ設定時はロジックを反転させる」と指示を明確化して再生成したところ、一度の再生成で仕様どおりのコードに修正されました。
機能テスト後にスループットを測定したところ、修正前と比較して処理性能が約70%低下する問題も確認されました。この問題についてOpus 5.5にログとコードを提示して相談したところ、コードそのもの以外に原因がある可能性を指摘し、具体的な調査アプローチを提示しました。
その仮説を基に実行環境を調査した結果、DLLファイルのセキュリティ設定が性能低下に関係していることが判明しました。読み込み時にOSのセキュリティチェックが入り、その分の時間が加わっていたと考えられます。OS側でブロックされていたDLLの実行を明示的に「許可」した上で再測定したところ、修正前と同等の水準まで回復しました。
以上からOpus 5.5は実用可能な品質のコードを出力できますが、常に仕様どおりになるとは限らず、人による確認は不可欠です。とはいえ、問題発覚時の原因調査や修正もOpus 5.5を利用することで生産性向上が期待できます。
終わりに
新規コードや使い捨てのスクリプトならまだしも、多くの歴史的仕様が眠るレガシーコードの修正をAIに委ねる。それは足がすくむ、勇気の要る決断でした。しかし、一筋縄ではいかないレガシーコードも、Claude Opus 5.5という頼もしい相棒と手を取り合えば、原因分析から安全な修正アプローチ、網羅的なテストパターンの洗い出しまで、驚くほどスピーディーに切り拓くことができます。
生成AIはコードを自動生成させるためのツールにとどまりません。アーキテクチャの妥当性を議論し、影響範囲を多角的に検証し、設計の質を一段引き上げるための良いペアプログラミング相手です。AIの提案を深く吟味し、エンジニアとしての確かな知見と掛け合わせることで、開発や保守の生産性は劇的に進化します。
We Are Hiring!
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We're introducing Claude Opus 5.5, the first model in our new Claude 5.5 family.
https://www.anthropic.com/claude-opus-5-5 ↩ -
Anthropic models in Microsoft Online Services
https://learn.microsoft.com/en-us/microsoft-365/copilot/connect-to-ai-subprocessor ↩

