はじめに
Microsoft 365 Copilot Agent Builderでスキルが利用できるようになりました。1
利用できるライセンスには条件があり、全ての環境で利用できるものではありませんが、私の環境では利用できたため、利用結果を紹介します。
過去に私は「M365 Copilot Agent Builderでキャラ立ちAIチャット構築」でエフティーアドニャンのエージェントを作成しました。
エフティーアドニャンはファイルの転送を見守るファイルの妖精という設定の架空のキャラクターです。

このエージェントはエフティーアドニャンになりきって回答します。
しかし、描画能力はイマイチです。エフティーアドニャンの描画を指示しても、猫の絵が返ります。エフティーアドニャンの画像を提示して指示しても胴体があったり、耳が欠けていたり、鼻の下から口まで縦棒があったりと微妙に異なる画像が生成されます。
例えばエフティーアドニャンの画像を提示して、以下の指示を出しました。
添付のキャラクターはエフティーアドニャンです。
エフティーアドニャンがハンバーガーを作っているシーンを描いてください。
次にバドミントンをしているシーンの画像生成を指示しました。
添付のキャラクターはエフティーアドニャンです。
エフティーアドニャンがバドミントンをしているシーンを描いてください。
そこでエフティーアドニャンの描画に一貫性を持たせるスキルを登録してみました。
スキルとは
スキルはAIエージェントの仕事の手順やルールを定義するMarkdown形式の設定ファイルです。特定パターンの処理を予め記述しておくことで、AIエージェントはいつでも、誰が指示しても、ブレのない一定の品質でタスクを完遂できるようになります。
スキルのファイル名はSKILL.mdです。内容は大きく二つの要素に分かれます。フロントマターと本文です。
フロントマターには、スキルのメタデータを記載します。AIエージェントにスキルの「名前(name)」と「概要(description)」を認識させます。ここはYAML形式で記載します。
本文はAIエージェントがタスクを実行する際の具体的なステップ、ルール、制約事項を記述します。
テキストエディタで以下のようにスキルを作成しました。
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name: ftadnyan-character-rendering
description: "ファイルの妖精「エフティーアドニャン」のキャラクターデザインを忠実に再現するための描画スキル。画像生成、3Dレンダリング、イラスト、漫画などにおいて、クリーム色の球形の顔、鮮やかな赤色の耳・腕・脚・尻尾、大きな瞳と笑顔を一貫して維持する。特に、独立した胴体が完全に存在せず、顔そのものが唯一の本体であり、耳・腕・脚・尻尾が顔から直接生えている構造を厳守する。"
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# SKILL.md - エフティーアドニャン描画ガイド
## 1. スキルの目的
ファイルの転送を見守る「ファイルの妖精」エフティーアドニャン(Ftadnyan)を、あらゆる画像生成・イラスト制作において、一貫した外観で描画する。
エフティーアドニャンは、愛らしく親しみやすい猫型のITマスコットキャラクターである。元気で陽気、好奇心旺盛な性格を、大きな瞳と満面の笑顔で表現する。
本スキルでは、キャラクターの外観を維持するための形状、色彩、材質、表情、動作、禁止事項を定義する。
**最優先事項は、胴体が完全に存在しない独特の体の構造を厳守することである。**
## 2. 最重要ルール:胴体のない体の構造
エフティーアドニャンの描画では、以下の構造を絶対に守る。
- 球形の顔そのものが、キャラクターの唯一の本体である。
- 首、肩、胸、腹、腰などの独立した胴体パーツは一切存在しない。
- 左右の腕は、球形の顔の左右から直接生えている。
- 2本の脚は、球形の顔の下部から直接生えている。
- 尻尾は、球形の顔の後方から直接生えている。
- 耳は、球形の顔の頭頂部から直接生えている。
- 顔と手足の接続部に、人間や一般的な二足歩行キャラクターのような胴体構造を追加しない。
### 正しい構造
「大きな球形の顔 + 直接生えた2本の腕 + 直接生えた2本の脚 + 直接生えた尻尾 + 2つの耳」
これがエフティーアドニャンの基本構造である。
腕や脚が動いたり、顔が傾いたり、ジャンプしたり、走ったり、座ったり、後ろを向いたりしても、この構造を維持する。
### 禁止する構造
以下はすべてデザインの誤りとする。
- 顔の下に胴体を追加する。
- 顔と脚の間に首、胸、腹、腰を設ける。
- 腕を胴体や肩から生やす。
- 人間のような上半身・下半身の構造に変更する。
- 着ぐるみや全身スーツを着せて胴体があるように見せる。
- 顔を一般的な猫の頭部として扱い、その下に猫の体を描く。
- ポーズの都合で、顔と手足の間に別の本体パーツを補完する。
**迷った場合は、人体的な自然さよりも、胴体が存在しないキャラクターデザインの忠実な再現を優先する。**
(以下略)
3章以降は見出しのみ紹介します。
## 3. キャラクターの外観仕様
### 3.1 頭部・顔
### 3.2 耳
### 3.3 目
### 3.4 鼻
### 3.5 口
### 3.6 ひげ
### 3.7 腕と手
### 3.8 脚と足
### 3.9 尻尾
## 4. 色彩と材質
### 4.1 基本色
### 4.2 質感
## 5. 性格と表情の指針
## 6. 口調とセリフ
## 7. ポーズ・構図への対応
## 8. 画風の切り替え
## 9. IT・デジタル関連の背景
## 10. 禁止事項
## 11. 画像生成用プロンプトの組み立て方
## 12. 生成後の品質チェックリスト
## 13. 最終原則
Agent Builderへのスキル登録
それではAgent Builderにスキルを登録します。
Copilotを開き、対象エージェント(ここでは「エフティーアドニャン」)の編集画面を開きます。

「スキルのアップロード」画面が開くため、スキルを選択します。

「SKILL.md ファイル自体か、SKILL.md ファイルを含んだ .zip パッケージを指定してください」とあり、今回はSKILL.mdファイル単体をアップロードしました。現在のマニュアル上はスキルパッケージ(zip)のアップロードが推奨されています。
スキルを選択すると「スキルのアップロード」画面にファイル名SKILL.mdが表示されます。

アップロードボタンをクリックします。編集画面に戻り、スキル欄にスキル「ftadnyan-character-rendering」が登録されました。

右上の「更新」ボタンをクリックします。
以下のメッセージが表示されます。
エージェントを更新しています
更新が完了するまで、このウィンドウを閉じないでください。
「エージェントが正常に更新されました!」のメッセージが表示されます。

「チャットを開始」をクリックします。
スキル登録後
前回と同じ画像を提示し、同じプロンプトでハンバーガーを作るシーンの描画を指示しました。今回の出力は胴体がありません。

生成AIの出力結果には再現性がなく、スキルを登録した場合も全く同一の出力結果にはなりませんが、スキル登録後はエフティーアドニャンの描画が安定して出力されるようになりました。
スキルの業務利用
この記事では直感的にわかりやすい画像生成の例を取り上げましたが、SKILL.mdの本質はテキスト生成やタスク実行全般のルール定義にあります。このため、以下のような日常のさまざまな業務タスクにも利用できます。
①提案書・技術文書のフォーマット・表記ゆれ統一
社内の提案書、要件定義書、技術レポートなどの作成支援エージェントにおいて、ドキュメントの章立てや表記ルール(用語集、トンマナ、敬体・常体の統一、禁止ワードの排除)をSKILL.mdで定義します。これによって作成者ごとの体裁のバラつきを防ぎ、ドキュメントレビューの手間の削減が期待できます。
②議事録・面談記録の構造化とアクションアイテム抽出
Teams等の会議文字起こしデータから議事録を作成する際、SKILL.mdに「決定事項」「保留事項」「次回アクション(担当者・期日・タスク)」といった抽出フレームワークやMarkdownテーブル形式のテンプレートを定義します。これによって会議の種類を問わず、統一されたフォーマットで抜け漏れのない議事録の自動生成が期待できます。
③問い合わせ対応
社内ヘルプデスク(IT、人事、総務など)や顧客サポート向けエージェントに、問い合わせカテゴリ別の対応フロー、参照すべき社内規定URLの優先順位、エスカレーション条件をスキルとして埋め込みます。これによって担当者の経験年数に依存せず、ポリシーに準拠した一次回答の提供が期待できます。
④プログラミングコードの規約チェック・リファクタリング支援
社内の開発標準(命名規則、エラーハンドリング手順、セキュリティ対策チェックリストなど)をSKILL.mdに記述します。これによってソースコードのレビューや新規コード生成時に、社内コーディング規約に従った高品質なコードが期待できます。
⑤契約書の法務・コンプライアンスチェック
契約書ドラフトのレビューエージェントにおいて、必須条項(反社会的勢力排除条項、損害賠償上限、秘密保持義務など)の有無やリスク箇所の判定基準をスキルに設定します。これによって法務部門の事前スクリーニング作業を標準化し、確認漏れの低減が期待できます。
スキル使用時の注意点
スキルを導入することでエージェントの出力精度や一貫性は大幅に向上しますが、実際に運用・設計するにあたってはいくつかの注意点が存在します。
①スキルの設計・メンテナンスコスト
期待通りの出力を得るためには、AIが誤解しないよう構造やルールを緻密に言語化してMarkdownに落とし込む必要があります。また、対象の要件や仕様変更があった場合には、都度SKILL.mdを修正してエージェントを更新・テストする運用メンテナンスの工数が発生します。
②トークン消費量とレスポンスへの影響
SKILL.mdに記述したルールや指示は、エージェントが処理を行う際のコンテキスト(プロンプト)として消費されます。記述量が肥大化すると、一度に扱える会話履歴や添付ファイルの情報量が圧迫されたり、モデルのレスポンス速度に影響を及ぼしたりする可能性があります。
③柔軟性や創造性の低下(過度な制約)
「胴体を描かない」「特定のフォーマットで出力する」といった厳格なルールを多数課すことで、AI本来の柔軟な発想や臨機応変な回答・表現のバリエーションが制限されてしまう場合があります。タスクの目的に応じて、どこまで厳格に縛るかのバランス設計が求められます。
④ルール競合や指示の見落としリスク
複数のスキルを併用したり、1つのSKILL.md内に複雑な条件分岐や大量の禁止事項を盛り込みすぎると、AIが指示同士の優先順位を正しく判断できなくなったり、一部のルールを無視してしまう現象(プロンプトの競合・指示漏れ)が発生しやすくなります。
おわりに
生成AIとの対話は、ときに思い通りにいかないもどかしさと、想像を超えた驚きが隣り合わせの旅のようなものです。
プロンプトだけではどうしても「手が3本」になってしまったり、胴体が生えてしまったりする。そんなAIの愛らしい気まぐれに対して、ただ諦めるのではなく、振る舞いやルールとしての「スキル(SKILL.md)」を授ける。それだけで、AIエージェントはぐっとこちらの世界へ歩み寄り、私たちが本当に思い描いていた姿を正確に紡ぎ出してくれるようになります。
完璧な再現性が存在しない生成AIの世界だからこそ、私たちのちょっとした工夫や定義ひとつで、AIエージェントとの距離が縮まる面白さがあります。みなさんもぜひ、自分だけのこだわりやルールをSKILL.mdに詰め込んで、頼もしくも愛着の湧くAIエージェントを育ててみてください。その先にはきっと、これまで見たことのない新しい景色が広がるでしょう。
We Are Hiring!
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エージェント ビルダーで宣言型エージェントにスキルを追加する
https://learn.microsoft.com/ja-jp/microsoft-365/copilot/extensibility/agent-builder-add-skills ↩



