kintone の標準「計算」フィールドでは、四則演算はできても、条件分岐・文字列組み立て・テーブル集計・日付処理まで含めた実務要件には届かないことがあります。
この記事では、計算式プラグイン を前提に、kintone にプラグインを追加し、対象アプリへ適用して、フィールドコードに計算式を割り当てる基本操作を 5 ステップで確認します。
最初に押さえるポイントはこれです。
計算式はフィールドに紐づけて設定し、値変更や保存のタイミングで自動計算される
JavaScript の記述やプラグイン開発の知識は不要です。
必要なのは、フィールドコードが分かることと、アプリ設定画面を開けることだけです。
- 計算式プラグインを適用したアプリの完成イメージ
この記事の前提
- 対象プラグイン: 計算式プラグイン
- バージョン目安: Ver.98(2026/06 リリース)を確認した内容です
- 検証観点:
- フィールドへの計算式割り当て
- 四則演算
IF- 文字列連結
- テーブル集計
- 行番号の自動採番
この記事では、内部実装の詳細には踏み込みません。
利用者視点で、プラグインが提供する計算式構文を設定画面に入力して使う、という前提で進めます。
導入:標準「計算」フィールドでは足りない場面
標準の「計算」フィールドは便利ですが、実務では次のような要件が出てきます。
- 条件によって結果を変えたい
- 表示用の文字列を組み立てたい
- テーブルの明細を集計したい
- 日付をもとに計算したい
なお、標準の「計算」フィールドは計算結果を数値と文字列項目にしか出力できませんが、計算式プラグインはチェックボックス・複数選択・文字列複数行など、より多様な項目にも計算式(計算結果)を設定できます。本記事では数値・文字列を中心に扱います。
こうしたときに役立つのが 計算式プラグイン です。
考え方はシンプルで、どのフィールドに、どの式を設定するかを決めるだけです。
この記事の到達点は次のとおりです。
- プラグインを kintone に追加する
- 対象アプリへ適用する
- 基本的な計算式を設定する
- プラグイン付属の計算式ツールで確認する
一方で、この記事では次の内容は扱いません。
- 全関数の網羅
- JavaScript カスタマイズ
- 複雑な業務ロジックの設計
- すべての丸め仕様の詳細比較
ステップ1:プラグインを kintone に追加する
まずは配布された プラグインファイル(zip) を kintone に読み込みます。
手順は次のとおりです。
- プラグインの zip ファイルを用意する
- 画面右上の歯車(設定)から 「kintone システム管理」 を開く
- 「その他」 内の [プラグイン] を開く
- [読み込む] から zip ファイルを読み込む
- プラグイン一覧に 計算式プラグイン が追加されたことを確認する
- ステップ1:プラグイン読み込み画面
- ステップ1:プラグイン一覧での追加確認
- ステップ1:計算式プラグインが登録された状態
ここでの確認ポイントは 1 つです。
- プラグイン一覧に計算式プラグインが表示されること
この時点ではまだアプリでは使えません。
ここで行ったのは、kintone 環境全体にプラグインを登録しただけです。
この操作には、cybozu.com 共通管理者または kintone システム管理者の権限が必要です。UI 文言は環境によって多少異なる場合があります。
ステップ2:アプリへ適用し、設定画面を開く
次に、対象アプリでプラグインを有効化します。
手順は次のとおりです。
- 対象アプリの設定画面を開く
- 「プラグイン」 を開く
- 計算式プラグイン を追加する
- プラグインの設定画面を開く
- ステップ2:アプリのプラグイン設定画面
設定画面では、どのフィールドにどの計算式を設定するかを定義します。
- ステップ2:計算式プラグインの設定画面
計算式プラグインの設定画面で「ツール」をチェックすると、レコード詳細画面・追加編集画面で プラグイン付属の計算式ツール を利用できます。以降の手順では、本番フィールドへ設定する前にこのツールで式を試すと安全です。
以降の例では、次のフィールドがある前提で進めます。
例として使うフィールド
| フィールド名 | フィールドコード | フィールドタイプ | 配置場所 |
|---|---|---|---|
| 単価 | 単価 |
数値 | 画面(テーブル外) |
| 数量 | 数量 |
数値 | 画面(テーブル外) |
| 税率_乗率 | 税率_乗率 |
数値(1.1 を格納・パターンA用) |
画面(テーブル外) |
| 小計 | 小計 |
数値(計算式を設定) | 画面(テーブル外) |
| 税込 | 税込 |
数値(計算式を設定) | 画面(テーブル外) |
| ランク | ランク |
ドロップダウン(選択肢: A, B) | 画面(テーブル外) |
| 表示用メッセージ | 表示用メッセージ |
文字列(1行) | 画面(テーブル外) |
| 商品合計 | 商品合計 |
数値(計算式を設定) | 画面(テーブル外・集計用) |
| 税率 | 税率 |
数値(0.1 を格納・パターンB用) |
画面(テーブル外) |
| 明細 | 明細 |
テーブル | 画面(テーブル) |
| 金額 | 金額 |
数値 | テーブル 明細 内 |
| No | No |
数値(計算式を設定) | テーブル 明細 内 |
| 区分 | 区分 |
ドロップダウン | テーブル 明細 内 |
| 合計 | 合計 |
数値(計算式を設定) | 画面(テーブル外・集計用) |
税率_乗率(パターンA用)と 税率(パターンB用)は、どちらか一方だけ用意すればよいです(両方は不要です)。
フィールドコードは、実際のアプリに合わせて読み替えてください。
ステップ3:四則演算で 小計 と 税込 を作る
まずは四則演算で 小計 を作り、税込 は丸め関数 ROUND まで含めて作ります。
小計 = 単価*数量-
税込 = ROUND(小計*税率_乗率,0)またはROUND(小計*(1+税率),0)
設定する式の例は次のとおりです。
単価*数量
ROUND(小計*税率_乗率,0)
ROUND(小計*(1+税率),0)
割り当て例:
- フィールド
小計に単価*数量 - フィールド
税込にROUND(小計*税率_乗率,0)またはROUND(小計*(1+税率),0)
基本ルール
- フィールドコードはそのまま記述する
- 四則演算子として
+-*/を使う - 関数は
関数名(引数)の形で書く
最初にハマりやすい点
- 全角の記号を使っている
- フィールドコードの綴りが違う
- 数値フィールドだと思っていたら文字列フィールドだった
たとえば * や 1.1 のような全角文字は避け、半角英数・半角記号で入力します。
税率フィールドの設計は先に決めておく
ここは誤解しやすいので、どのフィールドに何を入れるかを最初に固定してください。
主に次の 2 パターンがあります。
パターンA: 乗率設計
- フィールドコード:
税率_乗率 - 入れる値:
1.1
この場合の式:
ROUND(小計*税率_乗率,0)
この書き方なら、固定値で書いた次の式と意味が一致します。
小計*1.1
パターンB: 税率設計
- フィールドコード:
税率 - 入れる値:
0.1
この場合の式:
ROUND(小計*(1+税率),0)
どちらでも実装できますが、フィールド名と中身の意味を一致させるのが大事です。
たとえば 税率 という名前なのに 1.1 を入れると、読者や運用担当者が 0.1 を入力したくなり、ミスの原因になります。
端数処理(ROUND で整数に丸める)
税込計算では、ROUND を使って整数に丸めておくと、設定内容を揃えやすくなります。
ROUND(値,桁) の第2引数は小数点以下の桁数で、ROUND(x,0) は小数点以下 0 桁=整数への丸めです。四捨五入は ROUND、切り上げは ROUNDUP、切り捨ては ROUNDDOWN を使います。切り上げ・切り捨てが必要な場合は、それぞれの関数に置き換えてください。
パターンA採用時(税率_乗率 に 1.1 を格納):
ROUND(小計*税率_乗率,0)
パターンB採用時(税率 に 0.1 を格納):
ROUND(小計*(1+税率),0)
桁の挙動の細かな確認は、プラグイン付属の計算式ツールで実際に試すのが確実です。
設定後は、次の 2 段階の保存が必要です。
- プラグイン設定を保存
- アプリ設定を更新
その後、レコード追加画面や編集画面で 単価 と 数量 を入力し、小計 と 税込 が自動計算されることを確認します。
- ステップ3:
小計・税込がレコード画面で自動計算された結果
ステップ4:IF で条件分岐し、文字列を組み立てる
次は、実務でよく使う 2 つです。
-
IFによる条件分岐 - 表示用文字列の組み立て
まずは ランク を条件で決めます。
IF(税込>=10000,"A","B")
これは次の意味です。
-
税込が10000以上ならA - そうでなければ
B
IF の読み方
IF は次の形で覚えると分かりやすいです。
IF(条件,真の値,偽の値)
今回の式を分解すると、次の 3 つです。
- 条件:
税込>=10000 - 真の値:
"A" - 偽の値:
"B"
次に、表示用のメッセージを作ります。
本プラグインでは & が文字列連結演算子です。
"ランク:" & ランク
これは "ABC" & "XYZ" が "ABCXYZ" になるのと同じ考え方です。
これを 表示用メッセージ に設定すると、ランク が A のとき、結果は次のようになります。
ランク:A
ここで覚えたいこと
- 条件分岐は
IF(条件,真の値,偽の値) - 文字列リテラルは
"..."で囲む - 文字列連結は
&を使う
数値フィールドを文字列と連結したときの表示形式は、実際のレコード画面で確認してください。見せ方を整えたいときは、表示専用の文字列フィールドを用意して式を設定すると扱いやすくなります。
他項目の計算結果を参照する式は実行順の影響を受けることがあります。詳しくは後述の「うまく計算されないときの初歩チェック」を参照してください。
ステップ5:テーブルを扱う — 集計と行番号
テーブルでは、どこに式を置くかが重要です。
ここは 2 パターンで整理すると分かりやすくなります。
- テーブル外のフィールドで集計する
- テーブル内の各行で計算する
テーブル外で合計を作る
明細テーブル内に 金額 フィールドがあり、テーブル外の 合計 フィールドに集計したい、という要件はよくあります。
このプラグインには SUM があり、テーブル内の金額列を合計できます。
SUM(金額)
この式は テーブル外の 合計 フィールド に設定します。
意味としては、テーブル内の各行にある 金額 を合計する、という使い方です。
- 行を追加すると再計算される
-
金額を変更すると合計も更新される
テーブル外で条件付き合計を作る(SUMIF)
SUM はテーブルの全行を合計しますが、条件に合う行だけを合計したいこともあります。標準の「計算」フィールドでは難しいこの「条件付き合計」に使えるのが SUMIF です。
書式は次のとおりです。Excel と違い、条件を先に書きます。
SUMIF(条件, 合計対象項目)
たとえば、明細テーブル 明細 に区分を表すドロップダウン 区分(値は "商品" や "送料" など)があり、商品 の金額だけを合計したいとします。このとき、テーブル外の集計用フィールド 商品合計 に次の式を設定します。
SUMIF(区分=="商品", 金額)
等価判定は == を使います(IF で >= を使ったのと同じ系統の演算子で、= ではありません)。SUM(金額) が全行を合計するのに対し、SUMIF(区分=="商品", 金額) は 区分 が 商品 の行の 金額 だけを合計します。
条件式の演算子や合計対象の指定はアプリのフィールド構成に合わせて確認してください。とくにドロップダウンなど選択系フィールドの比較が想定どおり一致するかは、プラグイン付属の計算式ツールで試すと確実です。
テーブル内で行番号を出す
ROWNO は、テーブルのフィールドコードを引数に必ず指定して使う関数です。
本記事の例ではテーブルのフィールドコードが 明細 なので、明細テーブル内の行位置を取得するには ROWNO(明細) と書きます。ROWNO の戻り値は 0 始まり(先頭行が 0)なので、1 始まりの連番にしたい場合は + 1 します。
ROWNO(明細) + 1
これを テーブル内の No フィールド に設定すると、行ごとに評価されます。
また、行の追加・削除時にも自動で再計算されます。
テーブルの理解を 2 本柱で整理する
- 集計系の式はテーブル全体を見る
- 行番号や行内計算の式は各行ごとに評価される
この整理ができると、テーブル関連の設定で迷いにくくなります。
プラグイン付属の計算式ツールで先に確認する
本プラグインには計算式ツールが標準で備わっています。
いきなり本番フィールドへ設定する前に、まずツールで試すのがおすすめです。
- 計算式ツールで式を試した実行例
プラグイン付属の計算式ツールで確認したいのは次の 2 点です。
- 式の構文が正しいか
- 期待した結果が返るか
たとえば、次のような確認に使えます。
- フィールドコードの記述ミスがないか
-
IFの条件が想定どおりに分岐するか -
&の連結結果が期待どおりか -
SUMの引数指定が正しいか -
ROWNOの引数指定と番号の起点(0 始まり)が期待どおりか
うまく計算されないときの初歩チェック
「設定したのに動かない」ときは、まず次を確認します。
- 保存・更新の2段階: プラグイン設定を保存したか/アプリ設定を更新したか(どちらか片方だけになっていないか)
- フィールドコードとラベルの取り違え: 式に書いたのがフィールド「コード」か、画面表示用の「ラベル(フィールド名)」になっていないか
-
式の置き場所違い: テーブル外に置くべき集計(例:
SUM(金額)の合計)をテーブル内に置いていないか/行ごとに評価したい式をテーブル外に置いていないか -
計算式の実行順: 他項目の計算結果を参照する式(例:
税込→小計、ランク→税込)が期待どおり更新されないときは、計算式プラグインの 計算式実行ランク(実行順/設定順)を確認する -
全角記号・数字の混入:
*や1.1のような全角が混ざっていないか(半角英数・半角記号で入力する) - 参照元が空欄: 参照しているフィールドが未入力で計算できない状態になっていないか
- フィールド型の不一致: 数値で計算したいフィールドが文字列型になっていないか
既存レコードへの反映には、プラグイン設定の 「既存レコードを変更」 や、一覧画面の 「一括計算」 を使います。
「既存レコードを変更」「一括計算」での処理対象は最大20万件、kintone の REST API は1アプリ1日あたり10,000回という上限があるため、大量更新時は一覧で対象を絞って実行してください。20万件を超える場合も、一覧の条件で対象を分けて一括計算する運用が安全です。
適用した計算式まとめ
本記事で設定した計算式を、設定先フィールドとフィールドタイプ付きでまとめます。コピーして利用する際は、自分のアプリのフィールドコードに読み替えてください。
// 小計 NUMBER
単価*数量
// 税込 NUMBER
ROUND(小計*税率_乗率,0)
// ランク DROP_DOWN
IF(税込>=10000,"A","B")
// 表示用メッセージ SINGLE_LINE_TEXT
"ランク:" & ランク
// 明細.No NUMBER
ROWNO(明細) + 1
// 商品合計 NUMBER
SUMIF(区分=="商品", 金額)
// 合計 NUMBER
SUM(金額)
まとめ
この記事では、計算式プラグイン を使って、計算式をフィールドに割り当てる基本操作を 5 ステップで確認しました。
- プラグインを kintone に追加する
- アプリへ適用して設定画面を開く
- 四則演算で
小計と税込を作る -
IFと文字列組み立てで条件分岐と表示用メッセージを作る - テーブル集計と行番号の考え方を押さえる
最後まで変わらない中心概念はこれです。
計算式はフィールドに紐づける
この考え方が入ると、式が増えても整理しやすくなります。
次の一歩としては、日付関数・ユーザー情報・HTML 生成(FIELDS_HTML など)といった関数へ広げていくと、kintone の画面をより業務に寄せていけます。
本記事の計算式は、構文と関数の存在をプラグイン仕様(readme / manifest Ver.98)と突き合わせて確認したものです。実際の計算結果・再計算タイミング・表示形式は、実機の kintone(プラグイン付属の計算式ツール/対象アプリ)で確認してください。ローカルでの実行検証は行っていません。なお、未検証の挙動は kintone ランタイム依存の可能性もあるため、運用前に実機で確認してください。
詳細な関数仕様やバージョン差分は、利用中のプラグイン資料を確認してください。あわせて、計算式プラグインの関数リファレンス(参考記事) も参照してください。







