はじめに
AIコーディングエージェントを日常的に使っていると、ふと気になることがあります。
「このデータ、別のPCに移行できるの?」
「もし別のAIツールに乗り換えたら、今までの設定や会話は持っていける?」
本記事では、Google Antigravity (Gemini Code Assist) と Claude Desktop / Claude Code の2つのAIコーディングエージェントについて、実際のWindows環境のデータを調査し、移植可能性を比較分析しました。
調査環境
- OS: Windows 11
- Antigravity: Gemini Code Assist(VS Code拡張)
- Claude: Claude Desktop アプリ v1.1.5749
Antigravity(Gemini)のデータ構造
保存場所
全データは以下のディレクトリに集約されています:
%USERPROFILE%\.gemini\antigravity\
実測データ
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 合計サイズ | 311.91 MB |
| ファイル数 | 6,456 |
ディレクトリ構成
.gemini\antigravity\
├── conversations/ # 会話データ (.pb Protocol Buffers)
├── brain/ # アーティファクト (Markdown, JSON, 画像)
├── browser_recordings/ # ブラウザ操作スクリーンショット (JPG)
├── knowledge/ # ナレッジベース
├── code_tracker/ # コード変更追跡
├── implicit/ # 暗黙コンテキスト (.pb)
├── annotations/ # 注釈データ (.pbtxt)
├── playground/ # プレイグラウンド
├── html_artifacts/ # HTML成果物
├── installation_id # インストール固有UUID
├── mcp_config.json # MCP設定
├── user_settings.pb # ユーザー設定
└── browserAllowlist.txt # ブラウザ許可リスト
各ディレクトリの移植性
| ディレクトリ | 内容 | 形式 | 移植性 |
|---|---|---|---|
conversations/ |
会話履歴 |
.pb (Protocol Buffers) |
❌ 低い |
brain/ |
生成ドキュメント・計画書 | Markdown, JSON, 画像 | ✅ 高い |
browser_recordings/ |
操作記録 | JPG | ✅ 高い(大容量注意) |
implicit/ |
AI内部コンテキスト |
.pb バイナリ |
❌ 低い |
annotations/ |
注釈 |
.pbtxt テキスト |
⚠️ 中間 |
重要な発見
会話データ(conversations/*.pb)がProtocol Buffers形式 であるため、Antigravity専用のスキーマ定義がないとデシリアライズできません。最大の会話ファイルは 2.3MB に達しており、テキストエディタでは読めません。
一方、brain/ ディレクトリにはアーティファクト(実装計画、ガイドドキュメントなど)がMarkdown形式で保存されており、これらは自由にコピー・利用できます。
brain/
└── 676ec81d-.../
├── command_log_and_ifthen_guide.md # 14KB
├── github_gitlab_mirror_guide.md # 22KB
├── notion_github_actions_n8n_guide.md # 21KB
└── *.metadata.json # メタデータ
容量の最大要因は browser_recordings/ で、ブラウザサブエージェントの操作記録として数千枚のJPGスクリーンショットが保存されます。
Claude Desktop / Claude Code のデータ構造
保存場所
Claude は複数の場所にデータが分散しています:
# Claude Desktop
%APPDATA%\Claude\
# Claude Code CLI(インストール時)
%USERPROFILE%\.claude\
# プロジェクト内
<project>/.claude/
<project>/CLAUDE.md
<project>/.mcp.json
実測データ
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 合計サイズ | 19.17 MB |
| ファイル数 | 316 |
ディレクトリ構成(Claude Desktop)
%APPDATA%\Claude\
├── claude_desktop_config.json # MCP・プリファレンス設定
├── config.json # ロケール・テーマ
├── window-state.json # ウィンドウ状態
├── git-worktrees.json # Git worktree設定
├── ant-did # デバイスID (Base64)
├── logs/ # アプリケーションログ
├── IndexedDB/ # LevelDB(会話キャッシュ)
├── Local Storage/ # ブラウザストレージ
├── Cache/ # Electronキャッシュ
└── sentry/ # エラーレポート
設定ファイルの中身
Claude の設定ファイルは 全て人間可読なJSON です:
// claude_desktop_config.json
{
"preferences": {
"coworkWebSearchEnabled": true
}
}
// config.json
{
"locale": "ja-JP",
"userThemeMode": "system"
}
Claude Code CLI の設定構造
Claude Code は設定スコープの階層構造が明確に定義されています:
[マネージド (組織)] → [ユーザー] → [プロジェクト] → [ローカル]
↓ ↓ ↓ ↓
C:\Program Files\ ~/.claude\ .claude/ .claude/
ClaudeCode/ settings.json settings.json settings.local.json
CLAUDE.md CLAUDE.md
プロジェクト設定(.claude/settings.json, CLAUDE.md)は Gitリポジトリに含めてチームで共有する 設計思想です。
比較分析
データ量
Antigravity: ████████████████████████████████ 312 MB
Claude: ██ 19 MB
Antigravityが16倍以上のデータ量を使用しています。主因はbrowser_recordings/(ブラウザ操作スクリーンショットの大量JPG)です。
ファイル形式
| 形式 | Antigravity | Claude |
|---|---|---|
| Protocol Buffers (.pb) | 会話、設定、コンテキスト | ❌ 使用なし |
| JSON | MCP設定のみ | 全設定ファイル |
| Markdown | アーティファクトのみ |
CLAUDE.md (指示ファイル) |
| LevelDB | ❌ 使用なし | IndexedDB(キャッシュ) |
移行シナリオ別比較
🖥️ 別PCへの移行
| Antigravity | Claude | |
|---|---|---|
| 手順 | 312MBフォルダ全コピー + installation_id問題対処 |
ログインするだけ |
| 会話データ | ローカル.pbをコピーする必要あり |
☁️ クラウドに保存済み |
| 設定 | 一部.pb形式で手動移行困難 |
JSONファイル数個をコピー |
| 難易度 | ⚠️ 中〜高 | ✅ 簡単 |
💾 バックアップ・復元
| Antigravity | Claude | |
|---|---|---|
| 会話 | 手動バックアップ必須(312MB) | クラウドに自動保存 |
| 設定 |
mcp_config.json + .pbのコピー |
claude_desktop_config.jsonのコピー |
| 成果物 |
brain/のMarkdownをコピー |
クラウドに保存済み |
| 難易度 | ⚠️ 手動管理が必要 | ✅ ほぼ不要 |
👥 チームメンバーへの設定共有
| Antigravity | Claude | |
|---|---|---|
| 方法 |
.agents/workflows/*.mdをGitコミット |
.claude/settings.json + CLAUDE.mdをGitコミット |
| 難易度 | ✅ 同等 | ✅ 同等 |
🔀 他のAIツールへの移行
| Antigravity | Claude | |
|---|---|---|
| 会話データ | ❌ .pb専用形式で読めない |
⚠️ UIエクスポート or API経由 |
| 設定 | JSON部分のみ可読 | 全てJSON、可読 |
| ナレッジ |
brain/のMarkdownは移行可能 |
CLAUDE.mdは移行可能 |
まとめ
| 評価項目 | Antigravity | Claude |
|---|---|---|
| ローカルデータの軽さ | ⭐⭐ | ⭐⭐⭐⭐⭐ |
| 別PCへの移行容易性 | ⭐⭐ | ⭐⭐⭐⭐⭐ |
| 設定ファイルの可読性 | ⭐⭐⭐ | ⭐⭐⭐⭐⭐ |
| チーム共有のしやすさ | ⭐⭐⭐⭐ | ⭐⭐⭐⭐ |
| 他ツールへの移行性 | ⭐⭐ | ⭐⭐⭐ |
| クラウドバックアップ | ⭐ | ⭐⭐⭐⭐⭐ |
| ローカル完結性 | ⭐⭐⭐⭐⭐ | ⭐⭐⭐ |
結論
移植可能性ではClaudeが圧倒的に優位です。その理由は:
- クラウドファースト設計 — 会話データがクラウドに保存されるため、ログインだけで環境が復元される
- 全JSON設定 — 設定ファイルが全て人間可読で、手動編集もバージョン管理も容易
- Git統合思想 — プロジェクト設定をGitリポジトリで管理する前提の設計
- 軽量なローカルデータ — 19MB vs 312MBと16倍の差
一方、Antigravityはローカル完結性に優れています。クラウドに依存しないため、オフライン環境やデータ主権を重視する場合は有利です。また、brain/ディレクトリのMarkdownアーティファクト(実装計画、ガイドドキュメントなど)は移植性が高く、有用なドキュメント資産として活用できます。
選択のポイント:
- 🔄 頻繁にPC移行・マルチデバイス → Claude
- 🔒 データをローカルに保持したい → Antigravity
- 👥 チーム開発の設定共有 → どちらも同等
- 📦 将来的なツール乗り換え → Claude(データ形式がオープン)
本記事のデータは2026年3月時点の実環境から取得したものです。各ツールのバージョンアップにより構造が変更される可能性があります。