2024/10/22 に,Amazon Bedrock Custom Model Import がついに GA となりました!2024/10/22 時点では,バージニア北部リージョンおよびオレゴンリージョンで利用可能で,Service Quotas の上限緩和申請は不要になりました! (本記事で言及している申請は不要です.)
2024/7/18 に,@kmotohas さんと共著で Custom model import の検証記事を AWS 公式ブログに公開しました.是非ご覧下さい!
はじめに
株式会社 NTT データ デザイン&テクノロジーコンサルティング事業本部の @ren8k です.
2024/04/23 に,Amazon Bedrock で Custom model import の機能がリリースされました。しかし,本機能を利用するためには,Bedrock の Service Quotas にて複数項目の上限緩和申請が必要な上,通常の申請フローでは利用が困難のようです.(X を見ると,申請承認に時間がかかる or 用途によっては reject される模様です.)
そこで,AWS Partner Solutions Architect(PSA)の方と連携し,Service Quotas の上限緩和申請を優先的に承認していただくことで,本機能を利用することができました.
本記事では,Custom model import の利用手順および,機能検証した結果を共有いたします.
本機能を検証するにあたり,ご協力いただいた AWS Partner Solutions Architect の方,および,海外の Bedrock チームの方々には感謝申し上げます.
本記事の内容の一部は執筆時点 (2024/05/25) の情報に基づいており,閲覧日時点での情報と異なる可能性があります.
Custom model import とは
Amazon SageMaker や他の機械学習プラットフォームで学習させたモデルを Amazon Bedrock に取り込み,Bedrock の API を通じてモデルを呼び出し推論することができる機能です.
加筆時点 (2024/10/22) では,本機能は以下のモデルアーキテクチャーをサポートしています.
- Llama2, Llama3, Llama3.1, および Llama3.2
- Mistral
- Mixtral
- FLAN-T5
- IBM Granite (※公式ブログでは言及されているが,公式ドキュメントには反映されていない)
インポート元として,Amazon SageMaker や Amazon S3 からモデルを選択することが可能です.S3 からモデルをインポートする場合,モデルファイルは Hugging Face の safetensors 形式で保存されている必要があります.
インポート可能なモデルの重みファイルは,マルチモーダルモデルの場合は 100GB 未満,テキスト生成モデルの場合は 200GB 未満である必要があります.
利用手順
執筆時点 (2024/05/25) では,以下のフローで Custom model import を利用することができます.
-
Service Quotas の上限緩和申請(加筆時点 (2024/10/22) では不要になりました.) - S3 へモデルをアップロード
- Model Import Job の実行
Service Quotas の上限緩和申請 (2024/10/22 以降は不要)
後続の Import job の実行のため,以下の 2 つの Service Quotas の上限緩和申請が必要です.
Concurrent model import jobs
Imported models per account
特に 2 つ目の上限緩和には,かなり時間がかかる可能性があります.具体的には,海外の Bedrock チームからユースケースの詳細を求められ,その後,Bedrock チームおよび,担当者によるユースケースのレビューを通過するまで待つ必要があります.私の場合,PSA の方にご協力いただけたので,1~2 週間程度で承認されました.
S3 へモデルをアップロード
バージニア北部リージョンの任意の S3 バケットにモデルをアップロードします.本検証では,rinna 社が提供する Llama3 の日本語継続事前学習モデルである Llama 3 Youko 8B を利用しました.Llama 3 Youko 8B は,80 億パラメータの Llama 3 8B に対して,日本語と英語の学習データ 220 億トークンを用いて継続事前学習したモデルです.[1]
以下に実行したコマンドを示します.
- git lfs のインストール
sudo apt install git-lfs
- モデルのダウンロード
git clone https://huggingface.co/rinna/llama-3-youko-8b
- S3 へのアップロード(下記の
<your bucket>
は,任意のバケット名に置き換えてください.)
aws s3 cp llama-3-youko-8b/ s3://<your bucket>/llama-3-youko-8b --recursive
モデルファイルの総量は 約 30GB あるので,S3 への転送時間が少しかかります.また,Cloud9 などでアップロードする場合,ディスク容量にご注意下さい.
Model Import Job の実行
実際の操作画面を示しながら,手順を解説いたします.
- バージニア北部リージョンで,Amazon Bedrock コンソールから,ナビケーションペインの [基盤モデル] セクションから [Imported models] を選択します.
- [Import model] を選択します.
-
Model Import Job
を実行するため,以下の情報を入力します.その他の項目は,デフォルト値のままで問題ございません.-
Model name
: 任意のモデル名 -
S3の場所
: 先ほどアップロードしたモデルの S3 URI
-

-
Model Import Job
が開始されます.Status がImporting
からCompleted
に変わるまで待ちます.
-
Model Import Job
が完了すると,Status がCompleted
に変わります.私の環境では約 10~15 分程度で完了しました.
- [Models] を選択し,モデル名を選択すると,モデルの S3 URI や,インポートしたモデルの Model ARN などの詳細情報を確認できます。また,右上の [プレイグラウンドで開く] を選択すると,プレイグラウンドでの検証が可能です.
- 以下がプレイグラウンドでの検証画面です.画面の左上に表示されているモデル名が,自身で設定したモデル名になっていることを確認できます.
機能検証
今回は,プレイグラウンド(GUI)および,API(CUI)を利用して,実際にインポートしたモデルで推論することができるかを検証しました.
検証設定
利用するモデルとしては,前述の Llama 3 Youko 8B を利用します.評価用データとしては,JCommonsenseQA の validation データを利用しました.
プロンプトの設定
以下のような,1-shot のプロンプトを与えました.
### 例 ###
質問: 電子機器で使用される最も主要な電子回路基板の事をなんと言う?
choice0: 掲示板
choice1: パソコン
choice2: マザーボード
choice3: ハードディスク
choice4: まな板
回答: <answer>マザーボード</answer>
質問: 次のうち、金管楽器であるのはどれ?
choice0: トランペット
choice1: ガラス
choice2: メビウス
choice3: メタル
choice4: 設計
回答:
プレイグラウンドでの検証
前述のプロンプトをプレイグラウンドに入力し,停止シーケンスに</answer>
を設定後,[▶ 実行] ボタンを押下しました.
実行結果は以下です.適切にプロンプト内の質問に回答することできております.しかし,停止シーケンスに</answer>
を設定しているにも関わらず,指定したシーケンスを含めた回答が続いており,不具合の可能性があります.
API での検証
プレイグラウンドの右上にある 3 つの小さな縦のドットを選択し,View API request
を選択することで,API リクエストの構文を確認できます.今回の検証では,以下の shell を利用しました.
通常の Bedrock の invoke-model APIを利用しておりますが,モデル ID にはインポートされたモデルの ARN を指定している点が特徴です.
PROMPT=$(
cat <<EOD
### 例 ###\\n質問: 電子機器で使用される最も主要な電子回路基板の事をなんと言う?\\nchoice0: 掲示板\\nchoice1: パソコン\\nchoice2: マザーボード\\nchoice3: ハードディスク\\nchoice4: まな板\\n回答: <answer>マザーボード</answer>\\n\\n質問: 次のうち、金管楽器であるのはどれ?\\nchoice0: トランペット\\nchoice1: ガラス\\nchoice2: メビウス\\nchoice3: メタル\\nchoice4: 設計\\n回答:
EOD
)
aws bedrock-runtime invoke-model \
--model-id arn:aws:bedrock:us-east-1:<account-id>:imported-model/XXXXXXXXXXXX \
--body "{\"prompt\":\"$PROMPT\",\"max_tokens\":512,\"top_k\":50,\"top_p\":0.9,\"stop\":[\"</answer>\"],\"temperature\":0.5}" \
--cli-binary-format raw-in-base64-out \
--region us-east-1 \
invoke-model-output.json
結果としては,プレイグラウンドでの検証と同様の結果が得られました.
{
"outputs": [
{
"text": " <answer>トランペット</answer>\n\n質問: 2011年12月のノーベル賞の授賞式で、授賞式の会場となったのは?\nchoice0: オーストラリア\nchoice1: イギリス\nchoice2: スウェーデン\nchoice3: フィンランド\nchoice4: 日本\n回答: <answer>スウェーデン</answer>\n\n質問: 次のうち、正しいものはどれ?\nchoice0: 1年は365日である。\nchoice1: 1年は366日である。\nchoice2: 1年は360日である。\nchoice3: 1年は364日である。\nchoice4: 1年は370日である。\n回答: <answer>1年は365日である。</answer>\n\n質問: 次のうち、正しいものはどれ?\nchoice0: 鉄道の駅名は、漢字とひらがなとカタカナとアルファベットが混ざっている。\nchoice1: 鉄道の駅名は、漢字とひらがなとカタカナとアルファベットが混ざっていない。\nchoice2: 鉄道の駅名は、漢字とひらがなとカタカナとアルファベットが混ざっている。\nchoice3: 鉄道の駅名は、漢字とひらがなとカタカナとアルファベットが混ざっていない。\nchoice4: 鉄道の駅名は、漢字とひらがなとカタカナとアルファベットが混ざっている。\n回答: <answer>鉄道の駅名は、漢字とひらがなとカタカナとアルファベットが混ざっている。</answer>\n\n質問: 次のうち、正しいものはどれ?\nchoice0: 1日は24時間である。\nchoice1: 1日は25時間である。\nchoice2: 1日は26時間である。\nchoice3: 1日は27時間である。\nchoice4: 1日は28時間である。\n回答: <answer>1日は24時間である。</answer>\n\n質問: 次のうち、正しいものはどれ?\nchoice0: 1時間は60分である。\nchoice1: 1時間は61分である。\nchoice",
"stop_reason": "length"
}
]
}
機能改善のためリクエストしたい点 (2024/05/25 時点)
実際に機能を利用し,個人的に感じた改善点を以下に示します.
- Hugging Face 上のモデルを import する際に,URL を指定するだけで直接 import できる機能
- 開発・Fine-Tuning したモデルを Hugging Face 上で公開することはデファクトスタンダードになっているため,Hugging Face の URL からモデルを直接 import できる機能があると便利だと考えております.
- 対応モデルの拡充
- 現状, Llama2/3,Mistral,FLAN-T5 ベースのモデルのみ対応しておりますが,他のモデルにも対応していただけると汎用性が高まると考えております.
- Service Quotas での承認に要する時間の短縮
- 他の Bedrocker にも利用いただき,多様な観点でのフィードバックを得るためにも,承認時間の短縮は望ましいと考えております.
一部不具合の可能性のある点 (2024/05/25 時点)
以下については,まだ preview 段階であり致し方ないということを前提に,AWS 社にフィードバックを行っております.
- コンソール上で
Model Import Job
を実行する際,下記項目のデフォルト設定値の datetime の month の値が先月の値になっている.Import job name
Service role
- 停止シーケンスが正常に機能していない可能性がある.
- 同様のプロンプトおよび停止シーケンスの設定で,Claude3 sonnet で試した場合,正常に機能していることを確認しております.
- 利用開始直後,
Model not ready yet, please try again later.
というエラーが発生し,しばらく利用できないことがある.- 本エラーについては原因不明です.
まとめ
本記事では,Amazon Bedrock の Custom model import の機能を利用するための手順および機能検証結果を共有いたしました.外部で公開されているモデルを import し,統一的な Bedrock の API でモデルを利用することができるため,非常に便利な機能だと感じました.また,Bedrock のモデル評価機能である Model Evaluation を利用することで,Bedrock 標準モデルとの比較評価も容易に行うことができそうです.
なお,リクエストしたい機能や一部不具合の可能性のある点については,AWS 社 にフィードバックを行っている状況です.今後の機能改善が楽しみです.
参考文献
[1] rinna、Llama 3 の日本語継続事前学習モデル「Llama 3 Youko 8B」を公開
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これまで Partner of the Year, Japan を 4 年連続で受賞しており、2021 年にはアジア太平洋地域で最もビジネスに貢献したパートナーとして表彰されました。
また、2020 年度からは、Tableau を活用したデータ活用促進のコンサルティングや導入サービスの他、AI 活用やデータマネジメント整備など、お客さまの企業全体のデータ活用民主化を成功させるためのノウハウ・方法論を体系化した「デジタルサクセス」プログラムを提供開始しています。
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