GitHubは2022年からGitHub Acceleratorというプログラムを実施しています。
将来有望そうなプロジェクトに対して支援を行う試みです。
第一回の発表は2023年4月に行われ、20プロジェクトにそれぞれ2万ドルの支援が行われました。
こちらAIをテーマとした第二回の申し込みが2024/02/13から2024/03/05まで行われていたのですが、その発表が2024/05/23にありました。
今回は11プロジェクトが受賞しました。
例によってこの受賞記事を紹介している日本語記事が何故か一切存在しないので、ここで紹介します。
2024 GitHub Accelerator: Meet the 11 projects shaping open source AI
unsloth AI
LLMのトレーニングを性能を下げずに高速化・省力化し、さらに初心者にも使いやすくするそうです。
GitHubでは速度が2~4倍、メモリ使用量が43%~73%削減というベンチマークが乗っていますが、公式サイトではChatGPTのトレーニングが30日から24時間になったとさらに景気のいいことが書いてあります。
日本語参考記事:Unsloth + TRL でLLMファインチューニングを2倍速くする
Giskard
最近よく言われる責任あるAI。
それを保つために、透明性と説明責任をもたらすAIモデルのテストフレームワークです。
AIのテストってどうやるんだ?ってかんじなのですが、ドキュメントによるとバイアスやハルシネーション、プロンプトインジェクションなどの脆弱性や問題を自動検出してくれるそうです。
ChatGPTもGeminiもなんか私が質問するとすぐ出鱈目を返して来やがるんだけど、みんなこれを使ってくれればいいのにね。
日本語参考記事:MLflowでGiskardを使ってLLMを評価しよう!
A-Frame
AR/VRコンテンツをWebブラウザから容易に使えるようにするフレームワークです。
簡単なサンプル程度であればわずか数行で記述できるなど単体でも素晴らしいフレームワークです。
10年前から存在するアプリなので今さらな気はするのですが、どうやら現在は3D Gaussian SplattingなどAIとの統合を目指しているということで選ばれたようです。
日本語参考記事:新しいWebVRフレームワークA-Frame入門
Nav2
ROS Navigation Stackの後継であり、100社以上で使用されている世界で最も普及した自律走行搬送ロボットナビゲーションシステムです。
複数のセンサから取得した多くのデータを統合し、障害物を避けて最適な経路を進んでくれます。
残念ながらネコ型ロボットには使われていないみたい。
日本語参考記事:Navigation2を使ってロボットを動的な目的地に向かわせる
OpenWebUI
LLMをローカルで実行するWebインターフェイスです。
多くのモデルを完全オフラインで動作させることができ、プライバシーやセキュリティを保つことができます。
さすがにローカルでは無理なGPT-4とかは結局ネット経由になってしまいますが、まあ仕方のないところでしょう。
日本語参考記事:Llama3もGPT-4も使える!オープンソースのChatGPT風アプリ「Open WebUI」完全ガイド
LLMware.ai
企業向けAIにRAGを安全に導入することができるツールセットです。
正直よくわからんのだけど、特定のユースケースに応じた専用のモデルを容易に作れるとかそんなかんじみたい。
日本語参考記事:見当たらず
LangDrive
こちらもLLMのトレーニングをサポートするツールです。
コマンドラインでCSVやYAMLから取り込んだりできるようです。
なんかドキュメントが404だらけで、現時点ではまだちょっと試してみようという気にはなれないかんじですね。
日本語参考記事:見当たらず
HackingBuddyGPT
セキュリティ研究者やハッカーがLLMを用いて新たな攻撃手法を発見したら報奨金を払うという仕組みです。
元々はAIをハッキングに使えるかという研究プロジェクトとして始まったみたいです。
ハッキングはともかく、ランサムウェアは実際にAIで作成できてしまいましたね。
なお、脆弱性のあるマシンが用意されているので、攻撃するならそちらに行いましょう。
日本語参考記事:見当たらず
Web-Check
Webサイトで使用されているテクノロジーや各種情報を分析してくれるオールインワンのOSINTツール。
たとえばQiitaはDKIMやDMARCに対応していないようです。
URLを入力するだけで様々な情報がだばばーと出てくるのはたいへん気持ちがいいですね。
ただ、これがどうAIなのかはよくわからない。
受賞の紹介文にはAIを活用したとか書いてあるんだけど、WebCheckのサイトのほうには特に何も書いてないんですよね。
日本語参考記事:見当たらず
marimo
Pythonでインタラクティブ・リアクティブなWebアプリを作成できるPython開発環境です。
リアクティブというのはつまり、Excelみたいに一か所を変更したら関係するところもすべて自動更新されるということです。
Jupyter notebookからのコンバートも対応しているので導入しやすいのではないでしょうか。
AIはどこに関係するのだという話ですが、AIや機械学習向け言語であるPythonの開発ツールだからというのが授賞理由みたいで少々強引な気がします。
日本語参考記事:見当たらず
Talkd.ai
俺たちは雰囲気でRAGをやっているプログラマーにむけた、RAGの導入を簡易化するアプリです。
質問と回答の並んだCSVを作ってコマンドを打てば、なんか勝手に埋め込んでくれるみたいです。
LLMware.aiとの違いはよくわからない。
日本語参考記事:見当たらず
感想
10年近く続いていて長年の実用経歴があるプロジェクトから、まだ100commitもないContributorもふたりしかいない超小規模なものまで様々なプロジェクトが受賞しています。
検索でも全然引っかからないようなマイナーなものも受賞しており、将来性を買われているのでしょう。
受賞者は有形無形合わせてなんと総額40万ドル相当の支援を受け取り、さらなる発展や収益化といった次なる目標を目指すこととなります。
具体的にはGitHub Sponsorsから資金4万ドルと、Microsoftの様々なサービス(Azure、OpenAI、Copilot、ベンチャーファンドM12など)を受ける権利35万ドル相当のサポートです。
これだけあれば一年は使い倒せますね。
日頃GitHubのお世話になっている人は、これを機にOSSのContributeに手を出してみてはどうでしょう。
次回はあなたもこの恩恵に浴することができるかもしれませんよ。
今回はジャンルがAI縛りということで、個人的には正直ぴんと来ないというかよくわからないプロジェクトが多くありました。
きっと詳しい人がプルリクとかしてくれるはず。