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フルスタック投資家への道:自作PC、その性能を問う

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自作PCの適切な用途は何か?ベンチマークを踏まえて考える

はじめに

Pythonを用いた株式投資の利益を元手に、白い自作PCを組み上げる企画の第4回、性能評価編です。

これまでの記事では、コンセプト策定からパーツ選定、コスト削減、そしてOSインストール用USBの作成と、組み立てまで、その道のりを共有してきました。
しかし、自作PCは組んで終わりではありません。

果たして、このPCは投資利益を投じるに見合うだけの価値があったのか? 筆者のメイン機であるMacBook Pro (M4 Pro) と比べて、どれほどの実力を持っているのか?

今回は、各種ベンチマークソフトを用いて、その性能を評価します。

IMG_3897.gif

図1: 自作PC

IMG_2247 2.jpg
図2: Macbook Pro (M4)

1. 総合性能評価 (PassMark)

まずは、総合ベンチマークソフト「PassMark」を使い、このPCが世の中のPC全体の中でどの程度の位置にいるのか、客観的な「現在地」を確認しました。

総合スコア:8056 (上位26%)

結果は8056。これは、PassMarkに登録されている全世界のPCの中で、**上位26%**に入る性能であることを意味します。13万円弱の投資で、世界中のPCの上位1/4に入るマシンが手に入ったことになります。

各パーツの実力

表1: PassMark各コンポーネントスコア

コンポーネント スコア パーセンタイル 評価
CPU Mark 32149 82nd 非常に高いCPU性能。テストされた全CPUの中で上位18%に位置します。
Disk Mark 45017 90th 非常に高速なストレージ性能。上位10%に入る結果です。
Memory Mark 3374 79th DDR5-6400メモリが良好な性能を発揮しています。
2D Graphics Mark 1010 79th 2D描画性能は高く、一般的なデスクトップ操作には十分です。
3D Graphics Mark 6844 40th 内蔵GPUのため3D性能は全PCの中で下位60%です。

結果と考察

CPUとディスク性能が特に高く、システム全体を牽引しています。総合的には、13万円弱の構成で、世界中のPCの上位1/4に入る性能を持つことが確認できました。

2. CPU性能直接対決 (Cinebench 2024)

次に、CPUの純粋な計算能力を測る**Cinebench 2024で、メイン機であるMacBook Pro (M4 Pro)**との直接対決を行いました。

自作PC MacBook Pro
CPU AMD Ryzen 7 8700G Apple M4 Pro
コア/スレッド 8コア / 16スレッド 12コア / 12スレッド
Multi Core (pts) 1035 1351
Single Core (pts) 107 173
MPレシオ 9.65x 7.81x
価格(約) 13万円 32万円
Multi / 価格 (1万円あたり) 79.6 42.2
Single / 価格 (1万円あたり) 8.2 5.4

表2: Cinebench 2024 CPU性能比較

結果と考察

Cinebench 2024のスコアを分析すると、両CPUの特性とコストパフォーマンスが明確になります。

  • 1. 数値性能の直接比較
    まず純粋なスコアを見ると、Apple M4 ProがAMD Ryzen 7 8700Gを両方のテストで上回りました。

    • Multi Core性能: M4 Proが約30.5%上回るスコアを示しました。
    • Single Core性能: M4 Proが約61.7%も上回る結果となりました。
  • 2. アーキテクチャから見る得意な用途
    この性能差の背景には、公式に発表されている両者のアーキテクチャ(設計思想)の違いがあります。

    • Ryzen 7 8700G (9.65x): このCPUは8つの均質な高性能コアで16スレッドを同時に処理する構成となっています。MPレシオが物理コア数(8)を上回る9.65xという数値は、マルチスレッド処理において高い効率を発揮している客観的な証拠です。多くのスレッドを並列で動かす能力は、株の取引Botのように、24時間多数の銘柄データを処理し、バックテストを回し続けるようなサーバー用途で高い効率を発揮することが期待できます。

      Ryzen7 8700G 
      SMTとは

    • Apple M4 Pro (7.81x): 高性能コアと高効率コアを組み合わせたハイブリッドアーキテクチャを採用しています。Single Coreスコアが極めて高いのは、単一のタスクに高性能コアが集中するためです。この高いシングルコア性能は、コードのコンパイルやUIの描画など、ユーザーの操作に対する応答性(サクサク感)に直結します。そのため、インタラクティブな研究開発のように、思考を止めずにデータの可視化やコーディングを繰り返す場面で、その真価を発揮する設計と言えます。

      新しいMacBook Proと「コア」の違いと基礎知識

      マルチスレッド処理の優位性について
      Ryzen 7 8700Gは8コア16スレッドの構成で、マルチスレッド処理において高い効率を発揮します。これにより以下の利点があります:

      • スループット向上: CPUのアイドル時間を削減し、全体的な処理能力を最大化
      • リソース最適化: 演算ユニットやキャッシュなどのCPUリソースを効率的に活用
      • 並列処理強化: データベース処理、バックテスト、複数銘柄の同時監視など、マルチスレッド処理が重要なタスクで特に威力を発揮

      特に24時間稼働するサーバー用途では、複数のタスクを同時に処理する必要があるため、高い並列処理能力が大きなアドバンテージとなります。

      Apple M4 ProのPコア・Eコア使い分けの優位性について
      Apple M4 Proは**パフォーマンスコア(Pコア)効率コア(Eコア)**の2種類のCPUコアを組み合わせるハイブリッドアーキテクチャを採用しています:

      Pコア(パフォーマンスコア)の特徴:**

      • 高性能処理: 動画編集、3Dレンダリング、ゲーム開発など、計算負荷の高いタスクを高速処理
      • 即応性: ユーザーの直接操作(ウィンドウドラッグ、スムーズスクロール)に即座に反応
      • インタラクティブ処理: コードのコンパイル、UI描画など、リアルタイム性が重要な作業に最適

      Eコア(効率コア)の特徴:**

      • 省電力設計: ウェブ閲覧、メール処理、文書作成など軽量タスクを低消費電力で処理
      • バックグラウンド処理: Spotlightインデックス作成、メール自動受信など裏方作業を担当
      • バッテリー延長: 長時間のバッテリー駆動を実現

      macOSのQoS(Quality of Service)スケジューリング:**
      macOSは高度なスケジューリング機構により、タスクの優先度に応じてPコアとEコアに動的に割り当てます。これにより、高負荷タスクはPコアで高速処理、軽量タスクはEコアで省電力処理され、全体の効率と応答性が最適化されます。

  • 3. コストパフォーマンス
    性能はM4 Proが優位ですが、費用あたりの性能スコアは逆転します。Multi Core、Single Coreともに、Ryzen 7 8700Gを搭載した自作PCがM4 Proを大幅に上回っています。この事実から、価格あたりの性能、いわゆるコストパフォーマンスにおいては、自作PCが優れていると言えるでしょう。

3. 実用性能評価(PostgreSQLへの銘柄データロード処理)

実際の開発業務における性能を評価するため、毎日実行しているPythonスクリプトの実行時間を計測しました。

試したコードは、
東証に上場されている約4000銘柄の価格データをPostgre SQL (AWS)に毎日差分更新してくシステムです。
テクニカル・財務指標の計算は当日だけのデータのみでは、計算ができないため、1-2年分の過去の巨大データを扱うコードです。見かけ以上にCPUとメモリ負荷が高く、保守性は低いです😅

図3: 試したコードのパイプラインの概要

表3: 処理速度

マシン 実行時間(分)
自作PC (Ryzen 7 8700G) 39.27
MacBook Pro (M4 Pro) 42.11

結果と考察

Cinebenchの純粋なCPU計算力テストではM4 Proが圧勝でしたが、この実用テストでは、意外にも自作PCが若干Macを上回る結果となりました。

この結果を単一の要因で説明するのは難しいですが、合成ベンチマークでは見えてこない、いくつかの複合的な要因が考えられます。

考えられる要因の一つは、長時間の高負荷におけるパフォーマンスの安定性です。約40分という長時間の処理では、CPUの冷却性能が重要になります。デスクトップPCである自作機は、ノートPCであるMacBook Proに比べて冷却に余裕があるため、熱による性能低下が起きにくく、安定して性能を発揮し続けられた可能性があります。

また、OSやPythonのライブラリが、それぞれのハードウェア(x86系とARM系)でどのように最適化されているか、といったソフトウェア側の要因も、こうした僅かな差に影響を与えたのかもしれません。

いずれにせよ、この結果は、合成ベンチマークのスコアだけでは測れない実用性能の重要性を示すものであり、自作PCがBotサーバーという役割に適していることを示唆する興味深いデータです。

なお、ここでは、一回の実測値しか示していませんが、実行する日によっても多少のばらつきはあると思われます。

4. 結論:Bot用PCと研究用Macという最適な役割分担

今回の検証結果を踏まえて、自作PCとMacの使い分けが有効だと思われました。

  • 自作PC → Botサーバー兼Windows開発・運用機
    圧倒的なコストパフォーマンスと、実用上十分な並列処理能力を活かし、24時間市場を監視するBotサーバーを主軸としつつ、普段使いでもサクサク動く性能を持つ。Macで開発したコードを本番環境で動かす前の最終調整や、Windowsネイティブの開発・運用機としても活躍する、万能な一台。

  • MacBook Pro → 研究開発ステーション
    やはり、分析やコーディングで試行錯誤するときのサクサク感は譲れない。高いシングルコア性能を活かして、頭を使うメインの作業はこちらに任せるのがよさそう。さらに、コーディングとは関係ないが、Final Cut Proを久しぶりに使ったら、ものすごくヌルヌルサクサク動いた。画像・動画の処理にはやっぱりMacが優れている気がする。

5. まとめ

  • 総合性能: 自作PCは、特にCPUとディスク性能に優れた、**全体の上位26%**に入る高パフォーマンスなマシンである。
  • CPU性能: 純粋な計算能力ではApple M4 Proが優位だが、価格あたりの性能スコアを比較すると、自作PCのコストパフォーマンスは極めて高い。
  • 最適な役割分担: ベンチマーク結果から、自作PCはBotサーバー、MacBook Proは分析と試行錯誤のメイン機という、それぞれの得意分野を活かした使い分けが見えてきた。

今後は、この役割分担に基づき、それぞれのマシンを投資活動に最大限活用していきます。

機械学習でRyzen 8700Gの内蔵GPUとMacのメタルGPUどっちを使うと速いのかなど、まだまだ、検証すべきところが多々ありますが、その辺はおいおい。

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