【Z変換の基本公式】ディジタル信号処理における基本シーケンスのZ変換まとめ
ディジタル信号処理(DSP)では、Z変換が重要な役割を果たします。本記事では、よく使われる基本シーケンスのZ変換と、その導出に関連する数式を紹介します。
基本シーケンスのZ変換一覧
以下は、ディジタル信号の基本シーケンスとそのZ変換です。ここで、シーケンスは一般的に ( n ) として表され、Z変換の結果は ( z ) の関数として示されます。
-
インパルス関数:
[
\delta[n] \leftrightarrow 1
]
インパルス関数は、Z変換すると常に1になります。 -
遅延インパルス関数:
[
\delta[n - q] \leftrightarrow \frac{1}{z^q}, \quad q = 1, 2, \ldots
]
( \delta[n - q] ) は ( q ) サンプル遅延したインパルスであり、そのZ変換は ( z ) の負の冪で表されます。 -
単位ステップ関数:
[
u[n] \leftrightarrow \frac{z}{z - 1}
]
単位ステップ関数 ( u[n] ) のZ変換は、特性方程式 ( \frac{z}{z-1} ) で表されます。 -
単位ステップ関数の和:
[
u[n] + u[n - q] \leftrightarrow \frac{z^q - 1}{z^{q - 1}(z - 1)}, \quad q = 1, 2, \ldots
]
2つの単位ステップ関数の和のZ変換は、少し複雑な形になります。 -
指数重み付き単位ステップ関数:
[
a^n u[n] \leftrightarrow \frac{z}{z - a}, \quad a \text{ は実数または複素数}
]
係数 ( a ) で重み付けされた指数関数シーケンスのZ変換です。 -
** ( n ) 倍の単位ステップ関数:**
[
n u[n] \leftrightarrow \frac{z^2}{(z - 1)^2}
]
時間領域での係数 ( n ) をかけると、Z変換は2次の分数形になります。 -
** ( n + 1 ) 倍の単位ステップ関数:**
[
(n + 1) u[n] \leftrightarrow \frac{z}{(z - 1)^2}
]
こちらも ( n ) 倍の場合と似た形になりますが、分子と分母の次数が異なります。 -
コサイン変調シーケンス:
[
(\cos \Omega n) u[n] \leftrightarrow \frac{z^2 - (\cos \Omega) z}{z^2 - (2 \cos \Omega) z + 1}
]
コサイン変調されたシーケンスのZ変換です。 -
サイン変調シーケンス:
[
(\sin \Omega n) u[n] \leftrightarrow \frac{z^2 - (\sin \Omega) z}{z^2 - (2 \cos \Omega) z + 1}
]
サイン変調されたシーケンスのZ変換です。 -
指数重み付きコサインシーケンス:
[
a^n (\cos \Omega n) u[n] \leftrightarrow \frac{z^2 - (a \cos \Omega) z}{z^2 - (2 a \cos \Omega) z + a^2}
]
係数 ( a ) で重み付けされたコサインシーケンスのZ変換。 -
指数重み付きサインシーケンス:
[
a^n (\sin \Omega n) u[n] \leftrightarrow \frac{(a \sin \Omega) z}{z^2 - (2 a \cos \Omega) z + a^2}
]
同様に、指数重み付きサインシーケンスのZ変換です。
基本シーケンスのシステム応答例
1. 1次システムのZ変換特性
以下は、システムの出力 ( Y(z) ) を入力 ( X(z) ) およびシステム関数 ( H(z) ) で表した例です。
- システムの応答:
[
Y(z) = H(z) \cdot X(z), \quad H(z) = \frac{bz}{z + a}
]
2. システムのフィードバック特性
システム関数 ( H(z) ) は以下のように求まります。
[
H(z) = \frac{1 - a}{1 - az^{-1}}
]
3. 平均化フィルタの特性
平均化フィルタのシステム関数は次のように表されます。
- 平均化フィルタのシステム関数:
[
H(z) = \frac{1}{M+1} \sum_{m=0}^{M} z^{-m}
]
4. システムの遅延特性
1サンプルの遅延特性は次のように示されます。
- 遅延特性:
[
H(z) = 1 - z^{-1}
]
5. 共振器の条件
システムがレゾネータになる条件は以下の不等式で表されます。
- 共振器の条件:
[
a_1^2 + 4a_2 < 0
]
システム関数 ( H(z) ) は次のように定義されます。
[
H(z) = \frac{1 - a_1z^{-1} - a_2}{1 - a_1z^{-1} - a_2z^{-2}}
]
おわりに
本記事では、基本的なディジタルシーケンスのZ変換といくつかのシステム応答の例を紹介しました。Z変換の公式をしっかりと理解することで、ディジタル信号処理におけるシステム解析やフィルタ設計が容易になります。