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量子コンピュータが内部で何をしているかを可視化するアプリを、作りたかった

Last updated at Posted at 2025-12-24

量子テレポーテーションを可視化するWebアプリ「Qubridge」を開発中

はじめに

IBM Quantum実機上で量子テレポーテーション回路がどのように実行されるかを可視化するWebアプリケーション「Qubridge」を開発しています。

本記事では、開発中のアプリケーションのコンセプトと、L1(量子状態設計)からL4(トランスパイル)までの機能を紹介します。

注意: 本アプリは開発中です。L5(タイムライン・パルススケジュール)と結果テーブルは現在実装中です。

Qubridgeとは

Qubridgeは、量子テレポーテーション回路を題材に、IBM Quantum実機内部での挙動を段階的に可視化するツールです。

なぜ「可視化」が重要か

量子コンピュータで回路を実行する際、実際には以下のようなプロセスが発生します:

  1. 論理回路物理回路への変換(トランスパイル)
  2. 物理量子ビットへのマッピング
  3. バックエンドのエラー特性を考慮した最適化
  4. 実際のパルス制御信号への変換

Qubridgeは、これらの「見えない」プロセスを可視化し、量子コンピュータの内部動作を理解するための教育ツールとして設計しています。

ストーリーライン:L1からL4へ

Qubridgeでは、量子テレポーテーションの実行プロセスを5つのレベル(L1〜L5)に分けて可視化します。

L1: 量子状態設計 - 「何をテレポートするか」

Screenshot from 2025-12-24 16-46-51.png

最初のステップでは、テレポートしたい量子状態を設計します。

  • θ(極角): Z軸からの傾き
  • φ(方位角): XY平面上の回転

ブロッホ球上でスライダーを動かすことで、任意の単一量子ビット状態を設定できます。

|ψ⟩ = cos(θ/2)|0⟩ + e^(iφ)sin(θ/2)|1⟩

ポイント: ここで設定した状態が、テレポーテーション回路を通じてBobの量子ビットに転送されます。


L2: カップリングマップ - 「どの量子ビットが繋がっているか」

Screenshot from 2025-12-24 16-48-18.png

IBM Quantum実機では、すべての量子ビット間で直接2量子ビットゲートを実行できるわけではありません。

L2では、選択したバックエンドのカップリングマップを可視化します。

表示内容

  • 全体マップ: バックエンドの量子ビット接続構造
  • フィルタマップ: 2量子ビットゲートエラー率が閾値以下のペアのみ表示

エラーフィルタリング

2量子ビットゲート(ECR/CZゲート)のエラー率に基づいてフィルタリングします。

バックエンド 量子ビット数 典型的なエラー率範囲
ibm_torino 133 qubits 0.2% 〜 5%
ibm_fez 156 qubits 0.2% 〜 5%
ibm_marrakesh 156 qubits 0.2% 〜 5%

ポイント: エラー率の低いペアを選ぶことで、テレポーテーションの成功率を高められます。


L3: 量子ビット選択 - 「どの物理量子ビットを使うか」

Screenshot from 2025-12-24 16-49-01.png

量子テレポーテーションには3つの量子ビットが必要です:

役割 説明
Alice (Q0) テレポートする状態を持つ量子ビット
Entangled (Q1) ベル対の一方、Aliceと相互作用
Bob (Q2) ベル対の他方、状態を受け取る

L3では、L2でフィルタした「良質な」量子ビットペアから、線形に接続された3量子ビットを選択します。

選択条件

  • Alice-Entangled間に接続がある
  • Entangled-Bob間に接続がある
  • 両方のペアのエラー率が閾値以下

ポイント: Qiskitコンパイラの自動選択と、ユーザーの手動選択を比較できます。


L4: トランスパイル - 「論理回路から物理回路へ」

Screenshot from 2025-12-24 16-49-55.png

トランスパイルは、抽象的な量子回路を実機で実行可能な形式に変換するプロセスです。

オリジナル回路(論理回路)

トランスパイル後(物理回路)

トランスパイルでは以下の変換が行われます:

  1. ゲート分解: Hゲート、CNOTなどを基底ゲート(SX, RZ, ECR)に分解
  2. 量子ビットマッピング: 論理量子ビット → 選択した物理量子ビット
  3. ルーティング: 直接接続がない場合、SWAPゲートを挿入
  4. 最適化: 冗長なゲートの削除

ポイント: 同じ論理回路でも、選択する物理量子ビットによってトランスパイル結果が変わります。


L5以降(開発中)

L5: タイムライン・パルススケジュール

Screenshot from 2025-12-24 16-51-17.png

現在実装中

  • Timeline: ゲートの時間配置を可視化
  • Scheduled Circuit: delay命令を含むスケジュール済み回路

Note: Qiskit SDK v1.3.0以降、qiskit.pulseモジュールは非推奨となり、v2.0.0で削除予定です。パルスレベル制御に代わり、Fractional Gatesの使用が推奨されています。

結果テーブル(開発中)

Screenshot from 2025-12-24 16-52-25.png

シミュレーションまたは実機実行の結果を表示するテーブルも実装予定です。


まとめ

Qubridgeは、量子テレポーテーションを題材に、IBM Quantum実機の内部動作を可視化するツールです。

現在L4まで実装が完了しており、以下の流れで量子回路の実行プロセスを追体験できます:

  1. L1: テレポートする量子状態を設計
  2. L2: バックエンドのカップリングマップを確認
  3. L3: エラー率の低い物理量子ビットを選択
  4. L4: トランスパイル結果を確認

L5(タイムライン)と結果テーブルは引き続き開発中です。進捗があれば更新記事を投稿予定です。


参考リンク


開発状況:
2025年12月時点、L1〜L4完成、L5・結果テーブル開発中
Webappとして公開したいのは山々です
完成していないので、今回は触りだけの紹介になって申し訳ありません

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