私の所属する会社では、個人に対して「ミッション(目標)」が共有され、それを達成するための行動計画を立てることが求められます。
ただ、実際に運用してみるとこんな声をよく聞きます。
- 「ミッションはわかるけど、行動計画がうまく書けない」
- 「『行動』ってどの粒度で書けばいいの?」
- 「『いつまでに何をする?』まで書かないとダメ?」
私自身、過去に立てた行動計画を振り返ってみると、なんとなくで立てた計画は早々に計画倒れし、期末に急いで対応することが多かった気がします。
そもそもミッションに書いてあることをなぞるだけになってしまっていたり、計画の体をなしていなかったり……。
その結果、成果とはいえない中途半端なものを上司に提出し、「形だけはやりました」というような報告をしてしまっていました。
マネージャーになって半年が経ち、チームを良くするためにメンバーに期待することをミッションとして託す機会も増えました。
メンバーが立てた行動計画を見て、過去の私と同じように悩む人も多いと感じたので、今回は「行動計画を立てるコツ」という点について整理します。
そもそもミッションってなんなのか
多くの会社では、Mission / Vision / Value(MVV)を定めています。
これは単なる会社のスローガンではなく、
「この会社は、どこへ向かい、何を大切にして進むのか」
という会社の方向性や判断基準を示すものです。
ざっくり言うと、
- Mission:なぜこの会社は存在するのか(存在意義)
- Vision:これからどこを目指すのか(到達点)
- Value:判断や行動の拠り所(大切にする価値観)
これらは、会社を支える理念・軸のようなものです。
個人のミッションは「会社の方向性を個人に落としたもの」
会社が掲げるミッションやビジョンは、そのままだとどうしても抽象度が高くなります。
そこで多くの会社では、会社の方向性を個人の役割・立場に合わせて具体化したものとして「個人のミッション」を設定します。
つまり、
会社のミッション・ビジョン
↓
チームとしてのミッション
↓
個人が担うミッション
という関係になっています。
個人ミッションは、
「この人は、この会社・このチームの中でどんな価値を発揮することを期待されているか」
を表したものです。
行動計画が書けなくなる理由
行動計画で詰まる理由は、だいたい次のどれかです。
- ミッションが抽象的すぎると感じる
- 「行動」と「成果」の違いが曖昧
- 期限をどう扱えばいいかわからない
特に最後の「期限」の扱いは、迷う人が多いポイントなので先に説明します。
行動計画の本質は「再現性」
行動計画の目的は、
「この行動をすれば、ミッションに近づく」 という再現可能なアクションを定義することです。
そのために大事なのは以下の3点です。
- 具体的であること
- 自分がコントロールできること
- 振り返りができること
この観点で見ると、「期限」は必須ではないケースもあります。
「いつまでに何をする?」は必要?
結論から言うと、
期限は必須ではないが、入れると実行率が上がる
です。ただし、すべての行動に期限をつける必要はありません。
期限が必要な行動・不要な行動
判断のポイントはシンプルです。
その行動は「完了するもの」か?「継続するもの」か?
完了する行動(期限ありがおすすめ)
- ドキュメントを作る
- ルールを整理する
- 改善案をまとめる
例えば、「チームの新規参画者向けのドキュメントを作成する」というミッションが託されたとします。
最終的なゴールはドキュメントを作成することなので、ゴールを達成しないといけない期日までにどのようなスケジュールで取り組むかを考えればよいです。
例:期末(3月)までに新規参画者向けドキュメントを完成させるための行動計画
- 11月:既存のドキュメントを集めて、新規参画者向けに必要な情報をピックアップする
- 12月:集めた情報をもとに資料化し、叩き台を作る
- 1月:叩き台をもとにチームのレビューを受ける
- 2月:レビューを反映し、ブラッシュアップする
- 3月:新規参画者向けのドキュメントを完成させ、上司に報告する
完了しないと意味がない行動は、期限を入れることで進捗と振り返りがしやすくなります。
「この時期にここまでできていれば進捗としては問題ない」というラインを先に決めてしまうと、中間でのリカバリや上司への相談もしやすくなります。
継続する行動(期限なしでもOK)
- 毎週のレビュー改善
- 定期的なチェック
- 習慣化したい行動
例:
- 週1回、レビュー時に必ず1つ改善提案をコメントする
このタイプの行動は、期限よりも頻度のほうが重要です。
行動計画をうまく立てる3つのコツ
1. ミッションを「動詞+対象」に分解する
共有されたミッションが抽象的だと感じたら、より具体まで落として考えてみましょう。
例:ミッション「フロントエンドの品質を向上させる」
一見わかりやすいのですが、実は行動が見えていない言葉です。「品質って何?」「何をどうしたら向上していると言える?」をはっきりさせるために分解して考えてみましょう。
-
対象を絞る
今自分がフロントエンドの何の品質に課題を持っているのか、対象を明らかにします。「テスト?」「レビュー?」「設計?」「ルール?」などに分解してみます。 -
そこに動詞をつける
- テストを書く/増やす
- レビューをする/改善する
- 設計を見直す/整理する
最終的に「テストケースを追加する」「レビュー時にチェック項目を使う」といった、明日からやれる行動まで落とし込めていたら良い状態です。
2. 自分がコントロールできる範囲に落とす
チームのスキルアップを求められる際にやりがちなのが、自分1人ではどうにもならないことを行動として書いてしまうことです。
例えば、「チームのレビュー精度を上げる」という行動計画。これでは「他人の行動の結果」が含まれてしまっています。行動計画はあくまで「自分自身がどう動くか」の計画です。
- × チームのレビュー精度を上げる
- ○ チームのレビュー精度を上げるために、レビュー観点をドキュメント化して共有する
- ○ チームのレビュー精度を上げるために、レビューコメントの振り返り会を開く
3. 定期的に振り返れる粒度にする
「できた/できてない」が判断できるサイズ感が重要です。粒度が大きいと、振り返りの時にこうなりがちです。
- なんとなく頑張った気がする(けど、具体的に何をしたかは思い出せない)
- 途中の過程が見えないため、どこで詰まっているのか原因がわからない
- 最終目標が達成できなかったら、過程もすべてなかったことになる
- 次に何をすればいいのかわからない
定期的に振り返り、進捗を確認するためにも、期限や頻度を書いておくのがおすすめです。
- 週に1度、レビュー時に改善提案をする
- 毎週金曜日に、直近のプルリクエスト(PR)の改善点をメモする
- 10月までにヒアリング、11月までに構成案、12月に執筆……
行動計画は完璧さより「調整できること」が大事
行動計画は最初から完璧である必要はありません。
重要なのは、定期的に振り返って、「この行動がゴールに向けて効いているか?」を調整できることです。
振り返れる粒度で書いておくと、「頻度を変える」「やり方を変える」「別の行動に置き換える」などの改善がしやすくなり、「使い続けられる計画」になります。
まとめ:行動計画に唯一の正解はない
大事なのはその行動が
「ミッション達成に近づくための一歩になっているのか」
「振り返り、調整できる形になっているのか」
です。
行動計画が機能していないと感じたら、
- 具体的になっているかな?対象は絞れているかな?
- もっと小さくできるかな?
- 1〜2週間後に振り返れるかな?
を自分に問いかけてみてください。
行動計画を「書いて終わり」にするのではなく、自分なりに「使い続けられるもの」に育てていきましょう!