「実務未経験からWeb系エンジニアにジョブチェンジする方法」に関しては、最近かなり広く知見が共有されるようになってきましたが、「Web系エンジニアにジョブチェンジした後の転職戦略」に関してはまだまだ有用な情報が少ないという印象です。
学生時代からプログラミング経験があり、レベルの高い有名Web系企業さんに新卒で就職できた方たちは別として、キャリアの途中でWeb系エンジニアにジョブチェンジされた方たちが「エンジニアとして爆速で成長していく」「早い段階でガッツリ稼げるようになる」ためには、「適切なタイミングで適切な環境に移動する」ことが必須となります。
さらにその「移動頻度」に関しては、皆さんの考えている「数年ごとに転職」程度では大抵の場合「少なすぎ」であり、特に最初の会社に関しては「1年程度で辞めることが望ましい」というのが私の見解になります。
以下、最初の会社を1年程度で辞めた方がよい理由に関して簡単にご説明したいと思います。
理由その1:転職した方が給与が大幅に高くなる可能性が高い
最初の会社からの転職に限りませんが、1つの会社の中で給与を高くしていくのは非常に時間が必要になるのに対して、転職時には給与を100万円単位で一気に上げたりすることが可能です。
特に、業務未経験からジョブチェンジしてエンジニアになった方の場合、大抵の場合は当初の給与が相当低く抑えられていると思いますし、1年間一生懸命働いたとしても給与が大幅にアップしているというケースというのは滅多に無いと思います。
しかし、モダンな企業さんで1年ほどがっつりコードを書いて経験が蓄積されていくと、入社してから1年程度経過した頃には、その方のエンジニアとしての市場価値は未経験の時と比較して段違いにアップしていますので、実際の市場価値とその会社さんで貰っている給与との差額が非常に大きくなるという現象が発生します。
この時点で、会社側が「入社時点での市場価値」ではなく「その人の現在の市場価値」を基準にして給与を変更してくれることが理想的なのですが、残念ながら大抵の場合は入社時点の給与が強力な「アンカリング効果」を発揮してしまうので、その人の実力がどんなに伸びていても、1つの会社内での大幅な給与アップは難しいというのが実状です。
(※アンカリング効果とは「先に与えられた情報や数字によって判断が歪められてしまう(最初に与えられた数字が基準値になってしまう)心理現象のこと」です)
よって、その時点での自分の市場価値をしっかり反映した状態で給与を貰えるように、転職によってアンカーをリセットするのが賢い選択である、ということになります。
最近だと、「現年収」つまり「アンカー」を入力情報から排除した転職ドラフトのようなサービスも出てきていますが、未経験転職時の給与水準という「呪い」を解除する上では、こういったサービスを活用することも有効でしょう。
理由その2:実務未経験者を積極的に採用している企業さんの技術レベルはそれほど高くない場合が多い
これはもちろん会社さんによって色々だと思いますのであくまでも一般論ですが、小規模企業さんは開発しているサービスの数も少なく、使われている技術の数も限定的で、いわゆる「コモディティ化」しているあまり先進的でない技術を使っているケースが多いので、1年程度一生懸命働いてそれらの技術にキャッチアップできてしまった後は、技術的な成長曲線が急激に鈍化する可能性が高くなります。
そのため、最初の会社さんが新しい技術を習得する機会をどんどん提供してくれる場合は別として、同じサービスの開発や同じ技術を使った開発から中々抜けられないという状態になる可能性が高そうなら、より技術レベルの高い会社さんに早めに転職するのが賢明である、ということになります。
理由その3:人脈があまり広がらない
最初の会社さんに限らず、小規模企業さんにおいては、仕事の中で関われる人、あるいは社内行事や社内サークルやランチや飲み会等で交流を持てる人の数が、大規模な企業さんに比べると極端に少ないというデメリットがあります。
「人脈」という言葉が嫌いな人も多いようですが、駆け出しエンジニアの皆さんが今後蓄えていく「技術資産」や「錯覚資産」を将来的に高値で換金する上では、「人脈」つまり「人的資産」が非常に重要になります。
例えば私は今「手を動かすエンジニア」としての仕事以外に、かなりの高単価で「開発コンサル」や「技術コンサル」のお仕事もやらせて頂いておりますが、そういった高単価のお仕事のお声がけというのは、人材エージェント経由等ではまず発生せず、大抵の場合は自分の知り合いの方からの直接のご依頼や、あるいはその知り合いの方を経由してご相談がある場合というのがほとんどです。
そのため、私は駆け出しエンジニアの方には「キャリアのなるべく早い段階で大手有名Web系企業さんで正社員で働くこと」をお薦めしておりますが、そういう大規模有名企業さんというのは「大量の良質な人材だけをフィルタリングしてくれている異業種交流会」みたいなもので、優秀な人たちとの良質な人脈が一気に拡大できるため、人脈という観点から考えると「これ以上に効率的な優良人脈の拡大手段は存在しない」と断言して良いでしょう。
よって、例えば現時点であれば「メルカリさん」「クックパッドさん」「サイバーエージェントさん」「mixiさん」など、キャリアの早い段階でそういう「優秀な人材が大量に集まる有名Web系企業さん」で働いて良質な人脈を拡大しておいた方が、最初に入社した小規模企業さんに勤め続けるより「将来の高額での換金機会を増やす」という点においてメリットが大きい、ということになります。
(もちろんランチとか社内サークル等、色々な活動に積極的に参加しないと大企業さんでも人脈はあまり増えません。私の場合は以前お世話になったG社さんの「新規事業立ち上げサークル」に参加させて頂いたこと、あるいは社内の「早稲田会」の飲み会幹事を担当したこと、小中学生向けの「プログラミング学習支援ボランティア活動」に参加したこと等で一気に人脈が増えました)
補足
最初の会社を1年程度で辞めた後は、理想としてはそのまま大規模Web系有名企業さんに正社員として転職するのが理想的だと思いますが、1年間ではそこまで技術的に成長出来なかったというケースも多いと思います。
その場合に、技術力を伸ばすために正社員転職を繰り返してしまうと、ジョブホッパーと判断されて将来の正社員転職において非常に不利になってしまう可能性が高いので、複数の会社を短い間隔で渡り歩いて技術を伸ばしたい場合は、一度フリーランスになることでリスクを小さく抑えることが可能です。(下記の記事でも説明していますが、フリーランスは「どんなに頻繁に職場を移動しても職歴が増えない」という大きなメリットがあります)
転職ドラフトで1000万円超えのオファーを2度貰ったエンジニアが「評価された理由」と「正社員で働く意味」について考えてみました。 - Qiita
また、恐らく駆け出しエンジニアの方たちは「未経験の自分を拾ってくれた恩義のある会社さんを1年程度で辞めていいのだろうか」ということで悩まれると思いますが、皆さんがキャリアにおいて最優先すべきなのは、自分自身の「技術資産」や「錯覚資産」や「人的資産」を効率よく蓄積していくこと、および「それらの資産の効率的な換金パターンを確立すること」であり、恩を返すことではありませんので、ビジネスパーソンとしてそこはシビアに割り切らないと、皆さん自身が大きな損をしてしまいます。
また、恩の返し方としては、例えばその会社さんがとても良い会社さんだったのであれば、面白い退職エントリを書いてその会社さんの良い点をたくさん伝えた上でバズらせるであるとか、あるいは将来その会社さんに優秀なエンジニアの方をお繋ぎするであるとか、恩の返し方には色々ありますので、「長く在籍する」ことだけを恩の返し方だと考えない方がよいのではないでしょうか。
おまけ
Youtubeの方で、Web系エンジニアやWeb系エンジニアに興味のある方たち向けの雑食系エンジニアTVというチャンネルをやっています。もしご興味ございましたらチャンネル登録してみて頂けると大変嬉しいです。
また、2019年から「雑食系エンジニアサロン」というオンラインサロンも始めました。
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