この記事は、ひとりで作るSaaS - 設計・実装・運用の記録 Advent Calendar 2025 の2日目の記事です。
昨日の記事では「個人開発の始め方」について書きました。今日は、AI駆動開発において重要な「技術選定」について深掘りします。
💡 AI駆動開発とは
Claude Code、Codex、CursorなどのAIコーディングアシスタントを活用した開発スタイルです。
AIに「この機能を実装して」と伝えると、コードを生成してくれる。エラーが出たら「このエラーを修正して」と伝えると、修正案を提案してくれる。
このスタイルで開発効率を最大化するには、AIが理解しやすい技術スタックを選ぶことが重要です。
個人開発者向けの投稿プラットフォーム「izanami」には「個人開発 完全ガイド」という素晴らしいドキュメントがあり、技術選定のリソース集や個人開発の全体像がよくまとまっています。私は技術選定を一通り終えた後にこのガイドを知りました。(始める前に知りたかった…笑)
「これを見てください」だとここで話が終わってしまうので、この記事では私が実際に選んだ技術スタックと、その判断基準を共有します。
✏️ AIと相性の良い技術の特徴
1. 型情報があると精度が上がる
型情報があると、AIは「この関数は何を受け取り、何を返すか」を把握しやすくなります。
interface User {
id: string;
name: string;
email: string;
}
function getUser(id: string): Promise<User> {
// AIはこの関数が何を返すか理解できる
}
TypeScriptのような静的型付け言語は、コードに型情報が含まれるためAIが理解しやすいです。ただし、RubyやPythonのような動的型付け言語でも、ドキュメントが充実していればAIは十分に活用できると思います。
2. ドキュメントが豊富
ドキュメントが充実している技術ほど、AIは正確な回答を返す傾向があります。逆に、ドキュメントが少ないマイナーなライブラリでは、AIが古い情報や間違った情報を返すことがあります。
3. コミュニティが活発
利用者が多い技術ほど、AIは適切な回答を返しやすい傾向があります。
Next.js、React、Supabaseなどは利用者が多く、「〇〇したいんだけど」と伝えると、適切な実装パターンを提案してくれます。
4. ルールが明確
明確なルールがある技術は、AIにとって扱いやすいです。
Next.jsのApp Routerは良い例です。app/page.tsxがトップページ、app/about/page.tsxが/aboutページ。ルールが明確なので、AIは正確にファイル配置を理解できます。
🛠️ Memoreruで採用した技術スタック
私が開発しているMemoreruでは、以下の技術を採用しました。すべて「AIと相性が良い」という基準で選んでいます。詳細な技術スタックは「Memoreruについて」に掲載しています。
私はもともとサーバーサイドのエンジニアで、フロントエンドの技術には詳しくありませんでした。それでも、AIに質問しながら調べて進めることで、なんとか形にできています。詳しくない分野でも、AI駆動開発なら挑戦しやすいと感じています。
フロントエンド
| 技術 | 選定理由 |
|---|---|
| Next.js | ドキュメント豊富、App Routerの規約が明確 |
| TypeScript | 型情報でAIの精度向上 |
| Tailwind CSS | クラス名が直感的、AIが理解しやすい |
バックエンド・インフラ
| 技術 | 選定理由 |
|---|---|
| Supabase | PostgreSQLベース、ドキュメント充実 |
| Vercel | Next.jsとの相性抜群、デプロイ簡単 |
| Drizzle ORM | 型安全、SQLライクな書き方 |
認証・API
| 技術 | 選定理由 |
|---|---|
| Better Auth | TypeScript製、型安全 |
| Hono | TypeScript製、軽量 |
🎯 技術選定で避けるべきこと
最新すぎる技術
リリースされたばかりの技術は、AIが正確なコードを生成できない可能性があります。少なくとも半年〜1年は様子を見るのが安全です。
ドキュメントが日本語のみ
英語のドキュメントがあるライブラリの方が、AIは正確な回答を返しやすい傾向があります。日本語のみのライブラリでは、AIが適切な提案をできないことがあります。
独自の規約が多い技術
学習コストが高い技術は、AIにとっても難しいです。独自の概念や規約が多いフレームワークは、AIが間違った提案をすることがあります。
🔄 技術を乗り換えることも想定する
完璧な技術選定はありません。開発を進める中で、「この技術は合わなかった」と気づくこともあります。
Memoreruでも、いくつか技術を乗り換えました。
- Prisma → Drizzle ORM: 型安全性とパフォーマンスを重視
- NextAuth.js → Better Auth: より柔軟な認証が必要になった
- Route Handler → Hono: API設計の効率化
乗り換えは面倒ですが、AI駆動開発なら移行作業もAIに手伝ってもらえます。最初から完璧を目指すより、「合わなかったら変える」くらいの気持ちで始めるのがおすすめです。
💬 AIに相談しながら技術選定する
技術選定の過程では、Claude Codeに質問しながら進めることも多かったです。「認証ライブラリを比較して」「ORMの選択肢を教えて」といった質問を投げると、各ライブラリの特徴やメリット・デメリットを整理してくれます。最終的な判断は自分で行いますが、比較検討の効率が大幅に上がりました。
✅ まとめ:AI駆動開発の技術選定チェックリスト
技術選定で迷ったら、以下のチェックリストを参考にしてください。
- 公式ドキュメントが充実しているか(英語)
- GitHubで一定の利用者がいるか
- リリースから半年以上経過しているか
- ルールや規約が明確か
すべてにチェックが入る技術を選べば、AI駆動開発で効率よく開発を進められます。
明日は「Next.js + Supabaseで始める個人開発:プロジェクト構成の全体像」について解説します。