はじめに
筆者は、Microsoft 主催のセキュリティセミナーに参加し「AI を活用した SOC 自動化」について多くの示唆を得ました。
本記事では、そこで得た学びを Microsoft 公式ドキュメントの一次情報で裏付けながら、チャットベースとコードベースという 2 つのアプローチを 一連の運用フロー として繋げた未来像を整理します。
- 対象読者: Microsoft Sentinel / Defender XDR を触ったことのある SOC・SRE の中級者
- 扱うこと: SOC 自動化の最新潮流、チャット × コードの統合運用イメージ、運用提案への示唆
- 扱わないこと: 具体的な実装ハンズオン(概念レベルにとどめます)
この記事の要点(4 行まとめ)
- SOC の現場では、ポータルを行き来するだけで時間が溶ける――この摩擦を AI が解消します
- AI を中継役にすることで、Teams 上のチャットだけでアラート分析〜対処承認まで完結できます
- さらに GitHub Copilot のクラウドエージェント + MCP で、運用ナレッジを コードとして資産化 できます
- この 2 つを繋げると、「チャットで判断 → コードで記録・改善」という 学習し続ける SOC が見えてきます
背景:SOC は「検知 → 分析 → 対処」の繰り返し
SOC の基本フローは「検知 → 分析 → 対処」です。
Sentinel の 自動化ルール + プレイブック (Logic Apps ベース) によって、検知と対処の自動化は以前から実現できました(Microsoft Sentinel での自動化 (SOAR))。
しかし、現場では次のような声を耳にします。
- 承認のためだけに Azure / Defender ポータルを開くのが手間
- アラートのコンテキストを「人間に分かる言葉」に翻訳する一次分析に時間がかかる
- 人出での調査がすごく大変
- せっかくの対応知見がチケットに散在し、ナレッジ化されない
この摩擦を AI で解消するのが今回の主題です。
アプローチ①:チャットベース ― AI を「中継役」にする
セミナーで紹介されていたのは、Teams をフロントにした SOC オペレーションでした。
公式チュートリアル 侵害される可能性のあるユーザーを停止する でも、Teams/Slack 通知 → 承認ボタンで対処というパターンが解説されており、ここに Security Copilot (Microsoft Security Copilot とは) によるインシデント要約を組み込むイメージです。
ポイントは、人間の判断は残しつつ、判断に必要な情報整理を AI に任せることです。
アプローチ②:コードベース ― 運用をリポジトリで管理する
もう一つの衝撃は、GitHub Copilot のクラウドエージェント (公式ドキュメント) を使った「コードベースのインシデント管理」でした。
クラウドエージェントは MCP サーバー (Model Context Protocol) を介して外部システムに接続でき、Skills / Custom Agents で繰り返し業務を再利用できます。
これを SOC に当てはめると、こんな景色になります。
- オペレーターは GitHub Copilot Chat に自然言語で指示
- エージェントが MCP 経由で Sentinel / Defender / ServiceNow を横断調査
- 生成された インシデントレポートはリポジトリに PR として残る
- 週次レポートは Skill が自動生成、レビュー対象としてレビュー可能
エージェント作成は「自然言語で書けるので構成は難しくない」ので、ハードルは想像より低い印象です。
アプローチ③:チャット × コードを繋いだ一連の運用フロー
ここが本記事の本題です。①②は別物ではなく、1 本の運用ループとして繋げると本領を発揮します。
この流れの妙は、「速い対応」と「深い学習」を両立できる点にあります。
- 速い対応: 定型はチャットで即決、ポータルを開かない
- 深い学習: 非定型はコードベースで掘り下げ、結果は PR としてナレッジ化
- 改善ループ: 蓄積されたレポートの運用知見を要約し、次のプレイブック改善に還流する
つまり SOC が、インシデントを処理するだけの場所から、インシデントから学び続ける場所に変わるわけです。
考察:これは SOC だけの話ではない
セミナーは SOC を題材にしていましたが、システム運用 (SRE / オブザーバビリティ) でも同じ構図が成立すると感じました。
これまで私たちは、監視ツールやオブザーバビリティツールを「単体」で導入しがちでした。
しかしこれからは、「ツール × AI による運用自動化」までセットで提案することで、価値が一段上がるはずです。
そして気になる AI や MCP を使用するうえでのセキュリティ対策は…そう、SE のプロとしての腕の見せどころですね!(ぜひご依頼下さい)
まとめ
- Sentinel × Logic Apps の SOAR に AI の中継役 を加えると、Teams だけで SOC が回ります
- GitHub Copilot クラウドエージェント × MCP で、運用ナレッジをコード資産化 できます
- 2 つを繋げば、学習し続ける SOC という新しい運用像が描けます
- 同じ思想は SRE / オブザーバビリティ にもそのまま転用できます
AI エージェントの台頭に危機感を覚える方も多いと思いますが、筆者はむしろ、こんなにも環境が速く変わる面白い時代に立ち会えたことを素直に楽しんでいます。
本記事が、皆さんの次の一歩のヒントになれば幸いです。
参考文献
- Microsoft Sentinel での自動化: SOAR (取得日: 2026-04-24)
- Microsoft Sentinel プレイブックを使用して、侵害される可能性のあるユーザーを停止する (取得日: 2026-04-24)
- Microsoft Security Copilot とは (取得日: 2026-04-24)
- GitHub Copilot クラウドエージェントについて (取得日: 2026-04-24)
- Model Context Protocol (MCP) (取得日: 2026-04-24)


