はじめに
Anthropic から、2 つの大きな更新が出ました。
- Claude Managed Agents に「動的ワークフロー」(ベータ) が追加されました。 エージェントが自分でワークフローを書いて実行できます。
- Claude Haiku 5.5 の移行時の注意事項が大きく増えました。 Haiku 4.5 向けに書いたコードをそのままモデル名だけ差し替えると、400 エラーで壊れる可能性があります。
特に 2 は Critical です。これまで明記されていた注意は「手動の拡張思考 (budget_tokens) が 400 エラーになる」だけでした。今回、次の項目が追加されました。
- サンプリングパラメータ (
temperature/top_p/top_k) - アシスタントメッセージのプレフィル
- Computer Use ツール
computer_20250124 - thinking ブロックを送り返すときの制約
- Amazon Bedrock での構造化出力の制限
- 思考テキストがデフォルトで省略される挙動
📌 影響を受ける人
- Haiku 4.5 を使っていて、Haiku 5.5 への切り替えを考えている人
temperature固定やプレフィルで出力を制御している人- Computer Use をマルチクラウドで運用している人
- Bedrock 経由で構造化出力を使っている人
- 数百件規模のドキュメントレビューなど、大量の細かい作業をエージェントに任せたい人
変更の全体像
| ID | 種別 | 重要度 | 内容 | 対応必須 |
|---|---|---|---|---|
| change-001 | 新機能 | high | Managed Agents の動的ワークフロー (ベータ) | 不要 |
| change-002 | 破壊的変更 | critical | サンプリングパラメータとプレフィルが 400 に | 必要 |
| change-003 | 破壊的変更 | critical |
computer_20250124 が 400 に |
必要 |
| change-004 | 破壊的変更 | critical | thinking ブロック返送時の制約 | 必要 |
| change-005 | 破壊的変更 | high | Bedrock で構造化出力が使えない | 必要 |
| change-006 | 破壊的変更 | high | 思考テキストがデフォルトで省略 | 必要 |
変更内容
1. Haiku 5.5 で 400 エラーになりうるもの (Critical)
⚠️ Breaking Change
Haiku 4.5 向けに書いたコードは、モデルを Haiku 5.5 に切り替えると壊れる可能性があります。以下のどれかに当てはまる場合は、切り替え前に必ず修正してください。
(a) サンプリングパラメータとプレフィル
temperature・top_p・top_k の指定と、アシスタントメッセージのプレフィルは、それぞれ 400 エラーになる可能性があります。既存の budget_tokens と合わせて、Haiku 5.5 では次の 5 つを使わないのが安全です。
thinking.budget_tokenstemperaturetop_ptop_k- アシスタントメッセージのプレフィル
「JSON の { からプレフィルして形式を強制する」「temperature: 0 で出力を安定させる」といった実装は、典型的な影響対象です。出力形式の制御はプロンプト側の指示に寄せる必要があります。
(b) Computer Use ツール
computer_20250124 は Haiku 5.5 で 400 エラーを返します。代わりに使うツールは、提供先によって異なります。
| 提供先 | 使うツール |
|---|---|
| Claude API | computer_toolset_20260801 |
| Google Cloud | computer_toolset_20260801 |
| Amazon Bedrock | computer_20251124 |
| (共通) |
computer_20250124 は 400 エラー
|
マルチクラウドで実装している場合は、提供先ごとの分岐処理が必要です。
(c) thinking ブロックを送り返すときの制約
マルチターンの会話やエージェントループでは、前回応答の thinking ブロックを次のリクエストに含めることがあります。このとき system・tools・過去のターンのいずれかを書き換えていると、400 エラーで拒否される可能性があります。
会話の途中で system プロンプトやツール定義を動的に差し替える実装は、見直しが必要です。たとえば次のような実装です。
- ターンごとにツール一覧を絞り込む
- 状況に応じて system プロンプトを書き換える
- 過去ターンを要約や圧縮で置き換える
2. Haiku 5.5 の重要な挙動変更 (High)
Bedrock では構造化出力が使えない
Amazon Bedrock 上の Haiku 5.5 では、構造化出力 (structured outputs) を利用できません。構造化出力に頼った実装はそのままでは動きません。データから読み取れる対応策は次の 2 つです。
- プロンプトで出力形式を指定してパースする
- 提供先の変更を検討する
思考テキストはデフォルトで省略
Haiku 5.5 では適応型思考がデフォルトで有効です。そのため、応答が thinking ブロックから始まることがあります。ただし、ブロックの本文は thinking.display を "summarized" にしない限り省略されます。
思考内容をログに残したり UI に表示したりしている実装は、設定の追加が必要です。また、同じテキストでも消費トークン数が多くなる点は引き続き注意が必要です。
3. Managed Agents の動的ワークフロー (ベータ)
エージェントがワークフローを自分で書いて実行できるようになりました。ワークフローとは、多数のエージェントをフェーズ単位で動かし、その結果をまとめるプログラムです。
向いている仕事は、数百件のドキュメントのレビューのように、細かい作業が大量にあるものです。エージェントが書いたワークフローは、サーバー側でバックグラウンドの「workflow run」として実行されます。
有効化に必要なものは次の 3 つです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ベータヘッダー | managed-agents-2026-04-01 |
| エージェントの設定 |
multiagent フィールドに {"type": "multiagent_20261001", "workflows": {"type": "enabled"}}
|
| 開始タイミング | エージェントのシステムプロンプトで指示する |
進捗は、セッションのイベントストリームに流れる workflow_run.* イベントで追えます。詳細は公式ドキュメントの「Workflow runs」を参照してください。
影響と対応
Haiku 5.5 へ移行する人のチェックリスト
-
temperature/top_p/top_kの指定を削除した - アシスタントメッセージのプレフィルをやめ、プロンプトでの形式指示に置き換えた
-
thinking.budget_tokensを使っていない - Computer Use のツールを提供先に合わせて切り替えた
- thinking ブロックを返送する経路で system・tools・過去ターンを書き換えていない
- Bedrock 利用時、構造化出力への依存を外した
-
思考テキストを表示・保存する箇所に
thinking.display: "summarized"を設定した - 思考によるトークン消費の増加をコスト試算に反映した
💡 Tips
変更点ごとの対応は、公式のマイグレーションガイドにまとまっています。いきなり本番を切り替えず、まず 400 エラーの出る箇所をステージングで洗い出すのがおすすめです。
動的ワークフローを試す人
- ベータ機能なので、まず小さなバッチ処理から試す
- 開始タイミングはシステムプロンプトで明確に指示する
-
workflow_run.*イベントを監視する仕組みを先に用意する
CLAUDE.md の更新も忘れずに
チームで CLAUDE.md を運用している場合は、次を追記しておくと事故を防げます。
- Haiku 5.5 では
budget_tokens・temperature・top_p・top_k・プレフィルを使わない - Haiku 5.5 の Computer Use ツール対応表
- thinking 返送時は system・tools・過去ターンを変更しない
- Bedrock 上の Haiku 5.5 では構造化出力が使えない
- 適応型思考がデフォルトで有効で、本文表示には
thinking.display: "summarized"が必要 - 動的ワークフローの有効化方法 (
managed-agents-2026-04-01ベータヘッダー、multiagent設定)
コード例
Before / After: サンプリングパラメータとプレフィル
# Before (Haiku 4.5 向け): Haiku 5.5 では 400 エラーになりうる
response = client.messages.create(
model="claude-haiku-4-5",
max_tokens=1024,
temperature=0.2,
top_p=0.9,
messages=[
{"role": "user", "content": "次の文章をJSONで要約して: ..."},
{"role": "assistant", "content": "{"}, # プレフィル
],
)
# After (Haiku 5.5 向け): サンプリング指定とプレフィルを外し、形式はプロンプトで指示
response = client.messages.create(
model="claude-haiku-5-5",
max_tokens=1024,
messages=[
{
"role": "user",
"content": "次の文章をJSONのみで要約して。前置きや説明は不要です: ...",
},
],
)
思考テキストを表示する設定
# thinking の本文を受け取りたい場合は display を指定する
thinking={"display": "summarized"}
thinkingの他のフィールドは、お使いの既存設定に合わせてください。ここではdisplayの指定のみを示しています。
Computer Use ツールの提供先別切り替え
# Haiku 5.5 向けの Computer Use ツール名 (computer_20250124 は 400 エラー)
COMPUTER_TOOL_BY_PROVIDER = {
"claude_api": "computer_toolset_20260801",
"google_cloud": "computer_toolset_20260801",
"bedrock": "computer_20251124",
}
tool_name = COMPUTER_TOOL_BY_PROVIDER[provider]
動的ワークフローを有効にするエージェント設定
{
"multiagent": {
"type": "multiagent_20261001",
"workflows": {
"type": "enabled"
}
}
}
リクエストには、ベータヘッダー managed-agents-2026-04-01 が必要です。
まとめ
-
Haiku 5.5 への移行は、モデル名の差し替えだけでは済みません。 サンプリングパラメータ、プレフィル、
computer_20250124、thinking 返送時の変更が 400 エラーの原因になりえます。 -
Computer Use のツールは提供先で異なります。 Claude API と Google Cloud は
computer_toolset_20260801、Bedrock はcomputer_20251124です。 - Bedrock の Haiku 5.5 では構造化出力が使えません。
-
思考テキストは、デフォルトでは省略されます。 表示には
thinking.display: "summarized"が必要です。 -
動的ワークフロー (ベータ) は、大量の細かい作業を並列に捌く新しい選択肢です。
managed-agents-2026-04-01ヘッダーとmultiagent設定で有効化できます。
Haiku 4.5 を使っているなら、切り替え前に上のチェックリストで洗い出してください。大量処理を抱えているなら、動的ワークフローを小さく試す価値があります。