はじめに
2026年9月17日にリリースされた Claude Code v2.1.274 は、機能追加よりも「互換性」と「セキュリティ」に関わる修正が中心の、地味だが見逃せないメンテナンスリリースです。
特に注目すべきは次の3点です。
- Bedrock / Vertex AI / Foundry 経由で Claude Code を使っているエンタープライズ環境で、MCP クライアントの内部実装がデフォルトで切り替わる破壊的変更
- MCP 接続エラーメッセージに API キーなどの秘密情報が漏洩していた脆弱性の修正
- Bash ツールの権限チェックのバイパスにつながりうる2件の穴を塞ぐセキュリティ強化
「いつも通り自動更新したら、社内の MCP サーバーに繋がらなくなった」「CI のスクリプトが急に権限確認で止まるようになった」——そんな事態を避けるために、該当する人は本記事の該当箇所だけでも目を通しておくことをおすすめします。
📌 影響を受ける人
- Bedrock / Vertex AI / Foundry 経由で Claude Code を使っている組織の管理者
.mcp.jsonや settings、プラグインで MCP サーバーを設定している開発者- CI/CD や自動化スクリプトから
claude -p(ヘッドレスモード)を使っている人- VS Code 拡張や Claude Code on the web(クラウドセッション)を日常的に使う人
変更の全体像
今回のリリースで影響範囲が大きい変更同士の関係を図にまとめます。
赤枠が「対応要否を確認すべき」変更です。
変更内容
1. MCP v2 クライアントがクラウドプロバイダ環境でもデフォルト化(Breaking)
これまで Bedrock / Vertex AI / Foundry 経由の環境だけは旧世代(v1)の MCP クライアントと旧プロトコルネゴシエーションが使われていましたが、他の環境と同様に v2 MCP クライアント + MCP 2026-07-28 ネゴシエーションがデフォルトになりました。テレメトリを無効化しているインストールも対象です。
⚠️ Breaking Change
社内の古い MCP サーバー実装が新しいネゴシエーション手順に対応していない場合、接続失敗やハンドシェイクエラーが起きる可能性があります。まずは検証環境で挙動を確認してください。
2. type: "sdk" の MCP エントリは設定ファイルでは無効に(Breaking)
.mcp.json や settings、プラグイン・エージェント定義ファイルに書かれた "type": "sdk" の MCP エントリは、警告付きでスキップされるようになりました。インプロセスの SDK サーバーは、SDK を組み込んだホストアプリケーションからしか登録できない、という仕様が明確化された形です。
3. セキュリティ修正2件
| # | 内容 | 影響 |
|---|---|---|
| Bash権限チェック強化 | 特殊シェル変数への for ループ・代入を含むコマンドが自動許可されなくなり、権限プロンプトが必須に。worktree分離セッションではネストしたシェル展開を含むコマンドを拒否 |
一部の自動化スクリプトが今まで通り動かなくなる可能性あり |
| MCPシークレット漏洩修正 | MCP設定の ${VAR} から解決した値(APIキー等)が、接続エラーメッセージやログインツールの説明文にそのまま表示されていた問題を修正 |
ログ・トランスクリプトへの秘密情報混入リスクを解消 |
⚠️ Breaking Change
Bash 権限チェックの強化により、これまで無人実行できていた CI スクリプトが権限確認で止まる場合があります。意図的な仕様変更なので、--allow-dangerously-skip-permissionsの要否など運用ルールを見直してください。
4. ヘッドレス/エージェント基盤の改善
| 変更 | 概要 |
|---|---|
CLAUDE_CODE_MCP_STARTUP_WAIT_MS |
claude -p の初回ターンがMCP接続を待つ上限時間を設定可能に(0で待たない) |
tool_use_id 不整合の無限リトライ修正 |
破損トランスクリプトでの400エラーを自己修復、無理なら /rewind を案内して終了 |
| OpenTelemetry拡充 |
effort 属性、claude_code.managed_settings_resolved イベント、OTEL_LOG_RAW_API_BODIES の index.jsonl を追加 |
5. 各サーフェスの主な変更
| サーフェス | 変更内容 |
|---|---|
| VS Code拡張 | ウィンドウリロード後の作業継続、CustomizeメニューにMemory/Instructions編集UI追加、lockEditorGroups設定追加 |
| Claude Code on the web | diffビューに「Compare against」ブランチピッカー追加、GitHubトークン更新エラー時の失敗を修正 |
| Claude Tag(Slack) | チャンネル/ワークスペース追加時にGuests設定を事前選択可能に、応答漏れ・検索エラー等を多数修正 |
| Code Review | 一時的エラーのリトライ、指摘文面を「誰が影響を受けるか」先頭の平文に改善 |
影響と対応
判断フローとしては、以下のように確認するとよいでしょう。
-
エンタープライズ管理者: 社内の直接HTTP接続MCPサーバーが新プロトコルに対応しているか確認。問題があれば
MCP_SDK_GENERATION=v1またはMCP_PROTOCOL_NEGOTIATION=legacyで一時的にオプトアウトできます。 -
MCP設定を書いている開発者:
.mcp.json等にtype: "sdk"を書いていないか確認し、あれば削除・見直し。 - CI/自動化の運用者: Bash権限チェック強化により止まるスクリプトがないか、更新後に一度実行して確認。
- 秘密情報を扱う全員: 過去のログ・トランスクリプトに漏洩していた秘密情報がないか、念のため確認・ローテーションを検討。
💡 Tips
ヘッドレス実行(CI等)で MCP サーバーの起動待ちが長くて困っている場合は、CLAUDE_CODE_MCP_STARTUP_WAIT_MS=0を設定すると待機せずに初回ターンを開始できます。
コード例
MCP v2クライアントを一時的に無効化する
# Before: Bedrock/Vertex/Foundryではv1クライアントが暗黙的に使われていた
claude
# After: v2.1.274以降、明示的にオプトアウトしない限りv2クライアントが使われる
# 互換性問題が出た場合の一時回避策
export MCP_SDK_GENERATION=v1
export MCP_PROTOCOL_NEGOTIATION=legacy
claude
.mcp.json から無効になった type: sdk エントリ
// Before: 設定ファイルに書けてしまっていたが、実際には機能しない設定
{
"mcpServers": {
"myInProcessTool": {
"type": "sdk",
"name": "myInProcessTool"
}
}
}
// After: 設定ファイルからは削除し、SDKホストアプリ側で
// createSdkMcpServer() 等を使って登録する
ヘッドレス実行のMCP起動待ちを制御する
# Before: MCPサーバーの起動を待つ時間を制御できず、
# CIジョブがMCP_TIMEOUTまでブロックされることがあった
# After: 起動待ちの上限を明示的に指定(ミリ秒)
CLAUDE_CODE_MCP_STARTUP_WAIT_MS=0 claude -p "タスクを実行して" --strict-mcp-config
まとめ
Claude Code v2.1.274 は派手な新機能こそ少ないものの、実運用への影響が大きい変更が詰まったリリースです。
- Bedrock/Vertex/Foundry利用者は MCP v2クライアントのデフォルト化により、直接HTTP接続の古いMCPサーバーとの互換性を確認する必要があります
-
設定ファイルに
type: sdkを書いていた人は、そのエントリが無視されるようになった点に注意 - Bashを自動実行する運用をしている場合、権限チェック強化でスクリプトが止まる可能性を事前に確認すべき
- MCP設定のシークレット漏洩修正は、地味ながらセキュリティ上重要な修正なのでアップデートを推奨します
破壊的変更が2件(MCP v2既定化、type: sdk無効化)含まれるため、エンタープライズ環境や自動化パイプラインで Claude Code を使っている場合は、更新前に検証環境での動作確認をおすすめします。