はじめに
2026年7月21日、Google は Gemini API まわりで3つの重要な変更を発表しました。
- Gemini 3.6 Flash の一般提供(GA)開始
- Gemini 3.5 Flash-Lite の一般提供(GA)開始
- サンプリングパラメータ
temperature/top_p/top_kの非推奨化
前者2つは新しいモデル選択肢が増えるポジティブなニュースですが、3つ目は既存コードに影響しうる変更です。特に temperature などは多くのプロダクションコードで当たり前のように使われているパラメータのため、「まだ動くから」と放置していると将来突然のブレークにつながりかねません。
本記事では、これら3つの変更内容と、開発者が今取るべきアクションを整理します。
📌 影響を受ける人
- Gemini API で
gemini-3.5-flashやgemini-1.5系モデルを本番利用している人temperature/top_p/top_kを明示的に指定してリクエストを送っている人- 大量データのバッチ処理や、サブエージェント的なワークロードを Gemini で構築している人
変更の全体像
今回の3つの変更を、モデルラインナップの位置づけとして図示します。
サンプリングパラメータの非推奨化は特定モデルに限った話ではなく、Gemini API 全体に関わる変更である点に注意してください。
変更内容
1. Gemini 3.6 Flash が GA
gemini-3.6-flash が安定版・本番利用可能なバージョンとしてリリースされました。3.x Flash 系列の最新版にあたります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| モデルID | gemini-3.6-flash |
| 位置づけ | 3.x Flash 系列の最新安定版 |
| 価格 | 3.5 Flash より低価格 |
| 強化点 | トークン効率、コード生成、エージェント的プランニング能力 |
| 解消された課題 | 出力の冗長性(verbosity)問題 |
開発者から寄せられていた「出力が冗長になりがち」というフィードバックに対応した点が特徴で、同じタスクでもレスポンスがより簡潔になり、結果としてトークンコストの削減にもつながります。
2. Gemini 3.5 Flash-Lite が GA
gemini-3.5-flash-lite も同時に GA となりました。こちらは高性能よりも「軽さ」に振ったモデルです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| モデルID | gemini-3.5-flash-lite |
| 位置づけ | 3.x Flash 系列の軽量版・安定版 |
| 特徴 | 低レイテンシ、高コスト効率 |
| 想定用途 | 大量処理の自動化におけるサブエージェント |
マルチエージェント構成で「司令塔となる高性能モデル + 大量のサブタスクをこなす軽量モデル」という設計をする場合、このサブエージョン部分に Flash-Lite を割り当てる想定です。
3. サンプリングパラメータの非推奨化
temperature、top_p、top_k の3つのパラメータが非推奨と宣言されました。
⚠️ Breaking Change(将来的に)
現時点ではすぐに動作しなくなるわけではありませんが、非推奨化は「将来の削除」を見据えたシグナルです。特にこの3つは出力のランダム性・多様性を制御するために広く使われているパラメータであり、影響範囲は大きいと考えられます。
公式には移行先の詳細が「Latest Gemini Model」ガイドに記載されているとのことですが、少なくとも以下は今のうちに確認しておくべきです。
- 自分のコードのどこで
temperature/top_p/top_kを指定しているかの棚卸し - それらのパラメータを使う「目的」(決定的な出力にしたい/多様な出力にしたい、など)の言語化
- 新しい推奨パラメータ・設定方法へのマッピング
影響と対応
移行の要否を判断するためのフローチャートです。
開発者が取るべきアクション
-
パラメータ利用箇所の棚卸し:
temperature=、top_p=、top_k=で grep するなどして、リクエストコードを洗い出す -
モデルのアップグレード検討:
gemini-3.5-flashを使っている場合はgemini-3.6-flashへの切り替えでコストとトークン効率の両方が改善する可能性がある -
軽量ワークロードの見直し: バッチ処理・サブエージェント用途で高性能モデルを使いすぎている場合、
gemini-3.5-flash-liteへの切り出しでコスト削減を検討する - 非推奨パラメータの移行方針を決める: すぐに壊れるわけではないため慌てる必要はないが、放置すると将来の一括対応が重くなるため、棚卸しだけでも早めに着手する
💡 Tips
モデルの切り替えとパラメータ移行は別々のタイミングで進めても構いません。まずは影響の少ないgemini-3.5-flash-liteへの切り替えなど、リスクの低いところから着手するのがおすすめです。
コード例
Before: 旧モデル + 非推奨パラメータを使ったリクエスト
import google.generativeai as genai
genai.configure(api_key="YOUR_API_KEY")
model = genai.GenerativeModel("gemini-3.5-flash")
response = model.generate_content(
"この記事の要約を3行で書いて",
generation_config=genai.types.GenerationConfig(
temperature=0.7,
top_p=0.9,
top_k=40,
),
)
print(response.text)
After: 新モデルへの切り替え(サブエージェント用途は Flash-Lite に分離)
import google.generativeai as genai
genai.configure(api_key="YOUR_API_KEY")
# メインタスク: 3.6 Flash に切り替え(トークン効率・コード/計画能力が向上)
main_model = genai.GenerativeModel("gemini-3.6-flash")
response = main_model.generate_content(
"この記事の要約を3行で書いて",
# temperature/top_p/top_k は非推奨のため、
# 新規コードでは指定を避けデフォルト挙動に委ねる
)
print(response.text)
# 大量のサブタスク処理: 低レイテンシ・低コストな Flash-Lite に切り出す
sub_model = genai.GenerativeModel("gemini-3.5-flash-lite")
for item in bulk_items:
result = sub_model.generate_content(f"分類してください: {item}")
process(result.text)
ポイントは、非推奨パラメータを新規コードから外すこと、そしてワークロードの性質に応じてモデルを使い分けることです。
まとめ
- Gemini 3.6 Flash がGA。3.5 Flash より低価格で、トークン効率・コード/エージェント計画能力が向上し、冗長な出力の問題も解消
- Gemini 3.5 Flash-Lite がGA。低レイテンシ・低コストで、大量自動化やサブエージェント用途に最適
-
temperature/top_p/top_kが非推奨化。即座に壊れる変更ではないが、既存コードでの利用箇所を早めに棚卸しし、移行計画を立てておくべき
新モデルの追加は歓迎できる一方、パラメータの非推奨化は静かに進行する破壊的変更の入り口になりがちです。「動いているから大丈夫」ではなく、今のうちに影響範囲を把握しておくことをおすすめします。