はじめに
2026年8月、Claude Code v2.1.223 がリリースされました。今回の目玉は 4件のセキュリティ修正 です。いずれも「権限チェックやサンドボックスの境界をすり抜けられる」という、CLI ツールとしては見過ごせない種類の不具合で、Claude Code を CI/CD やローカル開発で自動実行している人ほど影響が大きい内容になっています。
あわせて、長文コンテキストを扱う際の挙動(CLAUDE_CODE_DISABLE_1M_CONTEXT の適用範囲拡大)や、/review コマンドの仕様変更など、日常的な使い方にも関わるアップデートが含まれています。本記事ではこれらの変更点を、影響範囲別に整理して解説します。
📌 影響を受ける人
- Claude Code に
Bash権限やbypassPermissionsを使わせている人- Vertex AI / Bedrock 経由や独自ゲートウェイ経由で Claude モデルを利用している人
- 100万トークンのコンテキストウィンドウを使っている、または独自のカスタムモデルIDを使っている人
- 組織で managed settings / MDM を使って Claude Code を集中管理している人
変更の全体像
今回のリリースで修正・変更された範囲を、影響を受けるコンポーネント単位で整理すると以下のようになります。
変更内容
1. 🔴 Bash権限バイパスなど4件のセキュリティ修正(Critical)
最も重要なのがこの一連の修正です。いずれも「ユーザーやポリシーが本来ブロックしたい操作を、チェックをすり抜けて実行できてしまう」という共通点があります。
| # | 内容 | リスク |
|---|---|---|
| 1 | 細工された Bash コマンドが権限チェックから自身の一部を隠蔽できた | 承認ダイアログに表示されないコマンドが実行される可能性 |
| 2 | タブ・不可視 Unicode でパディングされたコマンドが承認ダイアログ上で内容を隠せた | 見た目上安全なコマンドに偽装した危険なコマンドの承認 |
| 3 | workflow スクリプトが動的 import() でサンドボックス外のコードを実行できた |
workflow の隔離境界の突破 |
| 4 | エージェント定義の bypassPermissions が組織の無効化ポリシーを無視していた |
組織側で禁止していたはずの権限バイパスが機能する |
⚠️ Breaking Change
セキュリティ修正のため後方互換の配慮はありません。細工されたコマンドを前提に運用していた自動化があれば(通常はないはずですが)、動作が変わります。
2. ⚠️ コンテキストウィンドウ管理の挙動変更(High)
CLAUDE_CODE_DISABLE_1M_CONTEXT の適用範囲が変わりました。
| 旧仕様 | 新仕様 | |
|---|---|---|
| 対象モデル | 固定のモデルリストのみ | ネイティブに1Mコンテキストを持つ全 Claudeモデル |
| 未知のモデルID | 制限なし(肥大化のおそれ) | 自動コンパクトが想定コンテキスト内に抑制 |
| 旧挙動に戻す方法 | - | CLAUDE_CODE_DISABLE_UNKNOWN_MODEL_WINDOW_ENFORCEMENT=1 |
自動コンパクションが200Kにセッションを抑えられていない場合は、起動時に警告が表示されるようになりました。
💡 Tips
独自ゲートウェイ経由でカスタムモデルIDを使っている場合、これまで無制限だったコンテキストが突然抑制されることがあります。想定外の自動コンパクトが増えたら、まずこの変更を疑ってください。
3. /review が /code-review のエイリアスに(Medium)
# 旧: /review
# 新: /review は /code-review のエイリアス
/code-review # 現在のdiffまたはPRをレビュー
/code-review high pr#123 # レベルとPR番号を指定
/code-review ultra # 深いクラウドレビュー
エフォートレベルを省略した場合、前回指定したレベルが再利用される点に注意してください。挙動を変えたい場合は明示的にレベルを指定する必要があります。
4. その他の修正・改善
| 変更 | 概要 |
|---|---|
| ゲートウェイのモデル探索修正 |
vertex_ai/claude-* や bedrock/anthropic.claude-* のようなプロバイダ接頭辞付きIDのモデルが一覧から隠れる問題を解消 |
modelOverrides の不具合修正 |
Anthropicのモデル ID でないキーがセッションの正規モデルIDとして誤って扱われる問題を修正(ドキュメント通り未知キーは無視される) |
| managed settings の env マージ | サーバー配信設定がローカルの managed-settings.json/MDM の env ブロックを潰さなくなり、キー単位でマージされる |
| マーケットプレイス owner ワイルドカード |
strictKnownMarketplaces / blockedMarketplaces に "owner/*" 形式が追加され、GitHub org 単位で一括許可・ブロック可能に |
| サブエージェントのモデル制限警告 | 要求したサブエージェントモデルが制限されて親モデルにフォールバックする際、警告が表示されるように |
/teleport ヒント追加 |
クラウドセッション上で claude --teleport <session id> によるローカル継続方法を案内 |
影響と対応
-
今すぐアップデートすべき人:Claude Code を使ってすべての人。特にセキュリティ修正4件は権限・サンドボックスの根幹に関わるため、CI/CD で
bypassPermissionsを使っている組織や、Bash 実行を伴うエージェント運用をしている環境は優先度高です。 -
Vertex AI / Bedrock / 独自ゲートウェイ利用者:
modelOverridesの設定を見直し、Anthropic 公式のモデルIDのみをキーに使っているか確認してください。プロバイダ接頭辞付きモデルが見えていなかった場合は、今回の修正で一覧に復帰します。 -
長文コンテキスト運用者:
CLAUDE_CODE_DISABLE_1M_CONTEXTを設定している場合、対象モデルが拡大したことで挙動が変わります。旧挙動が必要な場合はCLAUDE_CODE_DISABLE_UNKNOWN_MODEL_WINDOW_ENFORCEMENT=1を検討してください。 -
/reviewを使っている人:そのまま/code-reviewとして動作するので基本的に対応不要ですが、レベル未指定時に前回値が再利用される点だけ覚えておくと事故防止になります。
コード例
CLAUDE_CODE_DISABLE_1M_CONTEXT の設定例
# Before: 固定リストのモデルにのみ適用されていた
export CLAUDE_CODE_DISABLE_1M_CONTEXT=1
# After: ネイティブ1M対応の全Claudeモデルに自動適用される
# 未知モデルIDでも自動コンパクトで200Kに抑制されるため、
# 旧来の「制限なし」挙動が必要な場合は明示的にオプトアウトする
export CLAUDE_CODE_DISABLE_1M_CONTEXT=1
export CLAUDE_CODE_DISABLE_UNKNOWN_MODEL_WINDOW_ENFORCEMENT=1
/code-review の使い分け
# Before (v2.1.223 未満でも動作するが実体は同じコマンドに統一)
/review
# After: /review は /code-review のエイリアス
/code-review # 現在のdiff/PRをレビュー(前回のレベルを再利用)
/code-review high # エフォートレベルを明示的に変更
/code-review high pr#42 # 特定PRをhighレベルでレビュー
/code-review ultra # 最も深いクラウドレビュー
マーケットプレイスの owner ワイルドカード設定例
{
"strictKnownMarketplaces": [
"my-org/*"
],
"blockedMarketplaces": [
"untrusted-org/*"
]
}
まとめ
- v2.1.223 は Bash 権限バイパス、承認ダイアログの Unicode 偽装、workflow サンドボックス脱出、bypassPermissions のポリシー無視 という4件のセキュリティ修正を含む、優先度の高いアップデートです。
-
CLAUDE_CODE_DISABLE_1M_CONTEXTの適用対象が全1M対応モデルに拡大し、未知モデルIDでもコンテキスト上限が自動強制されるようになりました。長文コンテキストや独自ゲートウェイ運用者は挙動変化に注意してください。 -
/reviewは/code-reviewのエイリアスとなり、レベル未指定時は前回値を再利用します。 - Vertex AI / Bedrock / 独自ゲートウェイ経由の利用者は、モデル探索と
modelOverridesに関する修正の恩恵を受けます。
セキュリティ修正が中心のリリースなので、まずはアップデートを優先し、その後で環境変数まわりの挙動変化に自分の運用が影響を受けないか確認することをおすすめします。