はじめに
2026年9月28日、Anthropicから新モデル Claude Sonnet 5.5(モデルID: claude-sonnet-5-5)がリリースされました。Claude API はもちろん、Amazon Bedrock、AWS上のClaude Platform、Google Cloud、Microsoft Foundryの計5プラットフォームで利用可能です。
新モデルというと「性能が上がった」「使えるようになった」という前向きな話に目が行きがちですが、今回особのポイントは Sonnet 5 向けに書いたコードがそのままでは動かなくなる破壊的変更が5つ含まれている ことです。特に thinking(拡張思考)や tool_choice、computer use ツール、advisor ツールを使っている実装は、無条件にアップグレードするとエラーや意図しない動作変化に直面します。
📌 影響を受ける人
- Claude Sonnet 5 を使っていて Sonnet 5.5 への切り替えを検討している人
thinkingパラメータでモデルの思考をON/OFF制御している人tool_choiceでツール使用を強制(any/tool)している人- computer use ツールや advisor ツールを利用している人
- 複数アカウントで会話履歴・思考ブロックを共有する構成を組んでいる人
本記事では、リリース内容と5つの破壊的変更を整理し、移行時に何をチェックすべきかをまとめます。
変更の全体像
まず、Sonnet 5.5 がどのプラットフォームで使えるかを整理します。
次に、Sonnet 5 からの移行時に確認すべきポイントを判断フローにまとめました。
変更内容
リリース差分から読み取れる主要な変更点を表に整理します。
| # | 分類 | 内容 | severity |
|---|---|---|---|
| 1 | 新機能 | Claude Sonnet 5.5 リリース(5プラットフォーム対応) | high |
| 2 | 破壊的変更 | 思考の無効化は disabled ではなく between_tools
|
critical |
| 3 | 破壊的変更 |
tool_choice の any / tool 指定が400エラーに |
critical |
| 4 | 破壊的変更 | 思考ブロックがモデル・会話に紐づく | critical |
| 5 | 破壊的変更 | 旧 computer use ツール computer_20251124 が使用不可(API / Google Cloud) |
critical |
| 6 | 破壊的変更 | advisorツールでOpus 4.8 / Opus 4.7 / Sonnet 5 を指定不可 | critical |
| 7 | 仕様変更 | 思考ブロックは生成アカウント・連携アカウントのみ有効(他アカウントは無音破棄) | high |
| 8 | 告知 | 新機能・移行ガイド・プロンプトガイドの3ドキュメント公開 | low |
コンテキストウィンドウ・出力上限・料金については、リリース差分には明記がなく「Claude Sonnet 5.5 model page」を参照するよう案内されています。実運用でコストや上限が絡む設計をしている場合は、この記事の情報だけで判断せず、必ずモデルページ側の最新情報を確認してください。
破壊的変更の詳細
⚠️ Breaking Change 1: thinking の無効化指定が変わる
thinking: {"type": "disabled"}ではなくthinking: {"type": "between_tools"}を送る必要があります。適用条件はeffortがhigh以下の場合です。disabledを送り続けた場合にエラーになるか無視されるかは公式差分に明記されていません。
⚠️ Breaking Change 2: tool_choice によるツール強制が400エラーに
tool_choice.typeにanyまたはtoolを指定してツール使用を強制するリクエストが、Sonnet 5.5 では400エラーになります。構造化出力やツール呼び出しの強制をこの指定に依存している実装は要修正です。代替手段は差分に記載がなく、移行ガイド参照が案内されています。
⚠️ Breaking Change 3: 思考ブロックがモデル・会話に紐づく
生成された思考ブロック(thinking blocks)は、生成したモデルと会話に紐づくようになりました。モデルを切り替えたり、思考ブロックを別会話に持ち込んだりする実装は挙動が変わる可能性があります。
⚠️ Breaking Change 4: 旧 computer use ツールが使用不可に
Claude API と Google Cloud 上の Sonnet 5.5 では、旧バージョンの computer use ツールcomputer_20251124が受け付けられません。Bedrock、AWS上のClaude Platform、Microsoft Foundryでの扱いや新バージョン名は差分に記載がありません。
⚠️ Breaking Change 5: advisorツールのモデル指定制限
advisorツールで Claude Opus 4.8、Claude Opus 4.7、Claude Sonnet 5 を advisor に指定すると拒否されます。どのモデルなら指定可能かは差分から読み取れません。
さらに、破壊的変更ではないものの見落としやすい仕様変更として、思考ブロックのアカウントスコープがあります。
💡 Tips
Sonnet 5.5 が生成した思考ブロックは、生成したアカウントとその連携アカウントでのみ有効です。他アカウントから送っても エラーにはならず、API側がモデルに渡す前に静かに破棄します。複数アカウントで会話履歴を共有する構成では、気づかないうちに思考の文脈が失われる可能性があるため、動作確認時はログやレスポンス内容を必ず目視で確認してください。
影響と対応
移行時に取るべきアクションをチェックリスト化しました。
-
thinkingパラメータで"type": "disabled"を送っている箇所を洗い出し、"type": "between_tools"に置き換える(effortがhigh以下の場合) -
tool_choice.typeにany/toolを使っている箇所を洗い出す。Sonnet 5.5 では400エラーになるため、移行ガイドで代替手段を確認する - 思考ブロックをモデル間・会話間で使い回すロジックがないか確認する
-
Claude API / Google Cloud 経由で computer use ツール
computer_20251124を利用していないか確認する - advisorツールの設定でOpus 4.8 / Opus 4.7 / Sonnet 5 を advisor に指定していないか確認する
- 複数アカウントで会話・思考ブロックを共有する構成がある場合、思考ブロックが破棄されても気づける監視・ログを用意する
いずれの項目も「エラーで気づける変更」と「エラーにならず静かに壊れる変更」が混在している点に注意が必要です。特に思考ブロックのモデル/会話紐づけとアカウントスコープの2つは、400エラーのような明示的な失敗を返さない可能性があるため、移行後は出力内容のレビューを厚めに行うことをおすすめします。
コード例
thinking の無効化指定
response = client.messages.create(
model="claude-sonnet-5-5",
max_tokens=1024,
- thinking={"type": "disabled"},
+ thinking={"type": "between_tools"},
messages=[{"role": "user", "content": "..."}]
)
effort が high 以下の場合にこの指定が適用されます。effort が high を超える場合の扱いは公式差分に記載がないため、該当する場合は移行ガイドで個別に確認してください。
tool_choice による強制指定(400エラーになる例)
response = client.messages.create(
model="claude-sonnet-5-5",
max_tokens=1024,
tools=[...],
- tool_choice={"type": "any"}, # Sonnet 5.5 では400エラー
messages=[{"role": "user", "content": "..."}]
)
代替手段は公式の移行ガイドを参照する必要があります。構造化出力やツール呼び出しの強制にこの指定を使っている場合は、リリース後の初回テストで必ず疎通確認を行ってください。
まとめ
- Claude Sonnet 5.5(
claude-sonnet-5-5)が2026年9月28日にリリースされ、Claude API / Bedrock / AWS上のClaude Platform / Google Cloud / Microsoft Foundry の5プラットフォームで利用可能 - Sonnet 5 からの移行では 5つの破壊的変更 に注意が必要:①
thinking: disabled→between_tools、②tool_choiceのany/tool指定が400エラー、③思考ブロックがモデル・会話に紐づく、④computer_20251124がAPI/Google Cloudで使用不可、⑤advisorツールでOpus 4.8/4.7/Sonnet 5を指定不可 - 思考ブロックはアカウントにも紐づき、他アカウントから送るとエラーなしで破棄される点に注意
- コンテキスト長・出力上限・料金などのスペックは差分に含まれておらず、モデルページ側での確認が必要
- 移行にあたっては「What's new in Claude Sonnet 5.5」「migration guide」「Prompting Claude Sonnet 5.5」の3ドキュメントを併せて確認することが推奨されている
破壊的変更の多くはエラーとして表面化しますが、思考ブロックまわりの変更は静かに動作が変わるケースがあるため、アップグレード後は出力内容のレビューを丁寧に行うことをおすすめします。