この記事は、Elixir Advent Calendar 2023 シリー11 の20日目です
piacere です、ご覧いただいてありがとございます
Elixir Chip開発談義の際に、@zacky1972 さんからご紹介いただいた下記IBMエッジコンピューティングレポート(以下、IBMレポートと略)を見ながら、「クラウドからエッジ/エッジサーバに拡がる未来」についてまとめつつ、Elixirがどのように関わっていくかを整理したいと思います
なお、エッジコンピューティングやクラウド、エッジサーバ(カスタマーエッジ、ネットワークエッジ、MEC)については本コラムでは解説しませんので、レポート内でキャッチアップしてください
あと、このコラムが、面白かったり、役に立ったら、 をお願いします
IBMエッジコンピューティングレポートの要約
現在、データ/コンピューティングパワー共にエッジへの配置やエッジサーバ敷設はまだまだ発展途上中で、大部分はクラウドが賄う構成が主流となっています
そこに対し、エッジコンピューティングにどのようなメリットが存在し、アーキテクチャ構成や資源特性、未来予測があるかを本レポートは示しており、それを要約してみます
① エッジコンピューティングのメリット
IBMレポートでは、下記3つの観点でエッジコンピューティングのメリットをまとめています
- リアルタイム性
- UX向上、待ち時間短縮、良レスポンス性サービス
- IoT:生産性向上、品質マネジメント自動化、安全性向上
- レジリエンシ
- クラウド利用不可時の損失最小化(エッジ+カスタマーエッジ)
- 意図せぬNW障害での縮退運転実現
- 多数デバイス遠隔操作によるシステム復旧/ソフトウェア更新
- セキュリティ
- プライバシー保護(不必要にクラウドに流さない)
② エッジコンピューティングのアーキテクチャ構成
さらに6種類のアーキテクチャ構成を提案しています
- ①協調処理
- ②オフロード
- ③選択アップロード
- ④クローズド
- ⑤デジタルツイン
- ⑥データキャッシュ
③ エッジコンピューティングの資源特性
各コンピュータ資源の特性についても、4つの観点で整理しています
④ エッジコンピューティングの未来推移予測
データ蓄積量や演算処理(カリキュレーション)、計算能力(パワー)に着目した未来推移予測も掲げています
⑤ エッジコンピューティングからxR/デジタルツイン
そしてエッジコンピューティングの構成要素から、xR/デジタルツインについて定義する試みも行っています
レポートから読み取るエッジコンピューティング
IBMレポート中の下記予測では、エッジ/エッジサーバ(カスタマーエッジ+ネットワークエッジやMEC)/クラウドの3領域における、データ分量とコンピューティングパワーの配分が変わっていく様を示しています
その背景には、従来通りのインターネットだけで無く、5G網/6G網の存在があります
ここのNW帯域が太くなると、エッジとエッジサーバの間のデータ転送量に不自由が無くなり、大量データをこの区間で処理するようになるため、コンピューティングパワーが遠隔にあるクラウドでは無く、エッジサーバ(ないしはエッジ内)中心で演算処理を済ます構成になるという訳です
つまり、エッジコンピューティング全盛になると、クラウドからエッジ/エッジサーバへのオフロード(分配)が進むということです
そして、やがてはクラウドは「データの置き場所」が中心となり、コンピューティングパワーはクラウドにはあまり置かれず、エッジおよびエッジサーバ(特にネットワークエッジやMEC)に置かれるであろうと予測されています
Elixirがエッジコンピューティングに占める重要性
上記のような予測に対し、現実問題として、「クラウドが無いと開発できない」が横たわっています
現代は、そうしたエンジニアが数多く分布しており、ローカルDBすらキッティングしたことが無い若者も大勢います
そうした中で、クラウド無を前提とするエッジコンピューティング開発は果たして叶うのでしょうか?
2018年頃から私は、その課題にフォーカスし、Elixirがいかにクラウド無前提のエッジコンピューティング開発に適正を持つかを実案件を通じて、実証し続けています
また別コラムでは、Elixirがいかに未経験者の育成や見習い層、学生インターンのトレーニングに向いているかも述べています(私自身も現在、そうした層の育成を自ら買って出て、事業推進の中における高速育成メソッドをリードしている最中です)
この2点から導かれる結論は、
「Elixirであれば、短期間でエッジコンピューティングを攻略できる」
というシンプルな着想です
クラウドからエッジ/エッジサーバに拡がる未来
ここからは、上述したIBMレポートの①~⑤に対して、Elixirがどのように関わっていくかを紐解いていこうと考えています
その背景には、上記コラムに加え、以下2点の状況が存在する点も事前に共有しておきます
- a)最近のElixirエッジコンピューティングの状況
- b)生成AIの「分散学習」という新たなニーズ
a)最近のElixirエッジコンピューティングの状況
最近は、国内においてもElixirエッジコンピューティングに関する登壇イベントも開催されています
また国内プレイヤーの方々も、エッジコンピューティング開発に関するスライドやコラムを提供しています
2023年の海外Elixirコミュニティも交えた動画も下記でリストアップしています
b)生成AIの「分散学習」という新たなニーズ
今年、エッジコンピューティングには、生成AIの「分散学習」という新たな技術カテゴリで、これまでに無かったニーズも生まれています
詳しく知りたい方は、下記コラムをご覧ください
終わりに
今回は、IBMエッジコンピューティングレポートを元に、エッジコンピューティングに関する5つの軸の要約からスタートし、エッジコンピューティングの行く末を読み解き、Elixirがエッジコンピューティングに占める重要性についての概要を整理しました
次回は、 「②:今から始めるElixirエッジサーバ構築」 で、実践的なエッジコンピューティングの構築例をElixirで示していきます