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AIアートへの「嫌悪感」の正体

Last updated at Posted at 2025-09-02

巷ではAIが生成したイラストが大きな騒ぎになっている。
この新しい技術の奔流の中で、私はまず、我々が立っている場所を確認する必要があると感じた。

人類は常に、内なるイメージを外へと顕現させる術を求めてきた。洞窟の壁に描かれた手形から始まり、我々は道具を進化させてきたのだ。

『筆』の時代、

我々は自らの「感性」を物理的な絵の具でキャンバスに定着させる術を学んだ。

『デジタル』の時代、

我々はピクセルという新しい粒子を手に入れ、表現の幅を飛躍的に広げた。
しかし、これらの時代には常に、描く者の「技術」と「時間」という人間的な制約が厳然と存在していた。

そして今、『AI』の時代が到来した。

この新しい時代の光景を眺めながら、私の中にはいくつかの素朴な問いが生まれてきた。
「なぜ、これほど多くの人々がAIの絵に強い『嫌悪感』を示すのだろうか?」
「そもそも、我々を惹きつける『良い絵』とそうでない『悪い絵』の境界線はどこにあるのか?」
「AIの絵に時折感じる、あの名状しがたい『不気味さ』の正体は何なのだ?」

私は、その答えが人間の**「本能」と「無意識」**の領域に隠されていると考えている。

現在、AIアートに対する批判の多くは「著作権」や「雇用の喪失」といった社会的な問題に集中している。それらの議論が重要であることは論を俟たない。しかし、我々が感じる本能的な「嫌悪感」の根源は、もっと別の場所にある。

その原因とは、AIという強力な道具の本質を理解せぬまま、ただ**「脳死で引き金を引いている」**多くのユーザーのアプローチそのものだ。その結果生まれるのが、以下のような我々の「本能」が拒絶反応を示すアウトプットである。

『不気味の谷』の住人:

AIはしばしば、完璧な顔を描きながら指の数が六本あったり、骨格が歪んでいたりする。我々の脳は何百万年という進化の過程で「人体の僅かな異常」を瞬時に見抜く能力を獲得した。それは生存のための本能だ。AIが生成する僅かな「構造の欠陥」は、我々の無意識に対して、それが「病に侵された個体」あるいは「人間ではない何か」であるという危険信号を送り続ける。

『魂なき模倣品』:

多くのAIユーザーは「可愛い女の子」といった、きわめて曖昧な命令しか与えない。結果、AIはその知識の平均値、すなわち「どこかで見たような最大公約数的な美少女」しか出力できない。我々の本能は新しい刺激と予測不能な「物語」を求める。しかし、そこにあるのは魂のない、ただ美しいだけの「模倣品」の山だ。我々はその**『退屈さ』**に無意識のうちに嫌悪感を抱いているのだ。


補論:なぜ『魂なき模倣品』は量産されるのか

では、なぜ多くのAI絵投稿者は、この『退屈』な模倣品の山を築き続けてしまうのか。それは、彼ら自身がSNSというシステムが作り出した、二つの強力な**『呪い』**に縛られているからである。

呪い①:『毎日投稿』という名の強制労働
SNSのアルゴリズムは常に新しい「コンテンツ」を求める。フォロワーや「いいね」という名の「報酬」を得るためには、一日たりとも投稿を休むことは許されない。この**『毎日投稿』という強迫観念が、彼らから一つの作品とじっくり向き合い、試行錯誤する『探求』**の時間を奪い去るのだ。

呪い②:『過去の成功』という名の牢獄
そして彼らは、一度「いいね」が多くついた「構図」や「キャラクター」といった**『過去の成功体験』**に囚われてしまう。新しい表現への「挑戦」は、失敗して「いいね」を失うリスクを伴う。故に彼らはリスクを避け、過去の成功パターンを無限に擦り続けるという、最も安全で、そして最も創造性のない牢獄へと自ら足を踏み入れていくのである。


最終局面:創造性の焼却炉

そしてこの二つの「呪い」は、我々の文化全体を蝕む、恐るべき**『負の無限ループ』**を生み出す。

①『探求』の放棄
SNSの呪いに縛られたAI絵投稿者は、新しい表現への『探求』を放棄する。

②『模倣品』の量産
彼らは過去の成功パターンに基づく『魂なき模倣品』を、低コストで大量に生産し始める。

③『市場価値』の暴落
その結果、イラスト市場は安価な『模倣品』で溢れかえり、プロのイラストレーターが人生をかけて生み出してきた作品の**『市場価値』は暴落する。

④『才能』の焼却
正当な対価を得られなくなったプロの絵師たちは未来に絶望し、次々と筆を折っていく。それは我々の文化の未来を担うはずだった、貴重な
『才能』**が焼き尽くされる瞬間である。

⑤『学習源』の枯渇
その結果、AIが学ぶべき新しい高品質な「手描きの絵」が生まれなくなり、AI自身の進化もまた停滞する。

これが、負のループの正体だ。AI絵投稿者が自らの『探求』を放棄したその瞬間から、彼らは自らが愛するはずの「絵」という文化そのものを、内側から破壊し始めるのである。


【結論】

つまり、AIアートが嫌われている真の理由。それは社会的な問題だけでなく、多くのAIアートが我々の**「生存本能」が危険と判断するシグナル**を発しているからに他ならない。

そしてその背景には、SNSというシステムに魂を縛られ、自らの「探求」を放棄した投稿者たちが、無意識のうちに文化全体を破壊へと導く、この悲しい無限ループが存在するのである。

しかし、AI絵でも「良い絵」というものについて探求しようという志があればループから抜ける事ができる可能性はあるとは考えるが。

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