レビューをされる側、する側どちらもストレスを感じる。
PRのレビュー待ち。開発者なら誰もが経験する、あのモヤモヤ、ドキドキした時間です。
「いつレビューしてもらえるんだろう」
「どこを指摘されるんだろう」
「修正にどれくらい時間がかかるんだろう」
レビューを待つ側のストレスは想像に難くありません。
それと同時にレビューする側も同じくらい作業のストレスを抱えています。
- PRのコンテキストを理解する
- コード全体をチェックする
- 場合によっては実際に動作確認をする
AIがコードを書いてくれるようになっても、人間がコードをレビューするという工程はしばらくなくならないため、この負担が消えることはありません。
ではPRを作る側、レビュー側の両方の負担が小さくなり、お互いが幸せになるにはどうしたら良いのでしょうか?
解決策はシンプル:PRを小さくする
結論から言えば、PRをなるべく小さくして、レビュアーの負担を減らすことが最も効果的です。
レビュアーはPRレビューが自分に依頼されたことは認識しています。
ではなぜすぐにレビューをしてくれないのか。それは後回しにされているからです。
レビュー依頼の通知が来る→PRをさっと見る→「複雑そう。ちょっとめんどくさい。」→よし後で時間とってやろう!
エンジニアなら誰もがこのような行為を行ったことがあると思います。 自分もよくやります。(だめ)
しかし、すべてのPRで上記のように先延ばしするわけではないと思います。
例えば変数名が変わってるだけであったり、テストコードがちょっと追加されたとかだったり、内容が簡単であったり、小さかったりするとすぐに承認することができますよね。
要はそのPRが複雑で、時間がかかると思われているからすぐに見てもらえないわけです。(レビューのリソースが...プロジェクトのスケジュールが... とかは置いておいて)
レビューが遅いことがもたらす弊害は実は多い
上記のようにPRレビューが後回しになってしまう状態は、チーム、ひいては組織に思っている以上の不利益をもたらします。
1. リリースの遅延とビジネス機会の損失
まず、シンプルに**リリースが遅れます。**本来その変更が本番環境に反映され、ユーザーに価値を届けるはずだった時間が失われます。新機能であれば収益化の機会を逃し、バグ修正であればユーザー体験の改善が遅れます。レビュー待ちの1日が、ビジネスにとって大きな機会損失になっているかもしれません。
2. コンテキストスイッチングのコスト
レビューが遅れると、PRを出した開発者は別のタスクに取り掛かります。そして数日後にレビューコメントが返ってくると、「あれ、これ何だっけ?」と再度コンテキストを思い出す必要があります。このコンテキストスイッチングは想像以上に認知的負荷が高く、生産性を大きく低下させます。
3. マージコンフリクトのリスク増大
レビューが遅れている間に、他のPRがマージされていきます。時間が経てば経つほど、**コンフリクトが発生する可能性が高まります。**コンフリクトの解消には時間がかかり、場合によっては再度レビューが必要になることもあります。
4. チームの心理的安全性の低下
レビュー待ちが常態化すると、「どうせすぐにレビューされないし」という諦めの空気が生まれます。これはチームの心理的安全性を損ない、コミュニケーションの質を低下させます。逆に、スムーズなレビューサイクルはチームの信頼関係を強化します。
5. 技術的負債の蓄積
これは大きなPRの弊害になりますが、大きなPRは、レビュワーが細部まで確認できないまま承認されることがあります。「とりあえず動いているからいいか」という妥協が積み重なり、気づけば技術的負債が山積みに。小さなPRであれば、品質を担保しながら素早くマージできます。
これらの問題を解決する鍵は、やはり**「小さなPR」**にあります。次のセクションでは、具体的にどうすればPRを小さく保てるのか、実践的な方法を見ていきましょう。
具体的な実践方法
1. 10分ルールを意識する
レビューが10分以内で終わるサイズを目指しましょう。これは経験則ですが、10分を超えると集中力が途切れ、レビューの質も低下します。
単にレビュアーがコードを読む時間だけでなく、それらの内容をネットで調べたり、公式ドキュメントを参照したり、動作確認をしたりなどレビューに関わるそれらの時間をすべて含めて10分以内です。
2. 一つのPRには一つのコンテキスト
修正や追加する内容のコンテキストは、あくまで一つに絞ります。コンテキストや目的が異なる場合は、迷わずPRを分けましょう。
例えば:
- ❌ 「ログイン機能の改善 + UIの調整 + バグ修正」
- ✅ 「ログイン機能のバリデーション強化」「ログイン画面のレイアウト調整」「〇〇画面の表示バグ修正」
コンテキストが複数あると、今読んできる変更がどのコンテキストに対して必要なコードなのかが分かりづらく、レビュアーの負担になってしまいます。
3. セルフレビューを徹底し、PRを補完していく
PRを出す前に、何も知らない人になりきってレビューしてみましょう。
- コードだけでは読み取れないコンテキストがありませんか?
- 引っかかった部分はありませんか?
引っかかったところで参考文献を貼ったり、悩んだポイントをPRのコメントに残すことで、レビュアーの理解を助けます。
レビュアーになりきった状態で、そのレビュアーがどんなことを調べるだろうか?どこでレビューが止まるかを先読みするのです。
また、自分でも迷っている、あるいは微妙だと思っていることは背景も含めて、素直に変更行にコメントしてしまいましょう。
「このメソッド、命名もっと良いのないかな。」「ここちょっと複雑な気がしてる。」
このコメントがあるだけで、レビュアー側もどこを特に重点的に見れば良いか分かりやすくなるので、きっと濃いコメントを残してくれると思います。
4. 動作確認の記録を残す
どのように動作確認を行い、何を確認したのかを明記しましょう。
スクリーンショットやGIFアニメーションを添えるとより親切です。
レビュアーが手元で確認しようとしていることを先に確認しておいて、その記録を残しておきましょう。
5. 同様の変更は段階的に
多くの箇所に同じような変更を適用したい場合、いきなり全部を変更したPRを出すのは避けましょう。
推奨アプローチ:
- まず最小単位のPRを作成してレビューしてもらう
- それがOKなら、同じパターンを他の箇所に適用したPRを作る(この段階では大きくなってもOK)
最初の小さなPRでアプローチが承認されていれば、大きなPRも機械的な確認で済むため、レビュー時間を大幅に短縮できます。
6. 事前の擦り合わせを活用する
上記の工夫以外にも、顔を合わせて事前にPRの説明を行なってしまう、というのもひとつの有効手段だと思います。
デイリーハドルやモブプログラミングの時間を使って、ドラフトPRをチームメンバーに説明しておきましょう。事前に方向性を共有しておくことで、正式なレビュー時の負担が軽減されます。
まとめ
「レビューが遅い」という課題は、実はレビュアー側だけの問題ではありません。PRを作る側の工夫次第で、チーム全体の開発速度は劇的に改善します。
小さく、明確で、文脈が整理されたPRは、レビュアーにとって「すぐに見たくなる」PRです。後回しにされず、素早くフィードバックが得られることで、あなた自身の開発サイクルも加速します。
レビュアーへの配慮は、回り回って自分自身への配慮になります。なぜなら、あなたも誰かのPRをレビューする側になるからです。チーム全体で「レビューしやすいPR文化」を育てることで、全員が恩恵を受けることができます。
明日からではなく、今日から。次のPRで「10分でレビューできるサイズ」を意識してみませんか?
その一歩が、チームの開発体験を変える第一歩になるはずです!