衛星画像からペンギンを追跡
南極の氷の上で暮らすコウテイペンギンたち。彼らは気候変動の「センチネル(見張り役)」と呼ばれていますが、過酷な環境ゆえにその生態を長期的に追跡することは困難でした。
しかし最新の研究(Lin et al., 2025)により、衛星画像と機械学習を組み合わせた画期的な手法が登場しました。今回は、宇宙からの視点で判明したペンギンの「引越し事情」と気候変動の関係について解説します
どうやって宇宙からペンギンを見つけるのか?
研究チームが注目したのは、ペンギンそのものではなく、彼らが残す「グアノ(糞)」の痕跡でした。 白い氷の上に残されたグアノの特徴的なスペクトルを、Landsat 8衛星の画像から検出する「グアノ指数」を開発。これをランダムフォレスト(機械学習モデル)で解析することで、94.8%という高い精度で繁殖地の特定に成功しました
データが語る「極端気象」の影響
2013年から2023年にかけて10箇所のコロニーを分析した結果、以下の事実が判明しました
- 4つの脅威:「熱波」「ブリザード」「嵐」「海氷の減少」という極端な気象イベントが、ペンギンの生息地に大きな影響を与えています
- 生息地の断片化:極端な気象に見舞われたコロニーは、生息地が分散(断片化)しやすく、同じ場所を3年以上使い続けることが困難になっています
- 移動距離の増加:気象条件が悪い年、ペンギンの生息地は 4km以上も移動・分散することがわかりました
未来へのシミュレーション
この研究は、将来のシナリオも提示しています。化石燃料に依存した高排出シナリオの場合、クリーンエネルギー主導の低排出シナリオと比較して、温暖化による生息地の断片化がさらに 255メートル拡大すると予測されています
まとめ
AIと衛星技術による自動化されたモニタリング手法は、SDGs(特に気候変動・海の豊かさ・陸の豊かさ)の達成に向けた強力なツールとなりえます。テクノロジーの進化で、気候変動の影響が南極の生態系にも影響を与えていることをまざまざと感じさせます。昨今の災害の多さも相まって、気候変動は予断を許さない状況なのかな?と思わせるものとなっています。
