ペンギン遊泳メカニズム
ペンギンの泳ぎを解析すれば、ロボットにも応用できるんじゃないか?
そういう研究です
ひとことで言うと?
ペンギンの翼はただの硬い板ではありません。東京工業大学などの研究チームが、ジェンツーペンギンの泳ぎを3D解析した結果、翼を絶妙に「しならせる(bending)」ことで、推進効率をなんと 1.8倍も高めていることが判明しました
どんな課題があったの?
ペンギンが水中を飛ぶように泳ぐ能力が高いことは知られていましたが、具体的に翼(フリッパー)をどのように動かし、水を捉えているのか、その「3次元的な動き」や「翼の変形」がどう役に立っているのかは、これまで詳しくは分かっていませんでした
水は空気の800倍以上の密度があるため、ペンギンは強い浮力に逆らって身体を沈める力と、前に進む力の両方を生み出す必要がありますが、その力学的なメカニズムには謎が残されていたのです
この研究は何をした?
研究チームは、長崎ペンギン水族館の協力のもと、水中カメラを複数設置してジェンツーペンギンの泳ぎを撮影しました
撮影した映像から最新の「3Dモーション解析」を行い、以下の2つのモデルを使って推進力や効率を計算・比較しました
- オリジナルモデル: 実際の観測データ通り、翼の**「しなり(曲がり)」を含めた**リアルなモデル
- 平板モデル: もし翼が変形せず、硬い板のままだったと仮定したモデル
何がわかった?
解析の結果、以下のような事実が明らかになりました
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1. 翼を上げるときも加速している
ペンギンは翼を振り下ろす(ダウンストローク)ときだけでなく、振り上げる(アップストローク)ときも前に進む力を生み出していました。さらに、振り上げ動作の方が、より大きな推進力への貢献が見られました -
2. 「しなり」が効率を劇的に上げる
翼は、特に振り上げる動作中に大きく「しなっている(bending)」ことが分かりました。このしなりがあるおかげで、翼が水に当たる角度(迎角)が最適化され、無駄な抵抗を減らすことができました -
3. 効率が1.8倍にアップ
計算の結果、翼をしならせる「オリジナルモデル」は、しならない「平板モデル」に比べて、推進効率が1.8倍も高いことが判明しました。翼を柔軟に変形させることで、エネルギーを無駄にせず賢く泳いでいることが科学的に証明されたのです
私たちの生活にどう関係する?
この研究成果は、ペンギンのように泳ぐ「水中ロボット」の開発に大きく役立ちます。
従来の硬いプロペラやスクリューではなく、ペンギンのような柔軟に変形する翼を持つロボットを作れば、より少ないエネルギーで長時間、効率よく泳げるようになるかもしれません。生物の動きを真似る(バイオミメティクス)ことで、次世代の海中探査技術などが進化する可能性があります
まとめ
ペンギンの泳ぎ方にこんな秘密があったのは興味深いですね。生物の動きを真似ることは他にも色々ありますが、ペンギンが世のため人のため役立つというのは、単なるかわいいだけの存在じゃないってことで、とてもいいことだなと思いました。
