マゼランペンギンを追って
アルゼンチン調査レポート(2025年3月)
アウクスブルク動物園(Zoo Augsburg)の支援を受け、研究者のエリック・ワグナー博士とコンピュータースペシャリストのパール・ウェリントン氏は、2025年3月上旬にアルゼンチンのプンタ・トンボへ渡り、繁殖シーズンの終わりに合わせた約2週間のフィールド調査を行いました
今回の目的は、コロニーを離れて渡りを始める前のマゼランペンギン(オス・メス)に、計20個の「位置・深度記録タグ(GLDタグ:geolocating time-depth recorder)」を装着することでした
衛星タグからGLDへ
Boersma Labは2022年から、マゼランペンギンの渡り行動と生息地利用に関するデータ収集を継続してきました
最初の3年間は衛星タグを用い、ペンギンが「どこにいるか(位置)」を把握してきましたが、位置情報だけでは、移動中に海中でどのように行動しているか(例:どの深さまで潜っているか)までは分かりませんでした
そこで今回導入したGLDタグの重要な点は、ペンギンの「位置」に加えて「潜水深度」も記録できることです。
位置情報と潜水行動を結びつけることで、渡りの途中でどのような海域特性(海洋環境の特徴)が重要なのかを、より細かな解像度で示せるようになると期待されています
混雑している海域での保全に向けて
渡りの途上でマゼランペンギンが泳ぐ南米沿岸の海は、石油開発や将来的な油田リース、漁業など、多様な人間活動が重なる「混雑している」海域です
そのため、ペンギンがどこを通るかに加えて、海の中のどの深さを使っているかまで把握できることは、保全と管理にとって重要な情報になります
小型・足首装着、ただし回収が必須
GLDタグは衛星タグより小型で、ペンギンの足首に装着できる点が利点として挙げられています
一方でこれらはアーカイブ式(ロガー型)であり、データを自動送信せずタグ内部に保存するため、解析にはタグの回収が必要不可欠です
次回は2025年10月
研究チームは10月に再びプンタ・トンボを訪れ、GLDタグを回収しています
回収されたデータから、ペンギンたちの渡りの道のりと、潜水による「上下動(ups and downs)」がどのように組み合わさっているのかが明らかになることが期待されています
渡り追跡プロジェクトの詳細は、Boersma Labの「Penguin Migration Tracking」ページでも紹介されています
まとめ
人間の営みが生物に与える影響は計り知れないものがあります。そういう影響をITを使うことで可視化し、お互いに不幸な結果にならない未来を目指せれば良いなと思います。
