概要
インターネットの世界では、IPアドレスとドメインは重要な役割を果たしています。IPアドレスはインターネット上のデバイスを一意に識別するための数字の列です。一方、ドメインは人間が覚えやすいように設計されたウェブサイトの名前です。
IPアドレスは、インターネットのネットワーク層で使用されます。ネットワーク層は、OSI参照モデルの第3層に位置し、データのルーティングと転送を担当します。IPアドレスは、この層でデバイス間の通信経路を決定するために使用されます。IPアドレスを基にして、パケットが送信元から目的地まで効率的にルーティングされることが可能となります。
本記事では、IPアドレスとドメインの関係、および名前解決の仕組みについて詳しく説明します。
IPアドレスとドメインの関係
IPアドレスとは
IPアドレス(インターネットプロトコルアドレス)は、コンピュータネットワーク上でデバイスを識別するための一意の番号です。通常、IPアドレスはIPv4またはIPv6形式で表されます。IPv4アドレスは32ビットのアドレス空間を持ち、約43億個の一意のアドレスを提供しますが、インターネットの急速な普及により枯渇が懸念されています。これに対し、IPv6アドレスは128ビットのアドレス空間を持ち、ほぼ無限に近い量のアドレスを提供します。
ドメインとは
ドメイン名は、IPアドレスに対応する人間が理解しやすい名前です。例えば、「www.example.com」というドメイン名は特定のIPアドレスに対応しています。ドメイン名は、ウェブサイトにアクセスする際にユーザーが使用するもので、覚えやすいという利点があります。ドメイン名は階層構造を持ち、トップレベルドメイン(TLD)、セカンドレベルドメイン(SLD)、サブドメインの順に構成されます。例えば、「www.example.com」では、「.com」がTLD、「example」がSLD、「www」がサブドメインです。
名前解決の仕組み
名前解決とは、ドメイン名を対応するIPアドレスに変換するプロセスのことです。このプロセスはDNS(Domain Name System)によって行われます。DNSは、巨大な分散データベースのようなもので、ドメイン名とそれに対応するIPアドレスのマッピング情報を保持しています。
名前解決の基本的な流れは次の通りです:
- ユーザーのリクエスト: ユーザーがブラウザにドメイン名を入力すると、ブラウザは最初にキャッシュを確認して、対応するIPアドレスがすでに保存されているかどうかを調べます。キャッシュは、以前にアクセスしたウェブサイトの情報を一時的に保存しており、名前解決の速度を向上させるために利用されます。
- DNSリゾルバへの問い合わせ: キャッシュに情報がない場合、ブラウザはDNSリゾルバ(通常はインターネットサービスプロバイダが提供するサーバー)に問い合わせを行います。DNSリゾルバはユーザーの代理として名前解決を行う役割を担います。
- ルートDNSサーバーへのアクセス: DNSリゾルバはまずルートDNSサーバーに問い合わせを行います。ルートDNSサーバーはインターネット上に13個存在し、全てのドメイン名の最上位に位置します。ルートサーバーは、次に問い合わせるべきTLDサーバーの情報をDNSリゾルバに提供します。
- TLD DNSサーバーへの問い合わせ: 次に、DNSリゾルバは取得した情報を基に適切なTLD DNSサーバーに問い合わせを行います。例えば、「.com」ドメインに対する問い合わせであれば、「.com」TLDサーバーにアクセスします。TLDサーバーは、次に問い合わせるべき権威DNSサーバーの情報を提供します。
- 権威DNSサーバーへの最終問い合わせ: 最後に、DNSリゾルバは権威DNSサーバーに問い合わせを行います。権威DNSサーバーは特定のドメイン名に対する最も信頼性の高い情報を保持しており、最終的なIPアドレスを提供します。
- IPアドレスの取得と接続: DNSリゾルバは取得したIPアドレスをブラウザに返し、ブラウザはそのIPアドレスを使用して目的のウェブサイトに接続します。
この一連のプロセスは通常、数ミリ秒から数秒以内に完了し、ユーザーはほとんど遅延を感じることなくウェブサイトにアクセスすることができます。
DNSキャッシュとTTL
DNSキャッシュは、DNSクエリ結果を一時保存する仕組みです。これにより、同じドメイン名のリクエストが再度発生した場合、迅速にIPアドレスを取得できます。キャッシュを利用すると、DNSリゾルバへの問い合わせ回数が減り、ネットワークのパフォーマンスが向上します。
TTL(Time To Live)はキャッシュデータの有効時間を指定します。TTLにより、一定期間後にキャッシュ情報が更新され、IPアドレスの変更やDNS情報の更新が反映されます。例えば、ウェブサイトのIPアドレスが変更されても、TTLが短ければ新しいIPアドレスが迅速に反映され、ユーザーが正しいサイトにアクセスできます。
DNSキャッシュはブラウザ、オペレーティングシステム、ISPのDNSリゾルバで管理されます。各レベルでキャッシュが存在することで、DNSクエリの処理が効率化されます。ただし、キャッシュ情報が古くなると誤情報のリスクがあるため、TTL設定が重要です。
ネットワークの変更などで公開サーバのIPアドレスに変更が発生する場合、このDNSキャッシュとTTLが問題で新しいIPアドレスが適用されないことがあります。
公開サーバのIPを変更する場合、事前にTTLを短く設定しておく必要があります。個人的な感覚ですが、TTL初期値の状態でIPアドレスを変更すると、完全に新しいIPアドレスへ切り替わるために1~2週間くらいの時間が必要なことがありました。
まとめ
IPアドレスとドメインは、インターネット上でスムーズな通信を実現するために不可欠な要素です。普段IPアドレスを意識してインターネットを利用することは少ないかもしれません。
Windows上でUbuntuを起動したときなど、新たにネットワークへ接続したときにインターネットが利用できないことがあります。
こんなとき、DNSを利用した名前解決ができているかを確認すると、問題解決の一助となるのではないでしょうか。