1. はじめに
攻めの品質、守りの品質と言ったときの「攻め」には意味がいくつかあるようです。
2. 攻めの品質、守りの品質
「基礎から学ぶQMSの本質 第5回 品質の捉え方その2(2016-2-22)」によると「利益=売り上げ-原価」において
- 守りの品質:品質コストの総費用を極力抑える品質管理活動
- 攻めの品質:売り上げを増加させるための活動
と呼んでいます。
「基礎から学ぶQMSの本質 第6回 品質を経営の中心に据える(2016-2-29)」では攻めの品質を以下2つ取り上げ、
- (コンビニエンスストアのコーヒーが100円なのに対して)スターバックスは“ひとりでホッとできる空間”という顧客価値を提供することによって,通常の3倍以上の値段もするコーヒーが売れている
- 美容電化製品としてのドライヤーは,街中の電気量販店の最安値で2千円弱で買えますが,それが“家で気楽にエステができる”という顧客価値を訴えてそれに適した商品にすることで,その10倍の2万弱の値段での販売に成功
次のようにまとめています。
いずれの例も,これまで顧客自身でさえも気が付かなかったようなニーズを満たす商品(=品質の良い商品)を市場に送り出すことによって,市場価格よりずっと高値で売ることができます.
これは,“売り上げ”に大きく貢献します.
なお、この記事ではこれまで顧客自身でさえも気が付かなかったようなニーズを満たす「市場開拓型の商品」をどうやって実現するかは触れていません。ただ、少なくとも品質管理(後工程に欠陥を流出させない取り組み)のやり方で潜在ニーズを具現化するのは難しそうです。潜在ニーズの具現化も品証部門の役割とすると品質エンジニアは品質管理だけでなくマーケティングやプロダクトマネジメント、価値工学1といった分野も手を出すことになるのではと思います。
3. 営業における「攻めの品質」
品証部門の外に目を向けるとこういった説明もあります。
むしろ、お客様の不満・不安を積極的に収集すること、それを解決する商品を提案することで新しい市場を開拓するのです。
これを「不」のマーケティングと呼んでいます。
これこそが営業における「品質でもうけなさい」のコンセプトです。
(『品質でもうけなさい』9-6.守りから攻めの品質管理 | Apérza News(アペルザニュース) | ものづくり産業向けニュースサイトより)
「不」のマーケティングといえば「リクルート「創刊男」の大ヒット発想術(くらた まなぶ 著)」が思い出されるトコロですね。
4. 攻めのQA
「「受身から攻めのQA」に至るまでの道のり | BLOG - DeNA Engineering」では「QA担当も事業の中に入り、開発初期からのメンバーとして一緒に担当していくこと」を攻めのQAと呼んでいます。また、「マネーフォワードのQAらしさ〜プロダクト開発のパフォーマンスを最大化する攻めのQA〜|Morita Masami @MoneyForward|note」では修正コストを削減して「プロダクトチームのパフォーマンスを最大化する」ことを攻めのQAと呼んでいます。
品質コストを下げる取り組みは「守りの品質」ですが、「手戻りを減らす→デリバリが短縮する→顧客のニーズをいち早く満たす→前倒しで売り上げを立てられるようになる」と解釈すると「攻めの品質」と言えるかもしれません。
5. 切っても切れないQAとお金の話
「「受身から攻めのQA」に至るまでの道のり | BLOG - DeNA Engineering」に
成果の可視化を色々な視点で実施してきましたが、やっぱりコストで示すのが一番有効でした!
とあり、QAはお金の話から逃れられないのだなと思いました。実際、QAは技術部門に限らず様々な部門と協働する機会が多い2こともあり成果をお金で表すことがしばしば求められます。
6. 品証部門に期待される攻めの品質
「基礎から学ぶQMSの本質 第5回 品質の捉え方その2(2016-2-22)」は
品質保証,品質管理部門が品質を追求することの社内の旗振り役であるならば,守りの品質に留まらず,攻めの品質に力点を置くことが期待されているのです.
と締めくくられています。
ここで攻めの品質に力点を置くことを仮に
- 潜在ニーズまで深掘りして具現化する
- マーケティング、プロダクトマネジメント、価値工学
- 不満、不安を解決する
- 「不」のマーケティング
- 手戻りを減らしてデリバリを加速し早く売り上げを立てられるようにする
- シフトレフト
とすると品質エンジニアはやることがたくさんありますね。また、経営層や品証部門のマネジメント層は攻めの品質の期待に応えられる部門運営を求められるものと思います。
7. おわりに
QAは攻めの品質まで役割を広げると商品企画や事業企画までスコープが広がって品証部門に閉じこもっていたらできない仕事ですね。品質に関して利益に貢献することは何でも開き直って攻めてみたいと思いました。
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品質管理は基本的にはマイナスを減らす取り組みでありプラスを生むのは管理技術で言えば価値工学です。「品質エンジニアにオススメする三大管理技術(IE, QC, VE)」も併せてどうぞ。 ↩