0
1

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?

Claude Code の要約で"わかったつもり"になっていたので、対策のスキルを作った

0
Posted at

「要約して」だと、わかったつもり で止まる

技術記事や論文、難しめの概念を前にしたとき、自分はよく Claude Code に「要約して」と頼んでいました。返ってくる要約はきれいで、読めば筋は追える。説明しろと言われれば、だいたいの筋は自分の言葉でも言えます。問題は、その「だいたい」のほうでした。

人に説明していて「それってどういうこと?」ともう一段詰められると、自分の言葉が元の意味から微妙にずれていたことに気づく。ある用語を説明するとき、自分が選んだ一語が元の意味と逆を向いている、みたいなズレは、要約を読むだけでは自分では見つけられません。理解が"わかったつもり"のところで止まっていて、そこから先へ自力で踏み込めていませんでした。

要約してもらった時点で、論理を組み立て直して言葉のズレを潰す作業を、丸ごとAIに肩代わりしてもらっていたからです。そこを自分でやらないと精度は上がらない。だったら逆に、答え(結論)だけは最後まで渡さず、ズレている方向だけを一語単位で突いてくるAIがあればいい。そう思って作ったのが kpab/socratic-comprehension という Claude Code 用のスキルです。

ソクラテス式問答法を下敷きにした

設計の下敷きにしたのがソクラテス式問答法です。学習法の文脈で「ソクラテス・メソッド」として知られているあれですが、もともとは古代ギリシアの探究と対話の方式で、いくつか自分の設計に直結する要素がありました。

ひとつが産婆術(maieutics)です。相手の中に潜んでいる理解を、教え込むのではなく問いによって外に取り出す。先生が答えを配るのではなく、相手に産ませる。「結論を渡さない」という方針はここから来ています。

もうひとつが反駁(エレンコス)です。相手の主張に追加の前提を重ねていって、その主張の中に潜む矛盾やズレをあぶり出す技法です。やさしく解説するのではなく、ズレているところを正面から突く。スキルの「言葉のズレを一語単位で指摘する」挙動は、これを実装に落としたものです。

そして無知の知。自分が分かっていないことに気づくのが理解の第一歩だ、という考え方です。「要約を読んで分かった気になっている状態」はまさにここで、知っていると思い込んでいるが実際は説明できない。この状態を自覚させるところからしか始まらない、という前提でスキルを組みました。

スキルが何をするか

SKILL.md には、スパーリング相手として振る舞うための手順を段階で書いています。要点だけ挙げると、こういう流れです。

最初に目的を切り分けます。ユーザーが「理解したい」のか「成果物(要約・記事)がほしいだけ」なのかを最初に一度だけ確認する。理解用に組んだ手順は、成果物だけほしい人の邪魔になるからです。

理解モードに入ったら、いきなり質問1から始めず、まず全体像(スケルトン)を見せます。対象を主張と推論のステップ(ノード)に分解して、「この順で組み上がっている。1ノードずつ自分の言葉で言い直してもらう」と道筋を先に示す。

あとは1ノードずつ進めます。各ノードで「ここを自分の言葉で言い直して」と促し、ユーザーが書くまで模範解答を先に書かない。そしてズレを突く。「なんとなく違う」ではなく、方向を取り違えている一語を名指しする。ヒントを求められても結論は出さず、言い換え・たとえ・誘導質問で方向だけ示す。

仕上げに用語テストと批判レイヤーがあります。キーワードを元の言い回しを借りずに一文で定義させる。そして「理解と納得は別」として、再構築が終わったあとに「で、これに賛成?引っかかりは?」と論点を引き出す。最後に成果物がほしいと言われて初めて文章化しますが、そのときも一般的な要約には逃げず、スパーリング中にユーザー自身が口にした言葉を骨にして書きます。

実際に使ってみる

題材は「問答法」そのものにしました。ちょうど問答法を解説した文章を読んでいて、分かった気はするのに人に説明できる気がしなかったからです。問答法の解説を、問答法スキルで噛み砕く。少しメタですが、題材としては都合がよかった。

以下は実際のセッションを、読みやすさのために短縮したログです(自分: が入力、skill: がスキルの応答)。

まずスキルは答えを出さず、全体像(スケルトン)とノード1を振ってきます。

自分: 問答法の解説、分かった気はするけど人に説明できる気がしない。
      腹落ちさせたい。
      (解説文)

skill: 答えはこちらから書かない。まず全体像から。この文章はこの順で
       組み上がってる。
       ノード1: 問答法とは何か。ディベート(打ち負かす)との違い。
       ノード2: 3つの目的(前提を疑う/定義を明確に/矛盾をあぶり出す)が、
                なぜ「正しい理解」に繋がるのか。
       ノード3: 「論破ではない」と「無知の知」。← 急所。
       ノード4: ロジカルとクリティカルの層の違い。
       1ノードずつ「自分の言葉で言い直して」と振る。なぞりはNG。

       ノード1。問答法とは何か、ディベートとの違いも込みで、元の一文を
       そのまま使わずに言い直して。

自分: 相手を打ち負かすのが目的じゃない。自分の認識が違うと自覚するのが目的。

skill: 「攻撃の矛先が外(相手)か内(自分の思い込み)か」は掴めてる。
       ただ"やり方"が抜けてる。ひとりで本を読んで「分かってなかった」と
       気づくのも"認識が違うと自覚"だよね。それと問答法は何が違う?

自分: 問答法は対話である。

skill: 「対話」がさっき抜けてた語。でもまだ広い。雑談も対話だよね。
       問答"法"という名前は、もっと狭い形を指してる。その形は? 名前に書いてある。

自分: 問答? 問いと答え。

skill: それ。問答=問い+答え。node1クリア。

ノード1からして、自分は「対話」という核の語を最初に落としていました。要約を読んだ時点では気づけなかったズレが、言い直させられて初めて見えました。

skill: ノード2。あの3つをやると、なぜ「正しい理解」に近づく? 並べ直すんじゃ
       なく、3つと"正しい理解"の繋がりを自分の言葉で。

自分: ヒント。

skill: 方向だけ。5択問題で正解が分からないとき、どう近づく? 確実に違うのを
       消して残りに賭けるよね。その目で3つを見て。これは答えを手渡してる?
       別の何かをしてる?

自分: 消去法ってこと?

skill: 3つとも消去法の動作だと見抜けた。最後まで言って。消し終わったあと
       残るのは何で、なぜ"より正しい"? (文章は「正しい」じゃなく
       「より正しいに"近づく"」だった。なぜ言い切らない?)

自分: 違う理解を排除して、残ったものが正しい可能性が高いという考え方。

skill: 「正しい」と言い切らず「可能性が高い」と置いた、そこが効いてる。
       だから言い切れず"近づく"。node2クリア。

ヒントを求めても結論は出てこず、5択のたとえで方向だけが返ってくる。ここが「答えを渡さない」の具体的な手触りです。そして次が急所のノードでした。

skill: ノード3、急所。さっき自分で「矛盾をあぶり出す」と言った。相手の矛盾を
       突いて崩す、それ見た目は完全に論破だよね。なのに文章は「論破ではない」
       と言う。同じ"突く"動作なのに、論破と問答法を分けてるものは何?

自分: 否定しないこと。

skill: 一語、向きが逆。問答法はめっちゃ否定する。矛盾を突く=否定、消去法=
       否定の連続。「否定しない」は自分が組んだ中身と食い違う。立て直す。
       論破も問答法も主張は否定する。違いは"否定の矛先"がどこに向くか。
       node1の「外か内か」を使って。

自分: 内に向く、自分に。

skill: 一語詰める。矛先が当たるのは"自分"という人? それとも"思い込み"そのもの?
       「論破ではない」と言える根拠はそこで決まる。

自分: 思い込みの方だね。

skill: そこが急所。刃は"人"じゃなく"思い込み"に当たる。だから「お前が間違ってる」
       にならず、論破にならない。で、思い込みが崩れた瞬間、本人は何に気づく?
       名前(無知の知)は置いといて、中身を。

自分: 認識の違い。

skill: それnode1の言葉に戻ってる。「違い」じゃ弱い。穴埋めで方向だけ。
       「分かってた"つもり"だったのに、実は ___ だった」。この一語は?

自分: 無知。

skill: それ。"違い"じゃなく"無い"。分かってたつもりの土台ごと無かったと
       気づく、これが無知の知の中身。node3クリア。

自分が口走った「否定しないこと」を、スキルは「一語、向きが逆」と即座に止めます。問答法はむしろ否定の連続で、論破と分けているのは"否定の矛先"だけ。このズレは、要約を読んでいるだけでは気づきませんでした。続く「認識の違い」も node1 の言葉への逃げで、「違いじゃ弱い」と突き返されています。

skill: ノード4。ロジカルもクリティカルも説明に「前提」が出てくる。でも扱いが
       違う。それぞれ"前提"をどう扱ってる?

自分: 1は話の中の前提と結論。2は話自体が正しいかどうかの前提。

skill: 層を分ける嗅覚は合ってる。具体例で詰める。
       「前提:売上減は広告費不足のせい。結論:だから広告費を増やせば戻る」。
       筋は通ってる、ロジカルはこれを通す。でも本当の原因が「商品が時代遅れ」
       なら、筋が通ってても丸ごと外す。これを捕まえるのはどっち? ①が
       触らないものを名指しして。

自分: クリティカルの方。

skill: 正解。でも「名指し」が残ってる。①が当然と受け入れて触らず、②が疑いに
       いく、その対象は一語で何?

自分: 話の前提。

skill: それ。①は前提を受け入れて筋だけ見る(枠の中)。②は前提そのものを疑う
       (枠の外)。node4クリア。4ノード全部、自分の手で登り切った。

最後は用語テストと批判レイヤーです。

skill: term test。元の文を借りず、「問答法とは何か」を一文で。今日掘った言葉
       (問い・思い込み・無知・前提)を使って。

自分: 問答法とは、問いと答えの対話を重ね、自分の思い込みに気づく手段。
      論破とは違い、人ではなく思い込みを否定する。

skill: 合格。見逃せないのは、最初「否定しないこと」と言ったのを、ここでは
       「人ではなく思い込みを否定する」に直してる。否定はする、でも的が違う、と。
       さっき自分で崩した誤りを定義に組み直せてる。丸暗記じゃ起きない。

       最後、critique layer。理解と納得は別。この主張に賛成? 引っかかりは?
       身につけたクリティカルで、文章の論を一回殴ってみて。

自分: 問答法がビジネスで使えるかはわからない。

skill: そこで保留できるのがクリティカル。さらに前提を疑うと、文章は
       「ロジカルとクリティカルを"含んでる"から役立つ」と言う。でも、その2つが
       役立つなら直接鍛えればいい。「問答法じゃなきゃダメな理由」を文章は示してる?

この最後の問いで自分は一度ギブしました。ただ理解の本体はもう終わっていて、ここは論への賛否の層です。スキルも無理に絞らず、狙っていた穴(「(ロジカルとクリティカルを)含んでいる」から「だから使える」への接続が一段ゆるい、という飛び)を示して一周を終えました。

セッションのあとに成果物(説明文や記事)を頼むと、スキルは一般的な要約に逃げず、ここで自分が口にした言葉(「刃は人じゃなく思い込みに当たる」「分かってたつもりが実は無知」「前提そのものを疑う」)を骨に書きます。この記事のデモ部分自体、そのログを整形したものです。

インストール

Claude Code のプラグインとして入れる場合はこの2行です。

/plugin marketplace add kpab/socratic-comprehension
/plugin install socratic-comprehension

skills.sh の CLI でも入ります。全プロジェクトで使いたいなら --global を付けます。

npx skills add kpab/socratic-comprehension --global

手動で置くなら skills/socratic-comprehension/ を自分のスキルディレクトリ(~/.claude/skills/socratic-comprehension/)へコピーするだけです。

「これどういうこと」「腹落ちさせたい」「噛み砕きたい」あたりの言い回しで自動的に起動します。逆に「要約して」「記事にして」のように成果物を明確に頼むと、手順には入らず目的を一度確認してきます。

なぜ腹落ちしたか

効いたのは、要約が出てこないことでした。結論をもらえないので自分で言葉にするしかなく、言葉にして初めて、どこを分かっていなかったかが一語単位で見える。「論破とは否定しないこと」と書いた自分を、スキルは「否定はする、的が違うだけ」と止めました。普段なら曖昧なまま流していたズレです。

やっていること自体は、産婆術(結論を渡さない)と反駁(ズレた一語を突く)を実装しただけで、手法としては古い。違うのは、それを常駐のスパーリング相手として隣に置ける点くらいです。

要約で済ませる癖がある人ほど、一回これに通すと「分かったつもり」と「説明できる」がどれだけ離れているか分かると思います。リポジトリは kpab/socratic-comprehension に置いてあります。

※デモは実際のセッションのログを、読みやすさのために短縮・整形したものです。応答は対象や入力によって変わります。

0
1
0

Register as a new user and use Qiita more conveniently

  1. You get articles that match your needs
  2. You can efficiently read back useful information
  3. You can use dark theme
What you can do with signing up
0
1

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?