こんにちは。三菱電機の大内です。
今回は、2023年11月13日に開催された国際イベント「InnerSource Summit 2025」についてご紹介します。
公式サイトはこちら → InnerSource Commons
イベントについて
このイベントは、InnerSource Commons Foundationが主催していて、今年で設立10周年を迎えたそうです。
記念すべき節目の年として、横浜(三菱電機)、ベルリン(SAP)、ニューヨーク(IBM)の3都市をリレー形式でつなぎ、21時間にわたって開催されました。この方式は「Follow the Sun」と呼ばれ、アジアでの開催は今回が初めてだそうです。
横浜の会場は三菱電機の共創空間「Serendie Street Yokohama」で行われ、海外からの参加者も含め約100名が集まりました。
私は横浜の会場で参加しましたが、オンラインもあり、会場が休憩時間の間はオンライン参加者向けにラジオ放送っぽくゲストとのトークセッションをやってました。日本からドイツへバトンタッチをするときにはドイツの会場とのやりとりもあり、とてもエキサイティングなイベントでした。
インナーソースとは?
インナーソースは、オープンソースの開発手法を企業内に取り入れることで、組織の壁を越えた共創活動を促進する取り組みです。ソースコードだけでなく課題も共有し、組織の壁を超えて相互にコード修正や解決策などのコメントを行うことで、開発効率の向上と高品質な成果物の提供を目指す活動になります。
インナーソースを効率的に運用するには、情報の透明性を確保して組織の壁を取り払い、新規貢献者の参加障壁を下げて活動を長期的に継続できるようにすることが大切です。自発的な貢献を促す環境づくりが、インナーソース成功の鍵になります。
講演内容のポイント
当日は、複数の企業や団体からの色々な観点から発表があり、インナーソースの実践やその意義について掘り下げられました。一部の講演については、YouTube で配信されていますので、ぜひ「InnerSource Summit 2025」で検索してみてください。
企業事例の紹介
企業事例では、インナーソースを推進するための具体的な取り組みが紹介されました。
まず、組織の文化を育てながら、プロセスの合理化やインセンティブの仕組みを整備し、品質管理といった価値の循環を実現した事例が紹介されました。さらに、チームレベルでの活動を確立し、貢献ガイドラインの作成や社内ワークショップの開催を通じて、インナーソースを根付かせる取り組みも具体的に語られました。
こうした活動では、明確なプロセスや透明性、心理的安全性を担保しながら、社員の貢献を促進した実例も紹介されて、実践的なノウハウが伝えられました。
中でもInnerSource Heroというキャラクターを誕生させて歌も作り、活動を推進しているのはユニークな活動だと思いました。
組織文化と意識改革
講演では、意識改革の重要性についても話がありました。
単なる技術的な実装だけではなく、組織文化そのものの変革が必要だということです。
また、指標に頼るのではなく、行動科学や経験設計といったアプローチを用いて、人のモチベーションを高め、自然とソフトウェアの品質向上につなげる手法も紹介されました。
人事院からは、「未来を築く技術者と組織の変革力」に焦点を当て、組織づくりの根幹に関わる課題や、リーダーシップに必要な感情知性(EQ)について日本の観点から解説されました。特に、自分の仕事を客観的に評価するために脳内ヘリコプターで上昇して上から眺めて見るというお話しは面白いと思いました。あと、「同じプロジェクトのメンバーへ自分へのフィードバックを尋ねてみることが大切」というお話にはとても共感しました。
課題と解決策
ライセンス、セキュリティ、ガバナンス、法務・会計などの課題に対し、「オープンソース・プロセス管理」の枠組みを活用した解決策が提案されました。
価値の測定
「measure-innersource」というツールを用いた具体的な評価方法が紹介されました。
このツールは、組織構造のデータを活用し、クロスチームの参加率や貢献の詳細(コードの質と深さ)、複数リポジトリにまたがる分析といった主要な指標を測定し、インナーソースの効果を定量的に把握できます。
AIとの連携
インナーソースの情報を効率的に活用するため、AIを活用した基盤構築の必要性が示されました。インナーソースにおけるAIの活用は、今後の開発環境における重要なテーマです。
おわりに
今回のInnerSource Summit 2025は、インナーソースの実践における多様な視点と具体的な取り組みを学べる貴重な機会でした。インナーソースはまだ発展途上の分野です。各社の取り組みについて情報交換して発展させていければと思いますので、ぜひ、ご協力ください。